今年のイースターに、数十年来見られなかった希望の風が中東全域に吹いている。しかも、アラブ人キリスト教徒は今日復活祭を祝い、イスラム教徒はラマダン月の断食を続けており、ユダヤ教徒は過越の祭りを祝ったばかりで、これ以上あり得ないくらい意義深いタイミングでのことだ。
中国が支援するサウジアラビアとイランの和解は、6日に両国の外相が協定に正式に署名して発効させ、一歩前進したところだ。協定の実施により、国交正常化、航空便の再開、ビザ発給が実現するだけでなく、不可侵と主権尊重の合意がなされることで、長年に及ぶいくつかの地域紛争が解決される可能性が出てきた。
イランが行動を起こすなら、今回のサウジアラビアとイランの合意を通じて、両地域大国はイラン人民兵の存在によって長年苦しんできたアラブ諸国を支援する方法を協議できるようになるかもしれない。本質的には、シリア、レバノン、イラク国民の生活を改善できるということだ。
だが、今回の合意はすでにイエメン情勢にプラスに作用しており、紛争勃発以来最長となる停戦が続いている。また、サウジアラビアとオマーンは協調してこの上げ潮に乗り、イエメン国内の対立する勢力間の恒久的な和平協定を目指している。和平協定が締結されることになれば、紛争は終結し、再建と復興に向けた取り組みへと移行していくことが期待される。
昨年、サウジアラビア・UAEやエジプトとトルコとの関係がリセットされた。このことは、トルコの選挙でどのような結果が出るにせよ、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領の下で関係が改善されるか、新鮮で前向きな雰囲気の中で新指導者との間で関係がスタートするチャンスがあることを示唆している。
2021年にはアル・ウラー協定を受けて隣国カタールとの亀裂も解消され、カタール排斥は終わりを告げた。2022年ワールドカップを迎えるぎりぎりのタイミングで、同大会はこれまでで最高の大会の一つと形容される成功を収めた。
実際、私たちが目にしているのは、サウジアラビアの政治アナリスト、サルマン・アル・アンサリ氏が最近の本紙のインタビューで語ったように、サウジアラビア主導の「平和の津波」である。この勢いが持続すれば、2018年にリヤドで開催された未来投資イニシアチブの公開討論会でムハンマド・ビン・サルマン皇太子がこの地域に対する願望としてほのめかした、中東は「新たな欧州」になれるというビジョンが、現実のものになっていくと思う。
今年のイースターの唯一の悪いニュースは、残念なことに聖地そのものからやってきた。悲しいことに、1月以降、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる極右政権の発足が主たる原因で、イスラエル・パレスチナ間の状況は悪化している。
イスラエルが望むのであれば、この地域の前向きな潮流に乗る絶好のチャンスである。
ファイサル・J・アッバス
パレスチナ人など存在しないというイスラエル閣僚の発言から、アル・アクサモスクで祈りを捧げるイスラム教徒に対するイスラエル軍の攻撃や逮捕に至るまで、挑発行為が続いており、事態はより複雑になる一方だ。
実際、このコラムで繰り返し述べているように、イスラエル政府のこうした行動によって、アブラハム合意に誠実に署名したアラブ諸国は困惑し、サウジアラビアなどの非署名国については、パレスチナ問題の解決前にイスラエルを受け入れることでこのユダヤ国家はより理性的なプレーヤーになることを促されると納得させるのがより困難になる。
当然ながら、現状維持を損なうこうした行動は、レバノンやガザなどでもエスカレーションの引き金になる。もちろん、イスラエルは自衛権があると主張するだろうが、専門家や状況を観察する人たちの間で圧倒的なまでに一致を見ているのは、最近のアル・アクサモスクでの挑発行為は、ネタニヤフ氏の司法改革案に対して激しい抗議と怒りを示しているイスラエル国民の目を別の方向に向けようとする試みであるという見解だ。
ネタニヤフ氏のチームが状況をどのように捉え、パレスチナの指導者についてどのように考えているかに関係なく、彼らが望むのであれば、この地域に今明白に存在する潮流に乗る絶好のチャンスである。すでに存在しているハト派的なアラブ勢力が、イスラエルのきわめてタカ派的な政権と組んでいるのは、実に超現実的で不幸なことだ。しかし、ネタニヤフ氏が真のリーダーシップを発揮して、過激派を抑え込み、平和が最善かつ最も安全な道であると極右勢力に納得させることができれば、これはチャンスに変わる可能性がある。
サウジアラビアとイランの和解が確実になれば、イスラエルは、平和と繁栄の上に構築される新たな地域地図の唯一の欠落部分になっている現実に気付くかもしれない。右翼勢力の挑発行為が増えることで得られる短期的な利益と、長期的に考慮すべき問題を比較考量することを心から勧めたい。2022年に行われたアトランティック誌のインタビューで、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、イスラエルはサウジアラビアの潜在的な同盟国になり得ると発言したことを思い出すべきだ。
「我々はイスラエルを敵とはみなしていない。共同して追求できる多くの利益がある潜在的な同盟国として当てにしている。だが、そこに至る前に解決しなければならない問題がいくつかある」