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イラクの抗議運動がクルド人の間に恐怖心をもたらす

バグダッドでの反政府抗議運動で、イランのイスラム革命防衛隊のコッズ部隊の指導者ガーセム・ソレイマーニー将軍が写ったポスターを靴で蹴るイラクのデモ参加者。(APフォト)
バグダッドでの反政府抗議運動で、イランのイスラム革命防衛隊のコッズ部隊の指導者ガーセム・ソレイマーニー将軍が写ったポスターを靴で蹴るイラクのデモ参加者。(APフォト)

10月初旬以降、イラクでは、この国を苦しめている行政・財政・政治の汚職に対する絶え間ない、そしてますます高まりを見せる抗議の波が発生している。これらの抗議活動は、一切の例外なく、政治エリート全体に向けられている。汚職への怒りを表明する抗議活動に加えて、より若い世代は、イラクの内政のあらゆるレベルに対するイラン政府の根深い干渉に、その怒りの矛先を集中させている。これらの抗議活動は、イランの体制にとって高くつくいくつかの教訓の材料になりそうだ。

まず、国の富がイランに忠誠を尽くす腐敗した政治エリートに奪われ、イラクの人々の生活を極度の貧困へと導いている中で、ますます酷くなる汚職に対して怒りが何年にも渡って湧き上がってきた後、イラクは国民的目覚めの段階を歩もうとしているようだ。この目覚めは、若い男性が率いており、そのほとんどは、ポスト・サダム・フセイン時代に育った人々だ。

この若い世代は、イラン政府の干渉の性質や度合い、イラクの支配階級のエリートのほとんどが示すテヘランの神政体制への奴隷のような政治的・経済的忠誠心を目の当たりにしてきた。イラクにおける干渉の幅の広さをさらに裏付け、明確に示している700点以上のイラン政府の文書が最近流出したことは、この国におけるイラン政府による体制を転覆させるような役割の有毒性を、より若い世代にますます確信させることになった。

2つ目に、若い世代は、イランの宗派イデオロギー的で神政的な洗脳を乗り越え、これを拒否してきた。これはこの数年間に顕著な特徴だ。若い世代はシーア派の「マルジャイア」、つまり、この国の政治における宗教上の手引きが果たす中心的役割に拒否を表明し、これをイラクとこの地域にとっての足かせとなってきた問題の一部と見なしている。

また、この若い世代は、スンニ派であろうと、シーア派であろうと、イスラム教の政治化を拒んできた。これは、今度は、若い世代が、ある個人、党、あるいは宗教の派閥に対する忠誠ではなく、イラクという国家に対するより強い団結した忠誠心を生み出すために、イデオロギーへの所属を超越し、その他の違いや分裂の源をはねつけて来たことを意味する。

最後に、イランの体制とその代理組織の残虐性や、彼らのイラクにおける政策に関して、積年の不満が噴出してきている。イランの最高指導者アリ・ハメネイの最近の発言の後は特にそうだ。この発言の中で彼は、イラクとレバノンの抗議参加者を「外国の計略」に忠誠を尽くしていて、これらをそれぞれの国で実施しようとしていると、イラン自身も外国の非アラブ国であることを明らかに忘れながら、非難したのだ。

ハメネイの軽率な発言を受けて、イラクのデモ隊はデモやイラン政府に対して敵対心を表明するペースを速めた。シーア派の人々の間で崇拝されるほどの宗教的地位を持ち、シーア派が多数を占める2都市、ナジャフやカルバラーのデモ隊は、イランの外交ミッションを標的にし、宗派的所属を理由にこれまで何年もイラン政府には比較的寛容だった人々を含む全てのイラク人と共に、越えてはならない一線を越えたのだという明確なメッセージを、イランの体制に送った。

イランの体制によるいわゆる「イスラム共和国」という計画が既に国内外で崩壊し始めているのは明らか

ムハンマド・アル=スラミ博士

イラン人巡礼者はナジャフの宗教寺院への立ち入りを阻まれ、イラン政府の現地の代理組織が掲示した多くのポスターや看板、バナーは、イランの政治家がイランの国旗と一緒に燃やされる様子を示すことになった。国民の怒りを示すこのような動きに参加している人のほとんどは、イラクのシーア派の人々で、彼らの、特に若い世代のイランの体制によるイラクへの余計な干渉に対する怒りの程度を明確に示している。

イラクの人々からのイランの体制に対するこのような明確なメッセージは、これまでのような現状維持の状態に戻れる可能性がないという点を明確に示している。同じことは、レバノンにも当てはまり、同国では、イランの体制の重要な2つの代理部隊が率いる国の政治エリートに対する同様の暴動が発生している:ヒズボラとアマルだ。

この新たな状況を最も良く示すものが、ヒズボラの元書記長シャイフ・サビーフ・アル=トゥファイリの発言だ。変革を求めるデモ隊のスローガンは、アマルとヒズボラを含む全ての政党に対して掲げるべきだと、彼は語ったのだ。

「全てとは全てだ」と、アル=トゥファイリは述べ、デモ隊が使用する有名なスローガンを引き合いに出した。アマルとヒズボラは、レバノンの汚職の原因や、汚職を守る人々として見なされるリストのトップに入ると、彼は辛辣に付け加えた。ヒズボラやアマルのためでなければ、汚職ははるか昔に対処され、解決済みになっていただろうと、彼は断言した。

そして、結局のところ、イランの体制のウィラーヤテ・ファキーフ(イスラム法学者の監督権)に基づく過激主義的で神政的なイデオロギーの計画や、これを地域全体に課そうとする試みは、国内外の厳しい異議に直面している。この地域のスンニ派とシーア派の両方の人々の間で、あらゆる形の政治的イスラムへの支持が急速に弱まっていることと相まって、あらゆる階級において、大衆の支持が著しく落ち込んできた。

イランの体制によるいわゆる「イスラム共和国」という計画が既に国内外で崩壊し始めているのは明らかで、この地域におけるイランの干渉や、イラン政府への政治的・思想的従属を容赦なく強制しようとする同国の取り組みに対する怒りの波はすぐに高まっている。この反逆ムードがエスカレートし続ける中で、アラブ世界の最も南の地域、つまり、特にイランに忠誠を尽くすフーシ派民兵が支配する地域のイエメンで、イランの体制のイデオロギーに対してアラブ民族が立ち上がる可能性は、ますます多くの人々がイランによる外部からの干渉からの自由を求める権利を主張している中では、排除できない。

この地域のどこに目を向けるにしても、イランの体制が今生き延びているのが奇跡的だというのは、非常に明確だ。

ムハンマド・アル=スラミ博士は、国際イラン研究所(Rasanah)所長。ツイッター:@mohalsulami

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