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政治的孤立を深めるトルコ

レジェップ・タイップ・エルドアン大統領の中央銀行総裁に対する金利引下げへの政治的圧力は、予想されていたほどには悪影響を及ぼしていない。少なくともこれまでのところは。(AFP)
レジェップ・タイップ・エルドアン大統領の中央銀行総裁に対する金利引下げへの政治的圧力は、予想されていたほどには悪影響を及ぼしていない。少なくともこれまでのところは。(AFP)
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06 Jan 2020 11:01:52 GMT9
06 Jan 2020 11:01:52 GMT9

2019年はトルコにとって重要な出来事が数多く起こった。国内政治では、実権型大統領制への移行が、困難や落とし穴を時折発生させながらも、次第に落ち着きをみせた。野党の間では新制度全体に対する反対意見が続いており、議会制度にできるだけ早く戻ることを約束している。

トルコ経済に関しては多くの経済学者が経済ショックをしつこく予測していたが、立ち直りは意外と早かった。レジェップ・タイップ・エルドアン大統領の中央銀行総裁に対する金利引下げへの政治的圧力は、予想されていたほどには悪影響を及ぼしていない。少なくともこれまでのところは。だが経済学者たちは、金利に対する圧力が遅かれ早かれ爆発するとの考えをいまだに変えていない。

司法は引き続き政治的圧力の下にあり、裁判所による判決の多くが政治腐敗の影響を受けたものだった。トルコの裁判所が欧州人権裁判所の判決を適用したのは特定の場合のみだった。

イスタンブールにマルマラ海と黒海を結ぶ運河を掘る事業– 両海をすでに結んでいるボスポラス海峡という自然の航路に加え、もう一つの航路を作る計画– に対する政府の執念は、2019年も衰えをみせなかった。市民社会は運河の建設に反対している。政府は、同事業はボスポラス海峡の海上交通緩和のために必要であると主張しているが、反対者は、事業の主な目的は不動産開発業者や親政府系の建設会社に金儲けの機会を提供することだと主張している。この問題に関する徹底的かつ本格的な議論は行われなかった。

外交政策の面では、トルコは国際舞台においてさらに孤立を深めるばかりだった。

一年の大半にわたって米国とトルコ関係の課題を占めたのは、トルコ政府がロシア製の防空システム「S-400」を購入すれば制裁を科すとする米国の威嚇だった。この問題は、シリア北東部のユーフラテス川東側地域における軍事作戦実施をトルコが主張したことによりさらに複雑化した。だが年末にかけて、どういうわけかこの米国からの圧力が減った。おそらく、ドナルド・トランプ大統領の考えがトルコのエルドアン大統領の支持に傾いたからではないかと考えられる。

ある段階で、トルコはバルト諸国をロシアの脅威から防衛する目的で同地域により多くの部隊を配置しようとするNATO防衛計画に拒否権を出すと脅したが、同盟国に説得され譲歩した。

司法は引き続き政治的圧力の下にあり、裁判所による判決の多くが政治腐敗の影響を受けたものだった。

ヤサル・ヤキス

シリアでは、エルドアン大統領は、ユーフラテス川東側地域にトルコ軍の独占的管理による長さ440キロメートル、幅30〜40キロメートルの安全地帯を設置することを計画していた。ただ計画は実現したものの、規模は縮小された。トルコは現在、長さ250キロメートル、幅10キロメートルの土地を管理している。しかもこの小さな地域は、トルコ軍の独占的な管理ではなく、トルコとロシアの共同パトロールによって管理されることになった。

クルド人民防衛隊(YPG)のクルド人義勇兵は国境地帯から撤退したが、現在はトルコ軍からの脅威に晒されることの少ない、より安全な場所に配備されている。同義勇兵はシリアの油井を保護するためにさらに南へと移動した。そのため、トルコの軍事作戦はYPG義勇兵を防御するかたちとなり、しかもYPGに安定した収入を保証することにもなった。

東地中海では、トルコは遅ればせながら同地域における海洋管轄の境界線を引く一歩を踏み出した。他の沿岸諸国が地域全体の分割を完了させ、地域中最長の海岸線を持つ国であるにもかかわらず、トルコを領海内に追い込むようにした後だった。トルコはこれを、国連海洋会議の全会議において証拠立てた主張を実行に移すことによって行った。この主張はトルコの海洋管轄権はリビアの大陸棚にまで及ぶというクレームで構成され、ギリシャの管轄海域をエジプト、イスラエル、キプロスの管轄海域から切り離すものである。

リビアでは、トルコは従来、トリポリを拠点とし、ムスリム同胞団が多数を占める国民合意政府を支援してきた。こうした現状により、両国は協力協定を締結できたのである。その結果、リビアがトルコにとってさらにもう一つの難局となる可能性がある。トルコが泥沼にはまり込むことになりそうなのだ。しかし、いくつかの理由により、リビアでの成功の可能性はシリアでの可能性よりも低い。この場合の弱点は、ハリファ・ハフタル将軍を支援するロシアがこの紛争でトルコと協力していないことだ。

これらの課題だけでも大変なのに、現在イドリブ地域から新たな難民がトルコ国境へと大量に向かっている。しかも、国際社会がトルコに喜んで救援の手を差し伸べる気配はなさそうだ。

  • ヤサル・ヤキスはトルコの元外務大臣で、与党・公正発展党の創設メンバーである。Twitter: @yakis_yasar
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