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COVID-19のワクチン開発におけるサウジアラビアの役割

サウジアラビアは米国と英国の企業と提携しているが、ロシアと中国のワクチン開発者の参加も歓迎している。(提供)
サウジアラビアは米国と英国の企業と提携しているが、ロシアと中国のワクチン開発者の参加も歓迎している。(提供)
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24 Sep 2020 02:09:55 GMT9
24 Sep 2020 02:09:55 GMT9
  • サウジアラビアは中国やロシアなどグローバルパートナーと提携している

Frank Kane 

ドバイ:COVID-19と闘う中で、世界保健機関(WHO)は、各国が自国で開発したワクチンや、科学的な先進国とみなされる国々、特に欧米諸国のワクチンのみを信頼する「ワクチン国家主義」の危険に警鐘を鳴らしている。

最近、WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は「世界が少しでも早く復興するには、共に復興しなければなりません。グローバル化した世界だからです」と述べた。「経済はつながっています。世界の一部または少数の国々は安全な場所にはなり得ず、復興できません」と述べた。

サウジアラビアは、パンデミックの初期にこの教訓を得たとみられ、「金本位制」と呼ばれる製薬会社や保健規制当局のある欧米以外でワクチン開発に取り組んでいる国々と協力している。

さらにサウジアラビアは今年初め、世界的な取り組みを経済支援でも後押しした。今年、サウジが議長国を務めた世界の首脳会合G20では、新型コロナウイルスとの闘いにおける「医療資金ギャップ」を埋めるために210億ドルを割り当てた。この支援金は、資金問題に取り組むため、サウジアラビアが開催したG 20保健大臣による特別会合後に供与された。

サウジアラビアは米国と英国の企業と提携しているが、サウジアラビアのCOVID-19治療薬開発の取り組みでは、ロシアや中国のワクチン開発者の参加も歓迎している。

最近、サウジ保健省の報道官は次のように述べた。「サウジアラビアはワクチンを模索する世界的な取り組みへの参加に専念しています。サウジは治療法を模索するあらゆる研究努力を支援するため、パンデミックの初めから参加しています」

ただしワクチン包括性へのコミットメントには大きな条件がある。効く可能性のあるワクチンでも、このような問題に関する健康および安全基準の維持を担当する政府機関「サウジアラビア食品医薬品庁」の承認した検査に通らない限り、大規模な予防接種で人に使用されることはない。

保健大臣のタウフィック・アル・ラビア博士は次のように述べた。「私たちのリーダーは、社会の健康とワクチンの有効性を高め、ワクチンを最初に入手する国の1つになるために必要なことは何でも推進しようとしています。しかし、どの治療法を承認する場合でも、ワクチンの安全性と用いる手順も非常に重要です」

基本的な安全評価基準が設定されると、さまざまなワクチン候補が販売される。世界中で200ほどのワクチンが開発段階にあると考える専門家もいる。だが、実際に製品になるのはそのうちの一握りだ。サウジアラビアは幅広く世界中から検討することで選択の余地を残している。

サウジ保健当局は最近、イギリスの製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学の製造者と連絡を取っていると述べた。

これは、開発中のワクチンの中で最も先進的なものの1つとされている。チンパンジーのベクターを基にしており、これまでのところ、英国、米国、南アフリカ、ブラジルのフェーズ3臨床試験に参加した18,000人の患者に大きな期待が寄せられている。

保健大臣のタウフィック・アル・ラビア博士は次のように述べた。「私たちのリーダーは、社会の健康とワクチンの有効性を高め、ワクチンを最初に入手する国の1つになるために必要なことを何でも推進しようとしています。しかし、どの治療法を承認する場合でも、ワクチンの安全性と用いる手順も非常に重要です」

保険大臣タウフィック・アル・ラビア博士

この試験は最近、一人の参加者に副作用が出たため一時中断されたが、その後再開された。アストラゼネカのCEOは、このワクチンが年末か2021年初めまでに生産を開始する方向に向かっていると述べた。「あとは規制当局がどれだけ早くワクチンを評価し、承認するかにかかっています」とCEO。

世界最大の製薬企業が米国と欧州本土に拠点を置いていることを考慮すると、おそらくメーカーはワクチン開発の最前線にいる。米国と欧州の研究者らは大きな進歩を遂げており、中にはメッセンジャーRNA(mRNA)技術を使用し、アストラゼネカのチンパンジー型ベクターと対照的なワクチン伝播メカニズムのためのベクターを開発している研究者もいる。

米国のファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、モデルナ、フランスのヴァルネヴァ、ドイツのキュアバック、バイオエヌテックの製品はすべて臨床試験の後期に入っているが、どれもまだ国の保健当局から承認を受けていない。サウジアラビアの保健当局はどの開発者とも良好な関係を築いているが、どれにするか決める前に、それが承認されるまで待つことになりそうだ。

政府に承認されたものの、そのために物議を醸しているワクチンがある。ロシアの「スプートニクV」だ。これは政府に初めて承認されたワクチンとなった。このワクチンは、サウジアラビアと密接な関係を持つロシアの政府系機関「ロシア直接投資基金」の支援を受け、権威あるモスクワのガマレヤ疫学・微生物学研究所が開発し、正式に承認されたものだ。 

ロシアは、ワクチンの専門的技術を持つ自国の長い伝統を挙げ、エボラ出血熱の治療のためにすでに開発に成功したヒトアデノウイルスベクターを使用したことで、この薬の迅速な承認が可能になったと説明。

スプートニクVは欧州メディアと科学界で懐疑的に扱われたが、英国の医学雑誌『ランセット』からは重大な副作用のない抗体の開発に成功したと評価された。

ロシアの実業家で同国のワクチン対策の代表者であるキリル・ドミトリエフ氏はアラブニュースに対し、サウジアラビアとはこの研究に関して緊密に協議しており、同国は4万人もの被験者を対象としたかなり大規模な臨床試験に参加する5カ国のうちの1つだと述べた。すべてが計画通りに進めば、スプートニクVは年末までに利用できるようになるという。

COVID-19が最初に出現した中国のワクチン計画もかなり進んでいる。国内では少なくとも3つの製品がステージ2の臨床試験を行っている。サウジアラビアはこのうちの1つ、天津市にあるカンシノ・バイオロジクスと提携している。同社が開発中の薬は現在フェーズ2の臨床試験を行っており、まもなく結果が出る。

ワクチンの専門家は、試験済みの製品が市場に出回っても、大量に製造して世界中の70億以上の人々に届けるには、まだ物流に関して大きな課題が残るという。

ここでまた「ワクチン国家主義」の危険が浮上する。ワクチンを開発した富裕国は、どうしても自国民のためにワクチンを保存し、平等に配布しようとしなくなる。

米国の慈善家で自身のワクチン普及を目的とする団体「GAVI」に数十億ドルの資金提供をしているビル・ゲイツ氏は最近、次のように述べた。「平等な方法でワクチンを入手しなければ、問題が起きます」

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