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サウジアラビアが労働法を改正、夜勤で働く人々に新たな権利が付与される

今回の決定事項は2020年1月 1日より効力を発揮する。(SPA)
今回の決定事項は2020年1月 1日より効力を発揮する。(SPA)
02 Nov 2019 12:11:17 GMT9
  • 労働大臣の布告により労働時間・従業員保護の概要が定められる

ファティマ・ムハンマド

ジェッダ:サウジアラビア国内で夜勤を規制し、正規の時間外に働く人々の権利の概要を定めるため、政府が動いた。労働・社会発展省アハマド・ビン・スレイマーン・アル・ラージヒー大臣は、深夜労働を定義し、職場における従業員の責任と権利を明確に定める省令を発布した。

省令では、深夜勤務を午後11時から午前6時までのあらゆる仕事と定義し、通常勤務を午前6時から午後11時までのすべての仕事と定義し、後者を正規の労働時間とすると規定されている。

労働・社会発展省のカレド・アバ・アル・カイル報道官は、「深夜労働者」という用語は、法令で規定されている深夜勤務時間中に少なくとも3時間働く必要がある人のことを指すと述べた。

雇用主は深夜労働者に医療サービスを提供する責任があり、深夜労働者は夜勤に適した健康状態であるか否かを明確に記載した健康診断書を職場に提出する権利を有することとなる。

「体調のせいで夜勤が不可能な場合、雇用主は従業員を日勤に移動させて同じ労働時間を与える義務があります」とアバ・アル・カイル報道官は述べた。

加えて、今回の省令には夜間労働を避けるべき事例の概略が定められていると述べた。事例としては、夜勤には適さないとの診断書を提出する人、出産まで24週間未満の妊婦、母体と胎児の健康を確保するため夜勤を外れる必要があるとの診断書を提出する妊婦などが挙げられている。

こうした場合、雇用主は従業員を通常勤務に移動させ、給食サービスを利用できるようにする必要が出てくる。

夜勤労働者に対しては勤務時間を調整したり、賃金を上げたり、同等の福利厚生を提供するといった形で補償する義務があると報道官は述べた。

「夜勤労働者に対しては、深夜労働ができるよう適正な額の通勤手当、公共交通機関が利用できない場合は他の交通手段、または交通費を払わなければなりません」と述べた。

「加えて、夜勤労働者は深夜に働くという業務に見合った額の手当て、または実労働時間は少なくても日勤の労働者と同じ賃金を得るといった、何らかの優遇措置を受けなければなりません」

「事業所側には夜勤労働者の権利を守り、日勤の労働者と平等に扱う義務もあります。職業訓練、資格取得、年功序列、昇進の面などで差があってはなりません」と付け加えた。

アバ・アル・カイル報道官は、就業日の終わりから次の就業まで12時間以上間を開けなければならず、深夜勤務が3か月を超えて連続してはならないと述べた。3カ月を過ぎると、深夜労働者が夜勤の継続を希望しない限り、少なくとも1カ月は通常勤務に移動させなければならない。従業員が夜勤の継続を希望する場合同意書が必須となり、雇用主側に保管義務が発生する。同意内容を撤回する権利は保護されることとなる。

ラージヒー労働大臣は雇用主側に、年配者や家族の世話をする責任があるなど特別な事情を抱える従業員に配慮する義務があることを強調した。

「こうした補償や優遇措置の対象となるのは、深夜勤務時間帯に丸1カ月働くか、月あたり総労働時間の少なくとも25%が2か月以上深夜勤務となる人、さらには年間45日以上夜勤をするような人々です。ラマダン(断食月)中の夜勤希望者が増える時期は適用対象外となります」とアバ・アル・カイル報道官は述べた。

さらにこの省令は、職場を改善し、女性が働く環境の整備を目的とした複数の法令の1つであると付け加えた。これらの規定は2020年1月1日から 効力を発揮する。ガイダ・アル・モアヤド弁護士によると、サウジ・ビジョン2030で掲げられた目標を達成するには深夜労働を増やす必要があり、新法の目的は深夜労働に規制をかけ労働者の権利を保護することにあるという。

彼女は、新しい規制が女性、特に妊婦を保護することを目的としていると付け加えた。新法のもう1つの重要な側面として、従業員は同意なしに3カ月を超えて夜勤を強いられることがなくなるという点がある。

アル・モアヤド弁護士によると、普段は日勤のみの労働者が午後11時を過ぎて職場に残る場合、新法の下では夜勤とは見なされないという。その代わり、労働法付則第107条で定義される「残業」と見なされる。これに基づき、従業員が1時間働くと1時間半として計算される。彼女は、多くの雇用主がこの権利を認識しておらず、残業時間の計算が原因で労働争議が多発していると付け加えた。

肺科と睡眠科で医長を務めるシラージ・ワリ医師によると、労働者の約20%が夜勤で働いているという。これにより、体内時計が乱れ、糖尿病や肥満のリスクが高まる。夜勤で睡眠不足になると、乳がん、長期的には心臓病や早期死亡のリスクまで高まるという研究結果も出ている。

ワリ医師は、夜勤労働者のほとんどが日勤の人たちよりも睡眠時間が短くなるため、運転中や職場で事故を起こす危険性が高くなると付け加えた。さらに睡眠不足により、日中の過眠症、認知機能・集中力・意思決定力の低下へと至る可能性もある。

こういった事態を回避するため、従業員側は十分な睡眠を確保する義務があるとワリ医師は述べた。さらに、雇用主側は定期的に健康診断を実施し、交代制で勤務する人々に悪影響を及ぼしかねない問題点を把握する必要がある。また、夜勤時間帯は十分な数の労働者を確保して全体にかかる負担を減らし、より効率良く働けるよう雇用主側が配慮すべきだ。

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