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サウジアラムコのIPOにより、不動産価格が下落する可能性

2019年11月3日撮影。サウジアラビア東部ダーランでサウジアラムコ主催の記者会見にて、IPOを実施すると発表。(AFP通信)
2019年11月3日撮影。サウジアラビア東部ダーランでサウジアラムコ主催の記者会見にて、IPOを実施すると発表。(AFP通信)
12 Nov 2019 12:11:08 GMT9
  • サウジアラビア経済は「新しい段階に入った」

ファティマ・ムハンマド

ジェッダ:待望のアラムコの新規株式公開(IPO)は、サウジの一般国民にアラムコへの投資を奨励する効果があるため、同国内の個人や機関投資家の投資意欲が高まるものと期待されている。

サウジ国民であれば全員、上場日から180日間株式を売却しないという条件の下、10株購入するたびに無料で1株受け取る権利が与えられる。サウジ人投資家の持ち株は1人あたり100株以下と定められている。

サウジ人経済コラムニストのジャマル・ベヌン氏は、Arab Newsに対しサウジアラビア経済が新しい段階に入ったと述べた。今回のIPOにより企業だけでなく小規模投資家や個人投資家も、アラムコの株式購入を検討することとなる。世界でも3本の指に入る石油・天然ガス巨大企業の1社が、数百万の株式を公開することとなれば尚更だ。

ベヌン氏によると、IPOにより最も影響を受けるのは不動産部門で間違いないという。なぜなら株を買うために流動性資産を求める動きが高まっているため、地価は下落すると予想されるからだ。この動きは、土地・建物を市場価格より安く購入したい人々にとり朗報となるだろうとベヌン氏は語った。

石油の精製・輸送・販売など下流部門に投資しているサウジ人女性実業家で、ジェッダ商工会議所・産業委員会の副委員長を務めるオルファト・カバニ氏によると、アラムコのIPOは世界最大の経済事象であり、ムハマド・ビン・サルマン皇太子が主導する経済改革を進める上での重要な一歩だという。

国内市場に投資している人間として、彼女は今回のIPOがサウジ国民にとっての絶好のチャンスだと信じている。世界でも一流の石油・天然ガス企業に投資できるからだ。カバニ氏が楽観的な理由は、初回の公募に応じた引受人には無料で株を提供するというインセンティブを与えるとアラムコが確約したからだ。

今回のIPOは、サウジ政府が自国民を経済構築のパートナーと見なしている証拠だ。さらにこのチャンスを生み出すことで歴史的な偉業を成し遂げている。経済は活性化し、市場は強化され、雇用機会は拡大することになる、とカバニ氏は語った。

メッカで活動する実業家の多くが、サウジアラビアは近年で最も重要な経済事象を体験していると確信している、とメッカ商工会議所(MCCI)メディアセンターが報じた。

「今回のIPOによりサウジ経済の進化における新たな歴史が作られ、関連部門の業績は向上し、国民の懐事情は改善され、野心的な目標『ビジョン2030』が目指す活発で多様なサウジ経済が築き上げられていく」と実業家たちは語った。

今回のIPOは、サウジ政府が自国民を経済構築のパートナーと見なしている証拠だ。

オルファット・カバニ、サウジ人女性実業家

MCCIのヒシャム・ビン・モハメッド・カーキ取締役会会長によると、アラムコの国内外市場で株式の一部を売却する計画により、サウジアラビアの経済部門は透明性が高まり、汚職を防止する効果があるという。アラムコは世界で最も収益の高い企業の1つだからだ。カーキ会長によると、サウジアラビアは経済改革や経済発展プロセスの数では世界一であり、世界銀行の報告書にある通り190カ国の中で最も経済的発展を遂げている国の1つだという。会長はこの成果が得られたのは「ビジョン 2030」のおかげだと述べた。

MCCIのナイエフ・メシャル・アル・ザイディ副会長は、こう述べた。「サウジアラムコが世界最大の総合エネルギー・化学企業であることは揺るぎない事実です。世界中で生産される原油の8分の1を生産しています。アラムコの運用システムも、信頼性が最も高いのです。ですから今回のIPOは株式を安全に購入申し込みできるという点で、またとないチャンスなのです」

安全な投資先を探すなかで世界中がアラムコのIPOを検討している、とザイディ副会長は述べた。「このタイミングでアラムコのIPOを実施することにより、世界中のファンドが安全性の高いサウジアラビアへの投資を考えるでしょう。さらにネガティブな噂は消えていくでしょう。現在、世界中が競って世界最大のエネルギー企業サウジアラムコの株式を買おうとしています」とザイディ副会長は述べた。

MCCIのマルワン・アッバス・シャバン副議長は、「今回のIPOはサウジ政府が安全確実な投資環境を整備する絶好の機会です。サウジアラビアの宝石とも言えるサウジアラムコを国民の手に委ねて直接利益を確保できるようにしたわけです」と強く述べた。

「このスキームの恩恵は多くの経済部門に及び、一般投資家に与える影響は非常に大きいものがあります」と述べた。「最大の受益者はサウジアラビア経済と金融市場であり、間違いなく規模が倍になります。また、IPOによりサウジアラビア全体の投資率が高まるため、『ビジョン2030』の目標達成へと大きく近づくこととなります。ビジョン2030の目的は、サウジ国民が豊かに暮らせる経済発展を達成し、経済的に繁栄する社会を作ることにあるからです」

MCCIのイブラヒム・バルディシ事務局長は、サウジアラビア政府の決定に感謝の意を表した。「今回のIPOに申し込まない人たちは大損するということになります。なぜならアラムコが顧客・提携企業・主要株主に継続的に利益を配分するのは間違いないからです。主要株主にはサウジ政府と新規の株主が含まれます」とバルディシ事務局長は述べた。

「アラムコがサウジ市場に上場するメリットとは、サウジ市場に付加価値を生み、アラムコのような規模の企業に投資する外資を呼び込めることです。アラムコの企業価値は2兆ドル相当で、埋蔵量2650億バレル(世界の石油埋蔵量の15%)の油田、埋蔵量288兆立方フィートの天然ガス田を管理し、約65,000人の従業員を雇用しています」

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