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気候サミットを前に、サウジの環境構想が行動の水準を引き上げる

4月3日にムハンマド・ビン・サルマン皇太子が発表した「サウジ緑化構想」と「中東緑化構想」は、中東地域の二酸化酸素排出量を60%削減することを目している。(提供/リヤド緑化計画)
4月3日にムハンマド・ビン・サルマン皇太子が発表した「サウジ緑化構想」と「中東緑化構想」は、中東地域の二酸化酸素排出量を60%削減することを目している。(提供/リヤド緑化計画)
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11 Apr 2021 11:04:38 GMT9
11 Apr 2021 11:04:38 GMT9
  • 国連が今年、3つの主要な気候変動会議に向けた準備を進める中、サウジ・グリーンと中東グリーンの枠組みが発表された。
  • 国連開発計画の地域チームリーダーは、この2つの構想は気候変動緩和の問題に対する歓迎すべきアプローチであると述べている。

ニューヨーク・シティ:アントニオ・グテーレス事務総長が地球にとって「成功か、はたまた失敗かのどちらか」になるという年に、「サウジ・グリーン」と「中東グリーン」構想が最近発表されたことは、国連関係者にとって歓迎すべきニュースとなった。

3月27日にムハンマド・ビン・サルマン皇太子によって発表された「サウジ・グリーン」と「中東グリーン」構想は、クリーンな炭化水素技術の利用と、王国内100億本を含む500億本の植樹を通じて、地域における二酸化炭素排出量を60%削減すべく設計されている。

構想立案者らは、これにより、数百万ヘクタールの劣化した土地の再生や、海洋・沿岸環境の保全、自然保護区や保護地の割合の増加、石油生産の規制の改善、クリーンエネルギーへの移行の加速、再生可能エネルギーによって生成されるエネルギー量の増加などを後押しできるという。

これらの構想は、国連が今年、3つの主要な気候サミットに向けて準備を進める中で発表されたものだ。専門家らは、今年は、各国が二酸化炭素排出量の削減とクリーンエネルギーへの移行に関する約束を「実行する」最後のチャンスだと考えている。

第26回国連気候変動会議(COP26)は、11月にスコットランドのグラスゴーで開催され、パリ協定と国連気候変動枠組条約の目標達成に向けた行動を加速させるために、締約国が一堂に会することになっている。

これに先立ち、9月にはパリ協定の実施を前進させるために「エネルギーに関するハイレベル会合」が予定されており、1981年以降、国連主催でこれほどグローバルな会合が開催されるのは初となる。

国連は、この会議は、17の持続可能な開発目標(SDGs)の中のエネルギー関連の目標達成に向けて意欲を高め、行動を加速させる歴史的な機会になるとしている。

構想立案者らは、グリーン構想は、数百万ヘクタールの劣化した土地の再生や、海洋・沿岸環境の保全、自然保護区や保護地の割合の増加などを後押しできると話す。 (提供写真/リヤド・グリーン・プロジェクト)

最後に、「生物多様性条約第15回締約国会議」が10月に開催される。

同会議は、「人々、特に最も脆弱な人々の栄養、食料安全保障、暮らし」に貢献する形で、生態系の損失を回復し、生物多様性を保全することを目的としている。

「サウジ・グリーン構想と中東グリーン構想は、地域でグリーンなソリューションを前進させるサウジアラビアの役割や、SDGs、気候変動に関するパリ協定、ポスト2020生物多様性世界枠組みの達成に向けた世界や地域との連携において、新時代を告げることができる」と、国連開発計画(UNDP)のアラブ世界における自然・気候・エネルギー担当コーディネーターのキシャン・ホダイ氏がアラブニュースに語った。

「サウジ・グリーン構想は、王国内でソーラーソリューションを拡大するという強いビジョンを掲げています。2030年までに電力の50%を再生可能エネルギーで賄うという野心的なビジョンは、従来の炭素型経済を超えた開発の道筋を再考する上での重要なステップです。石油輸出国の経済がグリーン目標に向けて進化していく上で、重要なシグナルとなるでしょう」

「サウジ・グリーン構想と中東グリーン構想は、特に気候変動を緩和する上で歓迎すべきアプローチです」と、ホダイ氏は語った。(提供写真/リヤド・グリーン・プロジェクト)

国連開発計画(UNDP)は現在、アラブ世界における環境の持続可能性のための無償資金協力を国連の中で最も大規模に行っている。

気候変動対策、太陽光発電ソリューションの拡大、生態系の回復、土地と水の安全保障の改善など、地域全体の国々に割り当てられたこの資金援助事業は、総額5億ドル以上にのぼる。

ホダイ氏は、サウジアラビアとアラビア半島を世界平均や中東の他の地域よりも急速に気温が上昇している「気候リスクのグローバルホットスポット」と表現する。

「過去10年間、サウジアラビアと湾岸地域では、より頻繁に、より激しい気候災害、洪水、暴風雨が発生し、インフラ、生態系、人間の安全に影響を与えてきました」と、同氏は語った。

「湾岸地域やその他の幅広い地域で発生しているイナゴの大量発生は、気候変動が地域社会や生態系を破壊している一例です」。

最近の研究では、気温と蒸発率の上昇により、水資源がさらに減少する可能性が指摘されている。

極端な洪水の増加や高温多湿化も、経済的活力やインフラに打撃を与える可能性がある。

概ね楽観主義的なホダイ氏ではあるが、電力の50%(現在の1%未満からの大幅上昇)を再生可能エネルギーで賄うことや、水不足の地域での植林目標など、サウジ・グリーン・イニシアティブの目標の達成については、かなり難しいと言う。

「このレベルの変革を達成するためには、政策レベルでの革新、民間部門による再生可能エネルギー投資のリスク低減、持続可能なエネルギーの道筋を前進させるための制度的能力の確立が優先事項となるでしょう」と、同氏は語った。

「サウジアラビアおよび中東北アフリカ地域で構想されている植林活動は、気候変動により深刻化しつつある水不足を始めとする多くの問題にも直面しています」

国連開発計画(UNDP)自然・気候・エネルギー問題アラブ担当調整官のキシャン・ホデイ氏。(提供)

ホデイ氏は次のように続けた。「高炭素の淡水化処理に頼るのではなく、自然を利用した解決法を採用し、現在のみならず今後も見据えてこの地域の乾燥地の生態系に最も適した植物種を選択するという機会が存在するのです」

「再生可能エネルギー分野の民間投資やパートナーシップを拡大し、新たなテクノロジーによる解決策を引き出す優秀な国立研究所の能力を発現させ、再生可能エネルギーのサプライチェーンが整った国内市場のエコシステムを構築するために、さらに強化した一連の政策が必要です」

「また、そうした取り組みは、過去の成功に基づいて構築されるべきものでもあります。例えば、サウジアラビアと国連開発計画は、過去10年、国家エネルギー効率計画を通じて、重要セクターにおけるエネルギー集約を減少させるために国家機関と大企業を結集させ、エネルギー効率の拡大に取り組みました」

「中東緑化構想」に関しては、土壌の劣化や砂漠化という深刻な地域問題への取り組みが非常に重要であるとホデイ氏は述べた。

「中東地域の多くのコミュニティーは、生計を地域の生態系に依存しているため、気候変動への耐性をつけ、生物多様性を持続的に活用するという目標を達成するために植林や生態系の回復が非常に重要となります」と彼は述べた。

「中東緑化構想」に関して、土地の劣化や砂漠化という深刻な地域問題への取り組みが非常に重要であるとホデイ氏は述べる。(提供/リヤド緑化計画)

中東北アフリカ地域は、気候変動適応、低炭素の太陽光発電テクノロジー、自然を利用したソリューションなどでいくつか成功しているが、この地域は急速な気温上昇により、依然として最も水が欠乏し、食料輸入依存度の高い地域となっている。

砂漠化は、引き続きこの地域の主要環境問題のひとつであり、世界最速で人口増加が進む地域のひとつであるために、事態はさらに深刻化している。

生活スタイルの変化や食料需要の増加が、土地の過放牧や過耕作、水資源の過活用、森林伐採の拡大を招き、それらが総合的に土壌の質を低下させている。

「気候変動は今や、資源供給をますます不安定化し、社会をさらに脆弱化し、居住地域からの移動を余儀なくさせています」とホデイ氏は述べた。

同氏は続けて、今回のサウジの2つの構想のような気候変動対策は、アラブ地域のさらなる危機の拡大を防ぎ、平和と安全という目標を達成するために、非常に重要であると述べた。

2018年3月29日、リヤド北部のウヤイナにある太陽光発電所を撮影した写真。(AFP/資料写真)

気候変動が容赦ない速度で進行する中、その影響は環境のみならず、社会や政治の領域にまで及んでいる。気候変動問題が紛争の主原因であることは稀ながらも、それが既存の脆弱性をさらに悪化させる可能性をもたらす。

気候変動対策はまた、「復興投資を将来の気候変動危機にも対応できるものとし、債務環境スワップなどの仕組みを模索するなど、紛争やコロナパンデミックからの復興」の鍵にもなるとホデイ氏は述べた。

同氏も指摘するように、環境に配慮したソリューションは近年、アラブ諸国の政策課題として急速に取り上げられるようになっている。

「例えば、前回の世界的経済危機に続く2008年から2018年までの10年間で、中東地域では再生可能エネルギーの供給能力が10倍に増えました」とホデイ氏は述べた。

「太陽光ソリューションは、前回の経済危機からの回復に重要な役割を果たしましたが、今回も、中東地域が現在直面するパンデミックや経済危機から環境に優しい形での回復を果たす上で、優先されるべきものです」

「『サウジ緑化構想』と『中東緑化構想』は、とりわけ気候変動を緩和する措置として歓迎すべき取り組みです」

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ツイッター: @EphremKossaify

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