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アルウラの「緑の遊歩道」に沿って連なる5つの地区

アルウラ旧市街地区
アルウラ旧市街地区
ジャバルイクマ地区展望デッキ。アルウラは面積が2万2500㎢あり、環境に過度な負荷をかけずに観光客が各地区間を自由に移動できるようにするため、大型公共交通機関の建設計画を策定中。
ジャバルイクマ地区展望デッキ。アルウラは面積が2万2500㎢あり、環境に過度な負荷をかけずに観光客が各地区間を自由に移動できるようにするため、大型公共交通機関の建設計画を策定中。
アルウラ旧市街地区の全景
アルウラ旧市街地区の全景
ナバテア人の墓
ナバテア人の墓
ナバテア人の村
ナバテア人の村
観光客の憩いの場となっているワディ(雨期以外は水のない川)
観光客の憩いの場となっているワディ(雨期以外は水のない川)
文化的なオアシス
文化的なオアシス
ヘグラにあるクザの息子、リヒャンの墓。
ヘグラにあるクザの息子、リヒャンの墓。
ダダン地区
ダダン地区
ヘグラ博物館
ヘグラ博物館
アルウラで試験運行中の低炭素な路面電車
アルウラで試験運行中の低炭素な路面電車
ジャバルイクマ観光案内センター
ジャバルイクマ観光案内センター
ダダン地区の全景
ダダン地区の全景
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15 Apr 2021 05:04:54 GMT9
15 Apr 2021 05:04:54 GMT9

レベッカ・アン・プロクター、ドバイ

生きた博物館。この表現は、およそ2千年前のナバテア文明まで遡る歴史を持つ古代遺跡にはまず当てはまりそうにない。交易で繁栄したナバテア帝国が、サウジアラビアの砂漠の中に謎に満ちた秘宝を築き上げた。それは今日アルウラと呼ば  れる。

この地は「ジャーニー・スルー・タイム/時を超えた旅」によって、間も無くその輝かしい栄光を取り戻そうとしている。「ジャーニー・スルー・タイム」、それはサウジアラビアのアルウラ王立委員会(RCU)理事長を務めるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の主導のもとで開発されたマスタープランで、サウジ文化相とRCU委員長を務めるバドル皇太子が指導的役割を担う。

4月7日に発表されたこのマスタープランは、多岐にわたるサウジアラビアのビ ジョン2030計画の一部となっている。ビジョン2030はサウジ経済を大幅に多様化させて石油依存から脱却し、観光・余暇・ホスピタリティ部門やその他の文化的・創造的産業を育み、世界へ門戸を大きく開いていくことを目標としている。

これはアルウラの生活に新たな時代が到来することを予感させるものであり、遺跡を「生きた博物館」の本質である教育・自然・芸術・余暇を楽しむ場所へと持続可能な方法で開発する。文字通り、訪れる人々に「時を超えた旅」を体験させ、古代の香木交易の道に沿っていにしえの時代を蘇らせることが狙いだ。

ナバテア人の劇場

計画者たちによると、まもなく5つの地区がワディ・オブ・ホスピタリティとも呼ばれる全長20kmの「緑の遊歩道」沿いに出来上がるという。そこは季節によって川となる渓谷で、20万年の間、細心の注意を払って保存されてきた古代の人々の工芸品や自然の動植物を訪問客に紹介する。

訪れる人々は南に位置する歴史の街アルウラを起点として、ダダン、ジャバル・イクマー、ナバテアン・ホライゾンの順に北上し、歴史都市ヘグラで旅を終える。そこはサウジアラビアで最初にユネスコの世界遺産に登録された場所だ。それぞれの地区は独自の自然と文化遺産を中心として特色が打ち出されている。

アルウラは全域22,500 平方キロメートルにおよび、米国のニュージャージー州とほぼ同じ面積がある。移動については、環境へ過度の害を及ぼさずに地区から地区へと自由に移動できるようにすることが主眼となっている。

アルウラで試験運行中の低炭素路面電車。(提供写真)

46km の低炭素型トラムの路線がアルウラ国際空港とこれら5つの地区を結び、また訪問客たちは眺めを楽しみながら車で移動できる。もっとこの土地を肌身で実感したければ、徒歩、自転車、さらには馬で移動するという方法もある。

プランには持続可能な移動対策が組み込まれており、「とりわけアルウラの体験型トラム、ワディ・パス、ヒジャーズ鉄道自転車道、これらは全てさりげなく古代の景観を我々にうかがわせてくれる」とフィリップ・J・ジョーンズ氏がアラブニュースに語った。彼はRCU の観光地マーケティング&管理部長を務める。

予測される大挙する訪問客を収容するために、計画者たちは5,000客室を準備し、2035年までに総計9,400室に増やすことを目標としている。これらの客室は高級ホテルから手頃な観光客向けのロッジまで多岐にわたる。

「もてなしの精神はアルウラ文化に浸透しているものだ。1千年の間、アルウラは無くてはならない交易の中間地点、そして様々な文化と文明を背景とする人々が出会う場所となってきた」とジョーンズ氏は言う。

また、遺跡にまつわる古代の多くの驚くべき遺産に加えて、15の新たな文化財がこのルート沿いにオープンする。「これらの各地区が博物館、庭園、ギャラリー、村々、リゾート、 エコロッジ、乗馬道や遊歩道、その他ウェルネスおよび農作業体験を楽しめる都市センターの役割をはたす」とジョーンズ氏は言う。

「我々の努力により、責任を持ってアルウラにおける観光産業を育て、経済的な見通しを広げてサウジアラビアのビジョン2030の目標達成に貢献してゆきたいと考えている」

ジャバルイクマ観光案内センター

このマスタープランの売り物はキングダムズインスティチュートで、これはリヒャン(Liḥyān) とダダンの古代王国やナバテアン文明など、7千年以上にわたって当地に根付いていた文化に特化した考古学研究・調査の拠点だ。

「アルウラには創造性と文化の豊かな伝統があり、我々はそうした他に類を見ない文化を保存し、保護し、高めていく所存である」とRCUの芸術・文化プログラムディレクター、ノーラ・アル=ダバル氏は言う。

「遺跡の保存や様々な文化財の創設から、伝統芸術や工芸制作を促進するためのプログラムに至るまで、多くのイニシアチブがこのマスタープランに組み込まれ、文明の交差点としてのアルウラのアイデンティティを(より)高めるだろう」

アルウラを開発し、この歴史の宝を世界へ公開していくサウジアラビアの働きかけにおいて、「ジャーニー・スルー・タイム」のもつ極めて重要な意義は、地元の人々に権限を与え教育していくことだ。

「地元コミュニティはこの国の文化の管理人であり、彼らに権限を付与することは、アルウラのより豊かな観光産業、文化、農業経済につながっていくと確信している」とRCUの報道官、サード・アル=マトラフィ氏がアラブニュースに語った。

「これらの総合的な方法を通して、アルウラを活力に満ちた豊かなサウジアラビア・コミュニティとして蘇らせたいと思う」

ツイッター:@rebeccaaproctor

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