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「グリーンキングダム」を追求するサウジが大きな助けを得る

国際塩水農業研究センター(ICBA)の目標は、持続可能なネットワークの構築である。エジプトの限界環境においても農家のコミュニティーが起業家精神を発揮している。(ICBAによる写真)
国際塩水農業研究センター(ICBA)の目標は、持続可能なネットワークの構築である。エジプトの限界環境においても農家のコミュニティーが起業家精神を発揮している。(ICBAによる写真)
18 Nov 2019 07:11:10 GMT9
  • 農業省とドバイにあるICBAとの合意は天然資源の保全が目的
  • 王国の塩水農業研究の体制はICBAの専門性から益を得る

Caline Malek

ドバイ:ドバイにある国際塩水農業研究センター (ICBA)とサウジ環境農水省との新たな合意により、サウジアラビアにおける農業発展および環境維持は今後数年のうちに進歩を遂げるだろう。

この合意の目的は、塩水農業研究の体制を拡充することにより、サウジアラビアが天然資源の保護と持続可能な管理という目標を達成できるようにすることである。

同省によると、この合意でICBAの農業や環境に関する研究の他、能力開発における専門性を活用できる。とりわけ、植生発達、砂漠化防止、気候変動適応の分野に期待が寄せられている。

「サウジの技術者や農家に対するトレーニングプログラムも含まれています」と同省は発表した。「さらに、農作物や植林に関する塩水農業の研究および生産体制をこの地域に適用できるようにし、導入を行い、発展させます。そうすることで、環境と農業の統合を図ることができるでしょう」

ICBAの所長、Ismahane Elouafi博士はArab Newsに次のように語った。「合意に向けた協議を始めてから2年ほどたった頃、サウジ政府からの接触がありました」

「私たちは、ICBAがどのようにサウジ政府を援助してグリーンキングダムイニシアチブを実行できるかを示す提案を行いました。このイニシアチブをとおして同省は、国内の緑被率を改善し、旧来の保全慣行を復活させようとしています」と同氏は述べた。

地理的特徴や気候条件は国内でも大きく異なる。

過去に行われた実験では、ジャガイモ、小麦、アルファルファは地下水揚水のペースが速く、王国の環境や天然資源に弊害をもたらすことが明らかになった。

「同省は水の過剰な汲み上げにストップをかけるべく、さまざまな政策を実施しました」と同氏は述べた。

「例えば、農家が小麦粉を生産するのを中止させました。1キログラムの小麦を生産するために約2,400リットルの水を費やすことになるからです。これは大量の水です」と同氏は語った。

「新しいストラテジーは、王国でかなりの面積を占める農作地により適した農作物を見つけることです」

サウジアラビアは1980年代以来、大規模農業で食料を自給しようとしている。 

グリーンキングダムイニシアチブの目的は、水を大量に必要としない農作物を見つけることで、農業分野の水需要を抑えることにある。

この合意によってICBAは、向こう5年にわたって、サウジアラビアに新たな塩水農業分野を構築することになる。 

この転換に伴い、特にキノア、トウジンビエ、ソルガムといった多用な農作物の栽培が計画されている。土壌に塩分を多く含む地域から試験的に始め、他の地域に広げていく計画である。

「これらの穀物はUAEに適しています」と同氏は述べた。「私たちはSabkha地域に着目しています。塩分含有率の高い湿地帯で、同省が環境保全に取り組みたいとしている地域です」

別の目的は「スマート」農業である。これには、水生産性の向上、かんがい用水の消費管理、農作業慣行の変更が含まれる。

Elouafi氏によると、王国の農家は政府の手厚い補助金に慣れていたため、農家が小麦栽培を停止するには時間がかかったという。2015年に小麦の生産は全廃され、翌年にはジャガイモ、その後にアルファルファが続いた。 

「農家は左うちわで、高収入および楽なシステムに慣れ切っていました」と同氏は述べた。

「農家は現在、何か別の農作物の栽培を始めるように要請されています。ただ、収入は以前と異なります。ですから、この段階で計画の見通しが同省にあることと、理解を共有していることがとても重要です」

この合意により、プラントの製造、渇水対策、地域で有望な農作物の開発、多様な植林、植物遺伝資源の保全を含む同省プロジェクトへの提案の準備が予想される。

「同省は大きく、部署も数多くありますので、能力の構築を協議しています。サウジアラビアは大きな国で、ある程度の食糧自給は可能です。必要なのは、特定の穀物など、国が必要とする農作物の生産能力に対する理解です」と同氏は語った。

「当局の現在の取り組みは、より組織的で、より総体的なものです。当局は適切に計画しようとしています」

Elouafi氏によると、サウジアラビアにおける水の制約に対する理解、そして貴重な資源の管理が不可欠だという。

国土のほとんどが乾燥地域であるものの、北部では降雨があり、西部の山地、とりわけ南西地域では夏季にモンスーンの雨が降る。

また、にわか雨は各地で起こりえる。リヤドにおいても大雨が降る場合があり、洪水が発生する。

「政府は渇水対策システムにとても関心があります。王国には農業の長い歴史があります」と同氏は述べた。

「雨量という点では大量の水を期待できます。農業に適した山地環境を備えた地域もあるのです」

明らかに、水資源の保全はサウジ政府にとっての優先事項である。同じほど緊急性があるのは、植物性廃棄物を転換する仕事である。それにより土壌を改良し、土壌生産性や水分保持を向上させ、かんがいの需要を抑えることができる。

湾岸協力会議の参加国のうち、少なくとも3つの国がゴミを堆肥にする規制の枠組み整備に取り組んでおり、王国はその1つである。

「2030年に向けたグローバルな食料トレンド」と題するエコノミストインテリジェンスユニット(EIU)の報告によると、サウジアラビア、UAE、オマーンは10年後をめどに、それぞれ地方自治体の固形廃棄物の85%、75%、60%をリサイクルするという目標がある。

サウジアラビアとUAEは、EIUの食料持続可能性指数の調査対象となった34か国中、下位4分の1に含まれる。栄養と食品廃棄物において低いスコアとなった。 

多くの農家、政策立案者、食品業界の専門家によると、有効な対策は各国が天然資源の持続可能な管理を強化することである。

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