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世界銀行との提携はアル・ウラー開発の持続可能性への道を早める

アル・ウラーは2008年にユネスコ世界遺産に登録された。(提供写真)
アル・ウラーは2008年にユネスコ世界遺産に登録された。(提供写真)
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14 Dec 2022 11:12:07 GMT9
14 Dec 2022 11:12:07 GMT9
  • RCUが結んだ合意は世界銀行の専門知識、知識管理、能力構築を活用することを目的としている
  • ユネスコ世界遺産に登録されているアル・ウラーには、岩石層、オアシス、ダダンとリフヤーンの古代遺跡などの考古学遺跡がある

レベッカ・アン・プロクター

リヤド:アル・ウラー王立委員会(RCU)は、サウジアラビア北西部にある古代の砂漠遺跡を国外からの観光客、投資家、企業のための地域的・世界的ハブに変えることを目指している。

その目標は、経済を多角化して石油依存から脱却するというサウジ政府の野心的な計画を考えれば決して非現実的なものではない。この計画には旅行・観光部門への数十億ドル規模の投資も含まれているのだ。

しかし、アル・ウラーのユニークな遺産を最大限に活用するためには、RCUは地元コミュニティの経済的ニーズを満たし、持続的な能力向上と発展のための領域を指定して取り組まなければならない。

この課題を克服するために、RCUは世界銀行とアル・ウラー開発のための戦略的パートナーシップを結んだ。更新可能な1年間のパートナーシップの過程で、両者は観光に特化した中小企業を指定・育成し、投資を促進し、雇用を創出し、コミュニティを向上させることで、地域経済を変革する。

石灰岩層に彫られたナバテア時代の墓はアル・ウラーでよく見られるものだ。(提供写真)

RCUは先月末に出した声明の中で次のように述べている。「企業と従業員のためのよりダイナミックで包括的で強靭なランドスケープは、アル・ウラーでの経済的持続可能性の実現に向けたロードマップにおける重要なマイルストーンだ」

今回の合意は世界銀行とサウジ財務省のパートナーシップの管轄下にあり、ユネスコや国際自然保護連合を含むRCUの国際パートナーネットワークをさらに拡大させるものだ。

世界銀行はこの新たなパートナーシップのもとで、RCUが地域コミュニティを発展させアル・ウラーの景観を保護するという目標を管理・支援するために必要な枠組みを構築する手助けをする。

世界銀行の湾岸協力理事会地域担当者であるイサム・アブースレイマン氏は、アラブニュースに対し次のように語った。「このパートナーシップは、持続可能な観光開発や文化遺産などに関する世界銀行のグローバルな知識と経験に基づいた専門的助言を提供してきたこれまでの協力をもとにしている」

岩絵やオアシスなどのアル・ウラーの遺産と植物相の保護を目的とした合意を結んだアル・ウラー王立委員会のモアタズ・クルディ氏と世界銀行のイサム・アブースレイマン氏。(提供写真)

アブースレイマン氏は、「世界銀行の幅広い専門知識を活用して、アル・ウラー開発における社会・環境・経済の持続可能性に焦点を当てた助言サービス、知識管理、能力構築を提供した」RCUによるこれまでの活動を称賛した。

アル・ウラーは2008年にユネスコ世界遺産に登録された。そのドラマティックな岩石層、青々としたオアシス、ダダンとリフヤーンの古代遺跡などの考古学遺跡は、2020年10月に観光客に開放されて以来、何万人もの人々を引き付けてきた。

RCUのエグゼクティブディレクターであるジョン・ノーザン氏は今年6月、アラブニュースに対し、アル・ウラーにはそれまでの12ヶ月間に当初の予想を遥かに上回る25万人以上が訪れていると語っていた。

2021年4月に発表されたアル・ウラーの「時の旅マスタープラン」は、再生された1000万平方メートルの緑地全体にわたって展開し、5つの遺跡に結び付いた5つの個別の地区の開発を行う。これに博物館やアートギャラリーなどの15の新たな文化施設が追加される予定だ。

アル・ウラーにはダダン文明、ナバテア文明、ローマ文明、イスラム文明の考古学的遺産が豊富にあり、美しい砂漠の風景に囲まれている。(提供写真)

開発者によると、2035年の完成時までに、13万人に増加していると予測される地元住民のために3万8000人の新たな雇用を創出し、サウジアラビアのGDPに320億ドルの貢献をすることが見込まれているという。

国連世界観光機関(UNWTO)およびG20観光ワーキンググループが作成した「観光を通した包括的なコミュニティ開発のためのアル・ウラー枠組み」によると、「観光は現代において最も急速に成長する最も強靭な社会経済部門の一つ」であり、2019年には世界貿易の7%を占めていた。

そのうえ観光は、「人々、特に女性と若者に力を与え、地球を守り、イノベーションを通して新分野を導入し形成する新たなフロンティアを形作るというG20議長国の目標に沿って、包括的なコミュニティ開発や持続可能な開発目標に貢献しそれを実現するための有効な手段」である。

RCUは持続可能性、経済再生、地元コミュニティの尊重を開発戦略の中心に位置づけており、地元の観光部門において既に3000人以上の雇用が創出されたとしている。

RCUの郡部事業チーフオフィサーであるモアタズ・クルディ氏はアラブニュースに対し次のように語った。「今回の新たな合意は、地元住民に力を与え世界から様々な人々を迎えている多様でダイナミックな観光部門の継続的拡大というRCUの開発モデルの重要な領域をサポートするものだ」

「世界銀行とのパートナーシップにより、アル・ウラーの継続的な再生は引き続き持続可能で包括的で強靭なものとなる。また、リーダーシップおよびプロジェクト開発・実施の包括的な構造によって実現される、新たな雇用、新たな機会、長期的な経済発展を通して、広範囲のコミュニティの利益が活性化される」

「RCUの理解では持続可能性はビジネスではなく、ビジネスを行ううえでの取り組み方だ。全ての部門において我々の行動を決定づける実存的な課題なのだ。野心を迅速に計画・行動に移し、世界全体のためにアル・ウラーを文化、芸術、遺産、自然の美があふれる観光地として確立する中で、我々にはイノベーション、断固とした行動、実質的な結果を通して持続可能性を提供する義務がある」

世界銀行はこの新たなパートナーシップのもとで、RCUが地域コミュニティを発展させアル・ウラーの景観を保護するという目標を管理・支援するために必要な枠組みを構築する手助けをする。(提供写真)

アル・ウラーの持続可能な再生とは、コミュニティの変革と古代の遺跡・伝統・文化の保全を通して、人々に真の世代交代をもたらし長期的な経済成長を生み出すことだという。

「我々は人々や場所に力を与え、経済的な機会を作り出し、我々が共有する過去を保全している」とクルディ氏は付け加えた。

持続可能な再生には、損傷・破壊を被ったものを修復するための行動を取ることも必要だ。アル・ウラーとそのパートナーシップの場合、近隣の史跡の戦略的修復・維持だ。

RCUと世界銀行のパートナーシップの目的は、11月にエジプトの紅海リゾート地シャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動会議(COP27)で世界の指導者らが示した環境目標と足並みを揃えている。

「我々が重視しているのは人々と地球だ」とクルディ氏は言う。「コミュニティの支援と開発や自然の保全・保護はこのパートナーシップに完全に統合されている。我々はその成功を、明確で長期的な持続可能性目標の達成に基づいて認識するだろう」

実際、世界銀行はRCUの2035年目標を支援する世界的ネットワークの一部である。その目標とは、1000万本の木と200種の在来植物を植樹し、在来植物の種を数百万個まくための育苗施設の拡張、自然保護区に20万人の観光客を迎え、繁殖センターで在来動物種の個体数を増やして野生に戻すというものだ。

RCUは2030年代半ばまでに数千人の新規雇用を創出することを目指している。

アル・ウラー再生計画には、環境に配慮した材料を用いて持続可能な形で設計・開発されるインフラの建設も含まれている。

RCUと世界銀行のパートナーシップは現在は評価段階にある。クルディ氏は次のように語った。「共有された成果、重要なツール、政策、アイディアを可視化することは、このパートナーシップが運用レベルで強力な文化的・社会的・経済的戦略を構築するのの役立つとともに、成功の可能性を高めるだろう」

この計画の成功は、RCUと世界銀行の専門家の間の調整を含む専門的な予想だけでなく、実施を形作るために規定された段階・原則にしたがって設定された様々なベンチマークを用いて測られることになる。

クルディ氏は次のように付け加えた。「世界銀行とのパートナーシップにより、アル・ウラーにおいて物理的・社会的・財政的持続可能性を実現しつつ生活の質にの目標を達成できることを大いに期待している」

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