グレンダイザー誕生50周年
アラブの心を魅了し続けたアニメ
高さ30メートル、重さ約280トン(少なくとも地球の重力下では)、時速700キロで走ることができ、世界一高いビルを余裕で飛び越えることができる。
グレンダイザーは、50年前に日本で作られた同名のテレビアニメシリーズの主役である架空の巨大ロボットだ。4年後にレバノンに上陸したときには、現実世界ではまったく異なる2つの文化の間で、どういうわけかさらに大きな飛躍を遂げることに成功し、戦争の恐怖と不安の中で育ち、ヒーローの出現を切望していた子供たちの世代に希望と心の拠り所を提供した。
テレビシリーズ『グレンダイザー』のアラビア語版は、中東全域で熱狂的なファン層をすぐに獲得した。特にサウジアラビアでは2022年11月、ブールバード・ワールド・エンターテインメント・コンプレックスで、番組の巨大な「メカ」の像がお披露目された。
高さは33.7メートルで、テレビで放映された原作よりもさらに大きく、この彫像はギネス・ワールド・レコーズに "架空のキャラクターの金属彫刻としては最大 "と認定された。
フィクションかもしれないが、エイリアンの侵略に対する抵抗のストーリーによって、1975年に日本でデビューしたアニメ番組「UFOロボ グレンダイザー」は、アラビア語に吹き替えられ、1979年にテレ・リバンで初めて放送されたレバノンだけでなく、地域全体の老若男女の視聴者の共感を呼んだ。
1980年までに、この番組はサウジアラビアを含むアラブ世界のテレビ画面に定着し、若いファンの世代の心をつかみ、今日まで続くアニメや漫画への関心を呼び起こした。
そのデビューから50年後、巨大ロボット・グレンダイザーは、オリジナル番組のファンの心の中だけでなく、サウジアラビアで近年行われている創造性の再復興の一環として、新世代のためにリフレッシュされた持続的なビジネスとしても、中東で生き続けている。
『グレンダイザー』の巨大な軌跡に続き、サウジアラビアは壮大なスケールでアニメを受け入れている。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子のミスク財団はサウジアラビアの若者の起業家精神の育成を目的とする非営利団体であるが、その一部であるマンガプロダクションズは、何千人ものサウジアラビア人にマンガとアニメのアートを育成し、その多くを日本の有名なKADOKAWコンテンツアカデミーに留学させている。
2021年、マンガプロダクションズは日本の東映アニメーションと提携し、サウジアラビアの民間伝承を題材にした初の長編アニメ『The Journey』を制作した。
また、同社は中東・北アフリカにおけるグレンダイザーのビデオゲーム『The Feast of The Wolves』のパブリッシャーでもあり、同ゲームはアラビア語のほか、プレイステーション、Xbox、ニンテンドースイッチなど8言語で発売されている。
そして2024年、マンガプロダクションズはアラビア語の新アニメシリーズ "Grendizer U "をリリースした。
マンガプロダクションズの事業開発責任者アブドルアジーズ・アル・ナグモシュ氏によれば、グレンダイザーを復活させ、新世代のためにアップデートすることは「ユニークな挑戦」だったという。
「あのようなアイコニックな作品に取り組み、元の視聴者を怒らせることなく復活させるにはどうすればいいの。」
「『グレンダイザー』が最後にテレビで放映されたのは1980年代ですから、世代間のギャップが大きいのです。もし私たちが古いスタイルをそのまま続ければ誰も見ませんし、新しいスタイルにすれば、年配の世代は誰も見ません」
「ですので、中間的なバランスを見つけようとしました。新しい世代にはもっと気に入ってもらえるような、でも上の世代にはまだ昔の面影が残っていると感じてもらえるような方法を、です」
「『グレンダイザー』は戻ってきました。アラビア世界各地の多くのファンのもとに。もちろん、アラビア語圏の多くのファンにとっては、一度も決して消えたわけではないのでしたが」
グレンダイザー:日本のアニメから汎アラブのアイコンへ
1972
画家であり作家でもある永井豪が、人間が操縦し乗り物のように操る巨大ロボット(メカ)を主人公とした長期連載マンガ・アニメ『マジンガー』のコンセプトを発表。この作品は、日本のみならず世界中で「スーパーロボット」サブジャンルの主なインスピレーションの源となる。
1975
永井豪がフジテレビでアニメ『UFOロボ グレンダイザー』シリーズを開始。全74話からなるこのシリーズは、東映アニメーションによって制作され、『マジンガー』で初登場した兜甲児とともに、主人公であるフリード星の王子デューク・フリードや、象徴的な乗り物であるスペイザーを日本の視聴者に紹介した。本国ではそこそこの成功を収めたが、海外ではより大きなヒット作となった。
1979
『UFOロボ グレンダイザー』は、レバノンのテレビ局Tele Libanが制作したアラビア語吹き替え版で中東デビューを果たす。アブデル・アブ・ラバン、アブドゥラー・ハダド、スービ・アブ・ルゴドというアラビア語吹き替えのパイオニア3人が関わり、俳優ジハード・アル・アトラシュがデューク・フリードの声を担当したこのシリーズは、亡命と抵抗というテーマが中東の人々の心を打ち、大成功を収める。
1980年代前半から半ば
『グレンダイザー』がサウジアラビアと湾岸地域に登場。サウジアラビアのチャンネル1やその他の地域の放送局が毎日放課後に放映し、若者たちにとって国民的な日課となった。日本のアニメの美学をサウジアラビアの文化に紹介し、王国の若者たちに初めて非西洋的なスーパーヒーローの原型を与えた。その過程で、このシリーズは、衛星テレビが登場する前の最初の汎湾岸文化的アイコンとなった。
1980年代半ば~1990年代
サウジアラビアのチャンネル1で再放送されたこのシリーズは、10年以上にわたって存続。サウジアラビアのショッピングモールや文房具店にブートレグ商品が溢れ、新しい世代の注目を集め、グレンダイザーの不朽の人気を確固たるものにし、カルト的な地位へと昇華させた。
2000年代~2010年代
30代から50代のサウジアラビア人が、ノスタルジアの象徴としてこの番組を取り戻す。ソーシャルメディアの登場は、お気に入りのシーンや名言を共有することで、このノスタルジックな波を後押しした。アラブニュースを含むサウジアラビアのメディアは、永井豪の回顧や新しいインタビューを掲載している。
2022年2月
アラビア語版「UFOロボ グレンダイザー」のオープニングとエンディングテーマを担当したレバノンの歌手サミ・クラークが、心臓合併症のため73歳で死去。彼は最後までコンサートで同曲を演奏し続け、アラブ世界に番組の不朽の遺産を残すことに貢献した。
2022年8月
サウジアラビアのマンガプロダクションズが、永井豪のライセンス会社ダイナミック・プランニングと共同で、「グレンダイザーU」をリブート。グレンダイザーの世界に初めてサウジアラビアの風景が登場する。このシリーズは2024年に全世界で初放送され、大規模なマーケティング活動と露出に後押しされた。
2022年11月
高さ33.7メートルの巨大なグレンダイザー像がリヤドのブールバード・ワールドで公開され、日本のロボットの地位が子供の頃の記憶から公共の記念碑的な芸術へと高まり、グレンダイザーが単なるノスタルジーではなく、公式の文化的な試金石としての役割を確固たるものにする。
ロボットの起源
「グレンダイザー」が日本でデビューした1975年当時、マンガやアニメの世界ではすでに巨大ロボットに事欠くことはなかった。「メカ」と総称されるそれらは、現実の戦争の恐怖から生まれた特有のジャンルを定義していた。
そのひとつが、1956年に横山光輝によって漫画化された『鉄人28号』である。横山光輝は第二次世界大戦と、1945年の広島と長崎への原爆投下を経験しており、彼の物語のプロットはそれを反映していた。
『グレンダイザー』を描いた漫画家の永井豪は、『鉄人28号』にインスパイアされたものの、そのアイデアに、巨大なメカのコックピットからロボットを操るパイロットという独自のひねりを加えた。それまでのロボットは遠隔操作で操縦していた。
「グレンダイザー」もまた、戦後日本の瓦礫の中から生まれた。永井(本名、永井潔)は広島に原爆が投下された1ヵ月後の1945年9月6日に生まれ、戦争で傷ついた国で育った経験は、彼の物語の多くの暴力的な題材に影響を与えた。
1975年10月に出版された日本の漫画『UFOロボ グレンダイザー』の初版
1975年10月に出版された日本の漫画『UFOロボ グレンダイザー』の初版
彼は、2019年10月にアラブニュース・ジャパンのハラ・タシュカンディ記者のインタビューに応じ、このことについて次のように振り返った。「歴史を見ると、多くの国で多くの戦争や戦いがありました。ですから、『グレンダイザー』では、人々がそれらの戦争や戦いで経験したさまざまな状況を統合し、作品を観た人々にそれらの記憶を蘇らせたいと思いました」
「特定の地域を取り上げるつもりはありませんでしたが、当時のアラブ世界の人々の心に響いたのでしょう。そのようなタイミングだったのだと思います」
「日本の長い歴史の中でも戦争はたくさんあったわけで、そういう記憶が心の奥底にあります。だから、私の作品を見る人たちの心に響いたのでしょう」
アラブニュース・ジャパンの代表を務めるアリ・イタニはジェッダで育ち、1980年代半ば、子供の頃にテレビで『グレンダイザー』に出会った。
「当時はチャンネルが2つしかなく、子供たちにとって『グレンダイザー』はきら星のひとつでした」と彼は振り返る。
「『グレンダイザー』には、他のアニメにはない道徳的なメッセージがありました。だから響いたのだと思います。私は5歳児でアニメを見ていましたが、このアニメは正義と名誉、約束を守ること、正しいことのために戦うことについて話していました」
「私の幼児期の礎でした。とても大きな影響を与えてくれました」
地球を守る者たち
デューク・フリード
フリード星の王子であり、ベガ星人の軍勢によって破壊された惑星フリードの生き残り。地球に逃れた後、宇門大介として、スーパーロボット「グレンダイザー」を操縦してベガ星人から地球を守る。毅然として冷静なデュークは、どんな困難な状況にも明晰さと道徳的信念をもって立ち向かう。
マリア・グレース・フリード
デュークの妹で、フリード星の王女。当初はデュークの死を信じ、復讐心に駆られていたが、やがて再会し、グレンダイザー・ロボットの円盤型支援機ドリルスペイザーを操縦して彼と力を合わせる。熱血漢で少々おてんばな彼女は、兄と失われた故郷の記憶に激しく忠実である。
兜甲児
旧シリーズ「マジンガーZ」の主人公で、その名を冠したロボットの主要パイロット。デュークの友人であり相棒。さまざまな支援ロボットを操縦し、デュークとともにベガ星人と戦う。当初は熱血漢で衝動的、無謀で自信過剰だったが、時が経つにつれて成長し、シリーズのアラブ人ファンから最も愛されるキャラクターの一人となった。
牧葉 ひかる
牧場のオーナーである牧葉団兵衛の娘でデュークの親友。彼の正体を知り、ベガ星との戦いに巻き込まれたことで人生が変わる。元気で大胆なひかるは、地球の防衛者として成長し、最終的にはマリーンスペイザーを操縦する。
牧場団兵衛
日本の田舎にある牧場のオーナーで、ひかると弟の吾郎の父親。UFOと宇宙の愛好家で、デュークの秘密の出自を知った後、彼を保護する。宇門源蔵博士の友人で、ベガ星人の脅威が明らかになると「UFOから地球を守る会」の会長を宣言する。
宇門源蔵博士
宇宙科学研究所所長で、団兵衛の牧場の共同経営者。デュークの養父でもあり、地球に不時着したデュークに宇門大介という名前を与える。温厚で賢明な指導者で、グレンダイザーの技術を開発し、スペイザーの製造を監督する。
ベガ星人
ベガ大王
ベガ帝国の無慈悲なリーダーで、ベガ星の専制君主。資源のために惑星を征服し、デュークの究極の敵として立ちはだかる。直接戦闘に参加することは稀だが、娘のルビーナとデュークの婚約を利用し、フリード星を破壊する侵略を開始する。
ブラッキー
冷酷なベガ星連合軍の体調で、シリーズ第1部ではデュークの地球での主な宿敵。ベガ帝国に忠誠を誓うが、非常に野心的で、円盤獣(ベガ獣)を指揮し、常軌を逸した戦術に頼り、自分の地位を確保するために仲間の将校を裏切ることも辞さない。
ガンダル/レディ・ガンダル
ブラッキーに代わってベガ帝国の地球攻撃を指揮。ベガ大王に激しく忠誠を誓い、地球との戦いでは武力行使を好む。レディ・ガンダルと体を共有し、彼女は独自の人格と王家の野心を持つ。シリーズの中でも最も印象的な悪役の一人。
ズリル
ベガ帝国の戦略家であり、高位の科学者であるズリルは、ベガ大王の顧問を務め、コンピューター搭載の眼帯を使って攻撃計画を実行する。ガンダルと戦術をめぐって激しく対立し、しばしば衝突する。
ルビーナ王女
ベガ帝国の王女でベガ大王の娘、デュークの元婚約者。デュークに気持ちを残したまま、地球とベガ帝国の戦争に平和的解決を見出そうとするが、悲劇的な結末を迎える。この紛争における人的犠牲の象徴となった。
世代を超えたアイコン
アラブ世界の多くの同世代と同様、今でも『グレンダイザー』のアイテムをコレクションしているイタニは、1983年、東京ディズニーランドのオープンに合わせて初来日した。その後、2001年から2003年にかけて国際大学で国際関係学の修士号を取得した。
そして、2019年10月にアラブニュース・ジャパンの創刊を指揮した際、ブランドロゴの日の出のアートワークデザインを「グレンダイザー」の生みの親である永井氏に依頼した。
フランスのパリ政治学院とレバノンのベイルートにあるサン・ジョセフ大学の人権グローバルキャンパスで教鞭をとる政治学者のカリム・エル・ムフティ氏もまた、生涯を通じて「グレンダイザー」のファンであり、その情熱を子供たちと共有している。
この番組はアラブ世界ではいまだに強力なシンボルであり続けている、と彼は言う。「私の世代がそれを子どもたちに受け継ぎ、心をつないでいるから」だという。
「フランスでも『グレンダイザー』に対するノスタルジーは根強く、オリジナルのアニメは人気がありました。しかしアラブ世界ではまったく別のレベルです。クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、イラクでは、それはグラフィティやラップグループ、アーティスト、グッズに反映されているのが見て取れます」
今でも『グレンダイザー』のアイテムを持っている?
「はい。マグカップ、イベントのポスター、置物、フランス語で書かれた昔の『グレンダイザー』の雑誌、そしてアラビア語で書かれた全74話のDVDを持っています」
彼にとって『グレンダイザー』は、単にノスタルジックなグッズの対象以上のものなのだ。2020年、彼は文化研究誌『Mutual Images』に論文を発表し、同地域における同番組のクロスオーバー成功の現象を検証した。
「『UFOロボ グレンダイザー』アラビア語版の影響と成功」と題されたその論文の中の「アラビア語圏における日本のアイコンの採用」と題された記事で、彼は、なぜ『グレンダイザー』が、自分たちの世界の問題からの逃げ道としてスーパーヒーローの姿をキャラクターに見出した世代の子供たちの心と体に、これほど深い反響を与えたのかその理由を探っている。
再生ボタンをタップ、アラブニュース・ジャパンによる永井豪のインタビュー動画のすべて
当時の中東という具体的な状況こそが、「祖国に対するエイリアンの侵略を描いたマンガの文化的共鳴を把握する鍵」であった、と彼は書いている。
「1970年代の中東に住む大人とその子供たちにとって、このアニメのストーリーはナクバという歴史的出来事と密接に結びついています......アラブの子供たちは、このアニメ、その筋書き、地球侵略、巨大な戦い、そして『UFOロボ グレンダイザー』に登場するスーパーヒーローのキャラクターに深く共感しました」
グレンダイザーアニメシリーズは、人間が内部から操縦するこの新しいタイプのメカの最初の登場作ではなく、その最初の形態や名前でもなかった。その起源は1972年10月2日に遡り、「週刊少年ジャンプ」誌上で永井が「マジンガーZ」というメカを主人公にした新作マンガを発表した。続いて1974年には、永井が脚本・作画を手掛けた新作『グレートマジンガー』が発表された。そしてどちらもアニメ化された。
グレンダイザーは、同じく永井が創作した1975年10月5日の「UFOロボ グレンダイザー」と呼ばれるシリーズ3作目の番組で日本デビューし、同時に同名の漫画でもデビューした。
主人公のデューク・フリードを含む多くの新キャラクターを登場させたテレビシリーズは、有名なアニメスタジオである東映アニメーションによって制作され、日本では1975年10月5日から1977年2月27日にかけてフジテレビで放送された。
通常マンガやアニメでは、巨大な戦闘メカはあっという間に現れては消えていく傾向がある。
しかし、先見の明のあるレバノン人の商才と中東の地政学的動乱の組み合わせにより、そしておそらく永井が2019年に示唆したように「グッドタイミング」のおかげで、「グレンダイザー」は1979年にアラビア語のテレビでデビューした。そしてほぼ一夜にして、世代を超えた新しいヒーローが誕生した。
『UFOロボ グレンダイザー』のプロットはシンプルなものだったが、1970年代後半から1980年代前半にかけての中東の熱気に強く共鳴した。
フリード星のデューク・フリード王子は自分の星を逃れ、巨大メカ「グレンダイザー」を携えて邪悪なベガ帝国に占領された地球の日本に降り立つ。
グレンダイザーの作者、永井豪がデザインしたアラブニュース・ジャパンのヘッドロゴ
グレンダイザーの作者、永井豪がデザインしたアラブニュース・ジャパンのヘッドロゴ
デュークは牧場を経営する科学者の養子となり、そこで宇門大介という名を持つ。高さ30メートルもある巨大メカをどこに隠しているのかは定かではない。もちろん部屋やベッドの下に隠せるものでもない。しかし、すべての地球人にとって幸運なことに、邪悪なベガ星人たちがデュークを追って地球に来たときに、グレンダイザーは近くにある。
日本のアニメがアラブ諸国で放送されたのは『グレンダイザー』が初めてではない。1974年、レバノン人の監督、俳優、プロデューサーであったニコラ・アブ・サマーは、初のアラビア語映画吹き替えスタジオであるFilmaliを設立した。
その最初のプロジェクトのひとつが、レバノンのテレビで放映された『アラビアン・ナイト』シリーズのアラビア語吹き替えだった:1975年と1976年に日本のテレビで放送された『シンドバッドの冒険』シリーズをレバノンのテレビでアラビア語に吹き替えたのだ。この番組の成功に触発され、レバノンのテレビネットワークテレ・リバンの創設者の一人であるウィッサム・イゼディンなど、この地域のテレビ業界の他の人たちも、他の作品の翻案先を探すようになり、イゼディンは最初の企画として "UFOロボ グレンダイザー "を選んだ。
Mutual Imagesに掲載されたエル・ムフティの論文によると、イゼディンがこのシリーズに惹かれたのは、主に "彼の国レバノンと密接に共鳴する異星人の侵略ストーリーに惹かれた "からだという。
イゼディンは、レバノンで『グレンダイザー』を制作するために2人のパートナーと協力した。監督のウィアム・エル・サイディと、1962年にベイルートで設立されたパレスチナ人経営の製作会社アル・イティハド・アル・ファンニ(芸術連盟)で、脚本をアラビア語に翻訳するよう依頼した。エル・サイディはこの分野のパイオニアだった。
「日本のアニメや英語アニメのアラビア語吹き替えは、1970年代初頭のレバノンのテレビにおける新しいタイプのプロジェクトで、私はとても励みに思い、情熱を持って取り組みました」と彼は2020年10月にアラブニュース・ジャパンのアミン・アバス記者に語っている。
彼が手がけた初期のプロジェクトには、『シンドバッドの冒険』、『みつばちマーヤの冒険』、そして特に『UFOロボ グレンダイザー』があった。
「(それは)過去の偉大なアラビアの指導者に似た英雄的なキャラクターに自分自身を投影させたいと願う子供たちやあらゆる年齢層の人々に魅力的でした 」と彼は述べた。
「"グレンダイザー "は、悪から無垢で弱い人々を守るヒーローのようなものでした」
グレンダイザーのアラビア化
アラビア語版を録音するために11人の声優が選ばれ、オープニングとエンディングのテーマ曲はレバノンの歌手サミ・クラークによって録音され、21話からなる第1シーズンは1979年にテレ・リバンで放送された。
2022年に73歳で亡くなったクラークは、『UFOロボ グレンダイザー』と永遠に関わることになる--彼は頻繁に主題歌の演奏に呼ばれ、アラブ世界各地のアニメフェスティバルやコンベンションに招かれた。
2019年には、サウジアラビアのアニメエキスポのステージで、日本のオリジナルを歌ったささきいさおとデュエットでアラビア語版のテーマを歌った。
デューク・フリードの声を担当したのは、レバノン出身の俳優で映画監督でもあるジハード・エル・アトラシュで、その声は "ストーリーに込められた深い感情を完全に体現していた "とエル・ムフティは書いている。エル・アトラッシュがデュークとエイリアンの衝突にもたらした声の "怒り "は、アラブの観客の心を特に打った。
「祖国を守るという作品の中心的なメッセージは、非の打ちどころのないアラブ語の語彙と特定の "キャッチフレーズ "の使用によって、さらに増幅された」とエル・ムフティは書いている。
「砕け散った中東の状況において、選ばれた語彙と言い回しは......現実の占領に対する武装抵抗の英雄的イメージと一致していた」
ジハード・エル・アトラーシュ-主人公デューク・フリードのアラビア語声優
ジハード・エル・アトラーシュ-主人公デューク・フリードのアラビア語声優
クラークと同様、エル・アトラッシュは『グレンダイザー』と永遠に結びついており、2017年にジェッダで開催された第1回サウジ・コミコンを含め、コンベンションに何度も登場している。
「グレンダイザー」を日本からアラビアに持ち込んだ関係者全員が、その象徴性を強く意識していたことは明らかだ。
声優のエル・アトラッシュは2005年、現在アラブニュースの編集長で当時『Asharq Al-Awsat』の記者だったファイサル・J・アッバスとのインタビューで、「当時は戦争中で、アラブ世界全体がパレスチナ自治区の占領に苦しんでいた」
「そこに突然、"グレンダイザー "が登場し、平和を求めること、自国を守ること、敵に立ち向かうレジスタンスに関連する価値観が表現されたのです」
主題歌を歌うクラークも2018年にこの気持ちを代弁し、このシリーズには当時のアラブ地域ならではのメッセージが込められていると語った。
「世界は崩壊し、人々は戦争の時代を生き抜き、ヒーローを必要としていました」と彼はフューチャーTVに語った。
「人々はその擁護者を『グレンダイザー』に見出したのです」と彼は言い、「その作品は、特定の文脈における私たちの怒りを表現し、希望の一端を垣間見せてくれた」と語った。
クレジット
執筆&リサーチ: ジョナサン・ゴーナル、ガブリエレ・マルヴィジ、シェルーク・ザカリア
エディター:タレク・アリ・アフマド
日本語版エディター:ダイアナ・ファラー
日本版コピーエディター:岩田明子
クリエイティブディレクター:オマール・ナシャシビ
グラフィック:ダグラス・オカサキ 、オマール・ナシャシビ
インタビュー: バスマ・アルバスラウィ、アブドゥルラフマン・ビン・シャルフーブ
ビデオプロデューサー:ハセニン・ファデル
画像リサーチャー:シーラ・メイヨー
コピー・エディター: リアム・ケアニー
プロデューサー:アリ・イタニ
編集長:ファイサル・J・アッバス



