サウジ王国 

地雷との戦い

2019年以降400人のイエメン人が地雷で死亡、サウジアラビア主導のイニシアティブがこれを終わらせるよう尽力している

「近くの診療所へ向かう途中、フーシ派が埋めた地雷は彼らの体をバラバラにした。小さな男の子は脚を失った」 

2022年10月30日 | タイズ 

「息子は地面に横たわり、血を流し、脚は切断され、皮膚だけが体からぶら下がっていました」 

2021年 | タイズ県ドゥバブ地区 

「サメーラちゃん(9歳)はボールを追って地雷を踏み、右足を失った」 

ホデイダ南部Al-Durayhimi地区 

「ムハナド君(8歳)は毎週訪れるザンガル市場への道のりで片脚と片手を失なった。そこはフーシ派の地雷によって穴だらけになっている」 

2015年11月25日 | タイズ県アルトゥルバ地区 

「サデック君の両親は、息子の体から血が溢れ出す様子を見て、気を失った。サデック君が2人に水を取って来ようとして離れた後のことだ」 

2021年9月15日 | ホデイダ南部Al-Khawkhah地区アルカタバ村 

待望の結婚式を前に、アマルさんは自分の好みにピッタリ合うドレスを探しにタイズへと向かった。その時町の入り口で幼い子供たちが「不審な物体」で遊んでいる様子を見た彼女の脳裏に、ある鮮烈な記憶が危機感とともに浮かび上がった。 

「その物体は、少し前に父が持っていたものに似ていました」と彼女は言った。「父は警告していました。通りで変なものを見かけても触らないようにと」。 

心配になったアマルさんは、慌てて子供たちからその物体を取り上げた。「爆発して子供たちが傷ついてはいけないと思いました」。 

子供たちのうちの1人が、無邪気にからかおうとしたのだろう、その物体をアマルさんから取り返そうとした。だが、それは地面に落ちてしまった。 

アマルさんは、怪我のために大学や公共の場でのいじめに遭ったが、それでも学位取得と就職を諦めなかった。 

アマルさんは、怪我のために大学や公共の場でのいじめに遭ったが、それでも学位取得と就職を諦めなかった。 

「病院で目覚めるまで何も感じませんでした。腕と目を負傷していることにそこで気づきました」と彼女は言った。 

現在、アマルさんは義眼をはめている。 

「婚約者からは連絡が来なくなり、結婚は破談になりました」と彼女は言った。「しばらくしてから、彼が別の女性と婚約したという話を聞きました」。 

人を傷つける悪意が足の下に潜んでいる。アマルさんの他にも被害に遭う人がいて、これからも増え続けるだろう。 

命を、手足を、生きる糧を奪う「致命的な遺産」 

2014年に紛争が始まって以来、フーシ派の武装勢力は広大な土地に何千という地雷をしかけた。休戦に入っても、民間人の命と生活は地雷に脅かされている。 

「イエメン全土に残る地雷などの爆発物は、死を招く紛争の遺産となっています」と、イエメンでデンマーク難民カウンシルの人道政策顧問を務めるチェリー・フランクリン氏は言った。 

ミサイル攻撃を生き延びたハディール・ムハンマド・アブドゥル・ワセ 

さんは、ある日両腕を失った。タイズの西方ケダにある彼女の家をフーシ派が襲撃したのだ。「大部分の人々が腕や足を失いました。他にも命を落とした人や、視力や身体の一部を失った人たちもいました」と彼女は振り返る。 

両腕を失ったハディールさんは、日々の活動に困難を感じたが、その後、新しい生活に適応した。 

両腕を失ったハディールさんは、日々の活動に困難を感じたが、その後、新しい生活に適応した。 

フーシ派の民兵を非難しながら、ハディールさんはこう語る。「彼らは、私たちの土地に希望の種を蒔く代わりに、不浄と邪悪の種を蒔いています」。 

「彼らは人々が通る道を選んで地雷を設置しています。それも1個ではなく、いくつも連ねているのです」と彼女は言った。「彼らは冷酷非情です。彼らの望みは、軍人も市民も区別せず、国を焼き尽くすことなのです」。 

「破滅の種が私たちの土地に蒔かれています。破壊をもたらす地雷ではなく、希望と未来の種を蒔きましょう。私たちの土地から地雷が完全に取り除かれるまで、イエメンに未来は訪れません」。 

イエメンの都市の間には不毛の砂漠地帯が広々と横たわっている。無防備に道を歩く人の足の下に対人地雷やその他の悪意ある地雷を埋めるには絶好の土地だ。道行く人の多くは農民や商人、そして子供たちである。 

2022年4月から10月にかけて国連仲介のもと停戦が成立したが、ワシントンに拠点を置く戦略国際問題研究所によれば、その間にも毎月少なくとも40人が地雷や不発弾、即席爆発装置によって命を落としたという。 

「(イエメンでは)地雷によって毎日のように市民が犠牲になっています。地雷汚染のひどい地域、例えば紅海沿いのフダイダや、タイズ、アルバイダ、マアリブ、シャブワ、ジョウフ、ハジャ県などでは特に被害が深刻です」と、イエメン各地の地雷被害を記録するボランティアの集団で構成されるイエメン・ランドマイン・レコーズの事務局長、ファレス・アル・ヘマリ氏が言った。 

彼によれば、2023年の最初の2か月間で、イエメン・ランドマイン・レコーズは「(地雷による)市民の死者43人と負傷者78人を記録しました。そのほとんどが子供と女性です」という。 

子供たちや国内避難民は「特に危険である」と、3月に公表されたセーブ・ザ・チルドレンの報告書で指摘されている。また報告書では「2020年1月から2022年11月までの間にセーブ・ザ・チルドレンが支援した子供の爆発物被害者194人のうち、ほぼ4人に1人が国内避難民である」こと、また国内避難民のうち80%が女性と子供であることが強調されている。 

「ワッチング・アワ・エヴリ・ステップ」と題されたこの報告書は、2022年にイエメンで命を落とした子供の死因の半数以上が地雷によるものだったことを明らかにした。 

「息子の脚が吹き飛ばされ、細い肉片だけでかろうじてつながっているのを見て、正気を失うところでした。やつれた息子の体には他にもいくつかの傷があり、そこからも血が吹き出していました」と、2021年に家の羊の世話をしている時に隠された地雷を踏んでしまった15歳のラドワン君の父親は言った。 

ラドワン君は一命をとりとめたが、体に一生残る障害を負ってしまった。 

ラドワンの町タバブは、フーシ派民兵が地雷を撒き散らした後、数十人の子どもが命を失った。 

ラドワンの町タバブは、フーシ派民兵が地雷を撒き散らした後、数十人の子どもが命を失った。 

国境なき医師団は、ハジャ県のアブス総合病院で地雷被害者が増加することを予測した。これについて、国境なき医師団のイエメン支部長キャロライン・デュカルム氏はアラブニュースに対して「原因の大部分は、コミュニティー(国内避難民とホストコミュニティー)の移動が活発になっていることです。かつて前線近くにあって放棄された農地に向かっている場合もあれば、生き残るのに必死な人々が牧草地や漁場を求めて移動している場合もあります」と語った。 

「(アブス)病院まで治療にやって来る人の数が多すぎるため、病院のスタッフの手や必要不可欠なサービス提供が追いつかない状態にあります」と彼女は言った。「私たちのチームは2015年から病院で働いていますが、今は限界に達しています」。 

また、デンマーク難民カウンシルのイエメン支部に所属するチェリー・フランクリン氏は、地雷やその他の爆発物が妨げとなって、国内避難民が自宅に戻ったり、不可欠なサービスにアクセスしたり、暮らしを立て直したりすることができなくなっているという。 

セーブ・ザ・チルドレンは、国内避難民は地雷、爆発物、不発弾の脅威に対して 「特に脆弱」 であると述べている。(AFP) 

セーブ・ザ・チルドレンは、国内避難民は地雷、爆発物、不発弾の脅威に対して 「特に脆弱」 であると述べている。(AFP) 

国内避難民は、地雷によって包囲され、必要な人道支援も受けられず、生計も立てられない状態にある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは2019年の報告書「イエメン:市民を殺し、援助を妨げるフーシ派の地雷」にて、2017年半ば以降、フーシ派がしかけた地雷が原因で「脆弱なコミュニティーに支援団体が到着できなくなっている」と述べている。 

セーブ・ザ・チルドレンの報告書によれば、国内避難民の苦境はさらに深刻化するという。イエメンで支援を行う人道支援組織に十分な資金が行き渡らないこと、また洪水や砂嵐などの環境災害がその原因であり、それに加えて災害によって地雷が位置を変えるということも起こりうる。 

「イエメン全土で国際基準に沿った地雷除去にアクセスできること、そしてそれが迅速かつ効果的に実現できるよう国際社会が支援を行うことが重要です」と、デンマーク難民カウンシルのフランクリン氏は語った。 

フランクリン氏は、「たとえイエメンの紛争が終わっても、地雷汚染を解消するための人道支援を増やさないことには、イエメンの人々の命は危険にさらされ続けるでしょう」と言った。 

「農民は自分たちの土地にアクセスできず、子供たちは地雷原を歩いての通学を強いられ、紛争から避難した多くの人々は家に帰ったり生活を立て直したりすることができないままになるでしょう」。 

国境なき医師団のデュカルム氏は、「食糧安全保障を確保する上での障壁」に地雷が新たに加わることで栄養失調の深刻化が起きると語る。その理由は、援助の提供が妨げられるだけでなく、人々が「基本的なニーズを満たす上で必要な生活費を得るための機会を求めて移動する際に地雷のリスクに直面する」ためでもあるという。 

彼女は「昨年は栄養失調がピークに達するのが早く、治療が必要な重度の栄養失調の子供が多かったことも重なり、国境なき医師団が支援する施設の能力が追いつかない状態になりました」と述べ、「イエメンで起きる栄養失調の根本的な原因のひとつ」は手頃な価格で食料が手に入らないことだと指摘した。 

国連世界食糧計画(WFP)による2022年の調査で、イエメンの約3分の1の家庭で食事が不十分であることが分かった。(AFP) 

国連世界食糧計画(WFP)による2022年の調査で、イエメンの約3分の1の家庭で食事が不十分であることが分かった。(AFP) 

WFPによると、5歳未満の小児220万人が急性栄養失調で治療を必要としている 。(AFP)  

WFPによると、5歳未満の小児220万人が急性栄養失調で治療を必要としている 。(AFP)  

イエメンの栄養失調の主な原因の1つは、食料価格の高騰だと国境なき医師団(MSF)は述べている。(AFP) 

イエメンの栄養失調の主な原因の1つは、食料価格の高騰だと国境なき医師団(MSF)は述べている。(AFP) 

1992年、地雷の使用に終止符を打つため、6つのNGOが結集した。(AFP) 

1992年、地雷の使用に終止符を打つため、6つのNGOが結集した。(AFP) 

Item 1 of 4

国連世界食糧計画(WFP)による2022年の調査で、イエメンの約3分の1の家庭で食事が不十分であることが分かった。(AFP) 

国連世界食糧計画(WFP)による2022年の調査で、イエメンの約3分の1の家庭で食事が不十分であることが分かった。(AFP) 

WFPによると、5歳未満の小児220万人が急性栄養失調で治療を必要としている 。(AFP)  

WFPによると、5歳未満の小児220万人が急性栄養失調で治療を必要としている 。(AFP)  

イエメンの栄養失調の主な原因の1つは、食料価格の高騰だと国境なき医師団(MSF)は述べている。(AFP) 

イエメンの栄養失調の主な原因の1つは、食料価格の高騰だと国境なき医師団(MSF)は述べている。(AFP) 

1992年、地雷の使用に終止符を打つため、6つのNGOが結集した。(AFP) 

1992年、地雷の使用に終止符を打つため、6つのNGOが結集した。(AFP) 

地雷に苦しむ土地での地雷除去作業 

2018年半ばに開始されたマサム(イエメンにおけるサウジアラビアの地雷除去プロジェクト)は、フーシ派武装勢力が撤退した地域から39万586個の地雷を除去してきた。 

しかし、地雷が大量に存在すること、および地雷汚染された範囲を正確に特定できる地図がないことから、国内に敷設されたすべての地雷の除去・破壊には何年もかかるだろうと、プロジェクトの最高責任者ウサマ・アル・ゴサイビ氏は説明する。 

マサムが始まってから除去・無力化された爆発物には、6065個の対人地雷、13万7197個の対戦車地雷、7741個の爆発装置、23万9583個の不発弾が含まれる。 

マサムのデータによれば、これまでに地雷が除去された範囲は約446億3500万平方メートルに上る。これはサルマン国王人道援助救済センターが監督するデータであり、除去が完了した地域は主に農地、道路、学校、病院、井戸があるエリアだ。 

アル・ゴサイビ氏は、「このプロジェクトでは地雷を除去するだけでなく、再利用されないよう破壊する作業も行っています」と述べ、マサムの技術チームが、地域にあるフーシ派の研究所で製造された類似の装置に加え、認識可能な全ての地雷を処理していることも付け加えた。 

 

マサムにとって、地域で製造される地雷は大きな懸念事項である。 

「自分の土地から家に帰る途中で、対戦車地雷を改造して作った対人地雷に出くわすことを想像してみてください。教室が爆弾で狙われることを想像してみてください。これが今のイエメンの厳しい現実です。いつもすぐ目の前に死が待ち構えているのです」とアル・ゴサイビ氏は語った。 

「悲しいことに、爆発物は人を区別をしません。イエメンでは毎年、何千人もの人が命を落としたり手足を失ったりしています。だからこそ、マサムプロジェクトはイエメンから地雷の脅威を排除するためにたゆまぬ取り組みを続けるのです。イエメンが安全に再建できるよう、現地の地雷除去要員の訓練と監督を行っています。彼らは自分たちの命を危険にさらして他の人を助けているのです」とアル・ゴサイビ氏は付け加えた。 

550人の専門家、地雷除去要員、その他の従業員と連携しながら、マサムは32のエンジニアリングチームを訓練し、装備を整えた。 

イエメンでの地雷除去作業は、敷設された装置の数が多く、それらの位置を示す地図がないため、何年もかかることが見込まれる。 

イエメンでの地雷除去作業は、敷設された装置の数が多く、それらの位置を示す地図がないため、何年もかかることが見込まれる。 

サルマン国王人道援助救援センター(KSRelief)のマサムプロジェクトは、解放されたイエメンの地域で2018年半ば以降、390,586個の地雷を除去した。 

サルマン国王人道援助救援センター(KSRelief)のマサムプロジェクトは、解放されたイエメンの地域で2018年半ば以降、390,586個の地雷を除去した。 

現地で製造された地雷は、マサムにとって大きな懸念事項である。 

現地で製造された地雷は、マサムにとって大きな懸念事項である。 

マサムのチームメンバーは全員イエメン国籍の若者だと、運営ディレクターのザウバ・アル・ラウィ氏は言う。 

マサムのチームメンバーは全員イエメン国籍の若者だと、運営ディレクターのザウバ・アル・ラウィ氏は言う。 

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イエメンでの地雷除去作業は、敷設された装置の数が多く、それらの位置を示す地図がないため、何年もかかることが見込まれる。 

イエメンでの地雷除去作業は、敷設された装置の数が多く、それらの位置を示す地図がないため、何年もかかることが見込まれる。 

サルマン国王人道援助救援センター(KSRelief)のマサムプロジェクトは、解放されたイエメンの地域で2018年半ば以降、390,586個の地雷を除去した。 

サルマン国王人道援助救援センター(KSRelief)のマサムプロジェクトは、解放されたイエメンの地域で2018年半ば以降、390,586個の地雷を除去した。 

現地で製造された地雷は、マサムにとって大きな懸念事項である。 

現地で製造された地雷は、マサムにとって大きな懸念事項である。 

マサムのチームメンバーは全員イエメン国籍の若者だと、運営ディレクターのザウバ・アル・ラウィ氏は言う。 

マサムのチームメンバーは全員イエメン国籍の若者だと、運営ディレクターのザウバ・アル・ラウィ氏は言う。 

アラブ諸国の中で、イエメンは対人地雷禁止条約採択後、最初に地雷のストックを廃棄した 

1960年代から1990年代にかけて繰り返された紛争で地雷に苦しめられた歴史を持つイエメンだが、カーネギー国際平和基金によれば、1997年に対人地雷禁止条約に署名し、その翌年に批准した後、イエメンは「対人地雷のストックを完全に破壊した最初のアラブ国家」となった。 

イエメン・ランドマイン・レコーズのアル・ヘマリ氏は、「地雷汚染地域での地雷除去に長年かけて取り組んできたイエメンは、2014年初頭、国内の地雷が根絶されたことを正式に宣言する寸前にまでこぎつけました。しかし、その年の終わりにまたもや紛争が始まったことで、振り出しに戻されてしまいました」と語った。 

「今では(イエメンは)世界で最も地雷汚染のひどい地域のひとつです」。 

南北戦争中に地雷が使われたという報告があるにもかかわらず、静かに人を殺すこの兵器は、第二次世界大戦で広く使われるまで深刻な問題とは認識されなかった。1993年の論文「臆病者たちの戦争:地雷と民間人」では、「ドイツ、イタリア、イギリス、フランスは、北アフリカだけで500万から1900万の地雷を敷設した」と述べている。 

1992年、地雷の使用に終止符を打つため、6つのNGOが結集した。(AFP) 

1992年、地雷の使用に終止符を打つため、6つのNGOが結集した。(AFP) 

1997年、カナダのオタワに122カ国の代表者が集まり、地雷を根絶して市民の命を守ることを目指す条約を制定した。それが対人地雷禁止条約、正式には「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」であり、2022年8月時点で167か国によって批准あるいは遵守されている。 

この条約は1999年3月1日に発効され、対人地雷の使用、製造、貯蔵、移譲を禁止し、汚染地域の地雷除去、地雷のストックの破棄、被害者の支援を各国に義務付けた。 

地雷禁止国際キャンペーン-クラスター爆弾連合のコミュニケーション・マネージャーであるジャレッド・ブロック氏は、オタワでの会議は「軍縮について語る上での焦点を人の安全を守ることにシフトさせ、被害者を中心とした議論を行い、その後の軍縮条約の雛形となりました」と述べた。 

彼はさらに、1997年の条約採択以来、「地雷の死傷者数が劇的に減少しました」と語った。 

しかし、フーシ派のような非国家軍事組織が地雷敷設を続けたため、市民の安全は確保されなかった。 

それ以来、市民社会組織は、関連するNGOの支援を受けて、地雷や爆発物の排除を絶えず推進している。 

「非国家主体による地雷使用をやめさせるために市民社会組織が行う取り組みの好例は、私たちのメンバーであるジュネーブ・コールの活動です」とブロック氏は語る。「ジュネーブ・コールは非国家主体との対話や交渉を促進し、国際人道法の原則の遵守、および地雷の無差別な武器利用を公に放棄することを非国家主体に宣言してもらっています」。 

「対人地雷禁止条約は今日でも非常に重要な条約です」と彼は言う。 

「ミャンマーやロシア、シリアなど、条約に批准していない少数の国家、およびコロンビア、イエメンなどの地域で紛争に関わる非国家武装組織は莫大な量の地雷を使っています。これは少女、少年、女性、男性と誰彼かまわず市民を殺傷するこの遺産がこれからも長く残っていくことを意味しています」。 

命をかけて目指す尊い目標 

タイズのムサ地区で暮らすムハンマド・サレー・マラーニさんは、「テロリストのフーシ派民兵が私たちのところにやってきて、道路や家、農場、学校、井戸、病院に地雷をしかけました」と語る。 

「家に戻ることも、モスクに行くことも、学校に行くこともできません。私たちの生活は破壊されてしまいました」。 

マサムの地雷除去活動は多大なコストを要する。その中には多数のチームメンバーの命も含まれる。 

マサムは地雷を除去するだけでなく、破壊することもある、とジェネラル・マネージャー のウサマ・アル・ゴサイビ氏は言う。 

マサムは地雷を除去するだけでなく、破壊することもある、とジェネラル・マネージャー のウサマ・アル・ゴサイビ氏は言う。 

マサムのPR・メディアディレクターであるアル・マフムード氏は、地雷除去作業によってこれまでに国外からの専門家5人を含めた30人の作業員が死亡し、少なくとも52人が負傷したと述べた。 

「彼らは、イエメンに平和を取り戻すための偉大な人道支援の中でその命を犠牲にしたのです」と、当時アラブニュースにイエメン人権大臣のムハンマド・モーセン・アスカル氏は言う。 

しかし、このような悲劇的な事件があっても、マサムのチームは地雷除去活動の意欲を失わなかった。 

イエメンのアデンおよび西海岸におけるマサムの活動を指揮するザウバア・アル・ラウィ氏は、マサムのチームメンバーは全員が若いイエメン国民であり、国に対する誇りと敬意を胸に、進んでこの活動に参加したと言う。 

地雷除去の過程でマサムのチームメンバー30人が命を落とした。 

地雷除去の過程でマサムのチームメンバー30人が命を落とした。 

 

爆発物処理と人道的地雷除去を専門とする英国の会社セーフレーン・グローバルで特別プロジェクトの責任者を務めるクリス・クラーク氏は、地雷除去が達成されたのは「マサムが管理、調整、装備、支援、訓練、保証した32のイエメンの地雷除去チームのおかげである」と述べた。 

彼は、マサムの働きによって市民の命が救われただけでなく、国全体の未来をよりよくしていくための道が開けたと語った。 

「私たちの仕事は短期的に命を救うだけではありません。地雷をひとつ除去すれば、そして1平方メートルの土地の地雷がなくなれば、国がやがて平和になったとき、それだけ安全な土地が増えるのです」と彼は言った。 

「なので、これはイエメンという国、そしてイエメンの人々の、将来における再建と復興への投資なのです」。 

クレジット

執筆と調査: ムハンマド・アル・スラミ、 アナン・テロ
エディター:ダイアナ・ファラー
クリエイティブディレクター:オマール・ナシャヒビ
デザイナー: ダグラス・オカサキ, オマール・ナシャヒビ
グラフィック:ダグラス・オカサキ
ビデオプロデューサー: ハセニン・ファヘル
ビデオエディター:アリ・ノーリ
映像: Masam 
ピクチャーリサーチャー:シーラ・マイヨ
コピーエディター: 岩田明子
翻訳: カリン・ファレス, シャーベル・メヒ, シンシア・ミラン, ダイアナ・ バラジ, ジョエル・スレイマン, ジョイ・ ジェリーズ, ラフカ・ イブラヒム, リマ・バラカット
英語エディター:タレク・アリ・アフマド
フランス語エディター:ゼニア・ズビボ
プロデューサー:アルカン・アラドナニ
編集長:ファイサル・J・アッバス