アラビアの再野生化

ヒョウを呼び戻すことは、サウジアラビアの景観および野生生物の、保護および再生計画における核心部分だ

ヒョウは太古の昔からサウジアラビアの原風景を彩ってきた、最も美しく、神秘的で、象徴的な動物の一つだ。

しかしアラビアヒョウは国際自然保護連合(IUCN)によって、「絶滅寸前」という、野生絶滅の一歩手前に分類されてもいる。

アラビア半島全域に生息しているのは200頭未満だと考えられ、発見された中で最大の生息域はオマーンのドーファー山脈である。

アラビアヒョウは、サウジアラビアでその獲物共々絶滅が危惧されていて、数百年にわたる野放しのハンティングと、人間の発展が拡大するにつれての適した生息環境の継続的な喪失とにより、絶滅の淵に追いやられている。

その状況は変化し始めている。世界トップレベルの飼育繁殖プログラムのもと、その堂々とした動物は野生に返されているためだ。

これまで、タイフの野生動物研究所(Wildlife Research Center)では、アル・ウラー王立委員会(Royal Commission for AlUla、RCU)が管理するアラビアヒョウプログラムの一環として、16頭のヒョウの繁殖に成功している。直近では2021年4月に子が一頭生まれた。

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

このプログラムを通じたRCUの究極の目標は、IUCNの絶滅の恐れのある野生生物のリストにおけるアラビアヒョウの立ち位置を改善させることだ。その目標に向かってRCUは、地球全体の生態系にとって決定的な役割をもつ7種の大型ネコ科動物の保護を専門的に行う世界的な保護団体、Pantheraと協力し合って取り組んでいる。

ゆくゆくはアラビアヒョウはRCUが作ったシャラーン自然保護区(Sharaan Nature Reserve)に解き放たれることになる。ここは、古代岩面彫刻があるナバテアンの都市ヘグラの東で、印象的な峡谷の風景が広がる、数千年にわたってアラビアヒョウが生息していた地域だ。

「アラビアヒョウなどの絶滅の危機に瀕している種を助けることは、地球の保護と、生態系の自然なバランスとにとって、大変重要だとわれわれは信じています」と、RCUの自然保護区長官Ahmed Mohammed Al-Malki氏は言った。

「われわれRCUの目標は自然が持つバランスの力を取り戻すことに他なりません」

2022年2月、IUCNによってRCUが政府会員資格を与えられた際に、RCUの取り組みは知られることとなった。通常、名誉は州レベルで与えられるが、「保護活動への取り組みが認められ」、RCUの組織にまで拡大された。

RCUのアムル・アルマダ二CEOは、この発表は「RCUが、巨大な規模のプロジェクトを実施し、世界の自然保護における重要なプレーヤーであるという、世界的な認識の高まりを示しています」と発言した。

RCUは今ではIUCNの専門家18,000人の知識を参考にできるだけでなく、AlUlaでの活動結果を世界の自然保護活動家に向けて発信している。

RCUメンバー参加は「地域におけるIUCNの存在感を強め、世界の天然資源・環境の良い管理を促進するIUCNの能力をさらに強める」と、IUCNの事務局長ブルーの・オベーレBruno Oberle博士は言う。

このヒョウプログラムは、サウジアラビア全土で自然のバランスを取り戻し、守るよう計画された、グリーン・イニシアチブの最重要項目だ。

2021年に公表されたサウジ・グリーン・イニシアチブの一部として、再野生化の取り組みがサウジアラビア全土で実施されているが、その中には、広大な地域での非砂漠化、過剰放牧によって悪化した生息地の回復、保護区の数と規模を大幅に拡大する計画などがある。

サウジアラビアで始めて自然保護区が設置されたのは1986年のことで、サウジアラビア北部のHarrat Al-Harrahにある13,775平方キロメートルの保護区だ。今そこに生息しているのはたくさんの魅力的で重要な動物たち、リムガゼル、アラビアオオカミ、アカギツネ、スナギツネ、シマハイエナ、ケープノウサギ、トビネズミ、フサエリショウノガン、イヌワシなどだ。

Harrat Al-Harrahの指定以来、14の地域、合計82,000平方キロメートル以上が保護区に定められてきた。サウジ・グリーン・イニシアチブの援助を得て、保護区の面積をサウジアラビアの総面積の30%、およそ60万平方キロメートルに増やす新しい計画がある。

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

この幼獣が2021年4月に生まれたことはアラビアヒョウプログラムの最新の成功例だ(写真は生後5ヶ月)。(RCU)

サウジ・グリーン・イニシアティブで定められた計画の中に、今後10年の間に100億本の木を植えることで森林面積を12倍増加させるというものがある。これは、約4,000万ヘクタール分の荒れ地の修復に相当する。

「よりグリーンな世界を築く」。サウジ・グリーン・イニシアティブの開始に立ち会うサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下。2021年10月、リヤド。(AFP/Saudi Royal Palace)

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下が当イニシアティブおよびそれに伴う中東グリーン・イニシアティブを発表した際に言及したように、文字通りの全国的な緑化を進めるにあたり、「地域の人々を結集させ、気候変動に立ち向かう世界目標の達成に大きく貢献する積極的なロードマップを明確に規定した。それはサウジアラビア王国および地域の地球保護の方針を定める」。そして計画において重要な役割を果たすのである。

主要な世界的石油生産者としての立場から、彼は次のように付け加えた。「わが王国は、気候危機への対策を進めるにあたって、自らの役割分担をはっきりと認識している。石油とガスの時代に王国がエネルギー市場を支えたのと同じように、世界的な緑化を進めるにあたってわが王国は世界的な主導者となるだろう」

緑化が進んだ世界では、アラビアヒョウやその他の復活を遂げた、また保護された在来種が再び自由に練り歩くだろう。

2021年4月23日にかわいらしいメスのヒョウが誕生した。これは、ターイフにあるサウード・アル・ファイサル王子野生生物研究センターにてごく最近生まれたヒョウで、サウジアラビアのヒョウ繁殖プログラムの成功の証である。

このヒョウの誕生に関して、アル・マリキ氏はこう語る。「ヒョウが誕生したのはとても大きな出来事です。アラビアヒョウ復活に向けて一歩前進したことになります」

健康なヒョウが生まれ、研究センターの職員は興奮と安堵に包まれた。

「メスのヒョウが誕生したときの気持ちは言葉で表すことができません」とアル・ウラー王立委員会(RCU)の獣医マネージャーであるアブドルアジーズ・アレンジー氏は語った。「その日にヒョウの赤ちゃんが誕生するだろうと予想していましたが、飼育員から生まれるとの連絡が入ったときは、『すごい』と思いました。私は起床して身支度を済ませ、仕事に急行しました」

研究センターには現在16頭のヒョウがおり、「今後2年の間で20から50パーセントその数を増やしたいと思っています」とアレンジー氏は述べた。

繁殖プロセスは簡単なものではないと彼は付け加えた。「オスとメスを引き合わせても、ケンカして危害を加え合うこともあります。その場合は一度オスとメスを離し、また同じ手順を繰り返すことになります」と彼は語った。

担当チームによってヒョウの妊娠が確認されると、担当の飼育員が出産まで常にメスのヒョウの健康状態、行動、そして食生活を管理する。ヒョウの妊娠期間は95から100日間で、一般的に一度に1から3頭の赤ちゃんを出産する。

「生まれたばかりのヒョウにとって、最初の12週間がとても重要です。そのため、飼育員はヒョウの親子に干渉せずに母親に子供の世話をさせるようにしています」とアレンジー氏は語った。

13週目に、担当チームは生まれてきたヒョウの検診を行い、性別を確定し、一連の予防接種を開始した。

「メスのヒョウが誕生したことは、当プログラムを進めるうえでとても喜ばしいことです」とアレンジー氏は述べた。「ヒョウの親子の健康状態は全般的に非常に良好です」

パンセラ(Panthera)創設者であるトーマス・カプラン氏はヒョウの赤ちゃんの誕生に関して、「絶対的に純粋な喜びの瞬間」と述べた。

彼は次のように付け加えた。「ヒョウの赤ちゃん誕生のニュースは、人々に希望を伝える機会を私たちに与えてくれました。希望は全ての戦略において重要な要素です」

「システムが順調に働き、このように美しく象徴的な動物を繁殖でき、次の世代で生まれてくる動物を野生で保護できるということが示すことができれば、私たちは目標を達成したということが証明されます」

ヒョウの野生復帰こそが、サウジアラビア全体の生態系の保護および復活という、サウジアラビアの目標にとって重要であるとカプラン氏は付け加えた。

「大型ネコ科動物は食物連鎖ピラミッドの頂点に立っています。そのような動物を保護できるというのは美学です」と彼は言及した。「生態系において大型ネコ科動物をアンブレラ種あるいは頂点捕食者である象徴的な大型動物と認識するべきです」

「それは健全なランドスケープの表象で、野生生物保護のワンストップ・ショッピングです。言い換えると、広範囲のランドスケープを保護したい場合、食物連鎖の頂点に立つアンブレラ種に注目するべきです。サウジアラビアにおいて、それはヒョウなのです。」

サウジアラビアは複数の保護区を指定し、その他の絶滅が危惧される在来種の飼育下繁殖および野生復帰にすでに大成功している。例としてフサエリショウノガン、ヌビアアイベックス、赤首ダチョウ、エドミガゼル、そして最も飛躍的に数を回復したアラビアオリックスが挙げられる。カプラン氏は、オリックスの数の増加例を代表的な成功例として引き合いに出した。

アラビア半島で絶滅寸前まで追い込まれていたアラビアオリックスの劇的な個体数回復は、サウジアラビアでアラビアヒョウを野生に戻す取り組みをしている保護活動家たちを勇気づけた。(Shutterstock)

「自然保護活動家によるアラビア半島での成功例を見れば、アラビアヒョウ・イニシアティブを通して我々が達成しようとしていることが理解できるでしょう」と彼は述べた。

「アラビアオリックスの数の回復は、世界中のどの動物にも当てはめることのできる飼育下繁殖および野生復帰に関する最も刺激的なケーススタディの1つであり、アラビアヒョウの野生復帰を成功に導く最も有力なモデルの1つです」

「そのプログラムに関わっていた者は皆、アラビアオリックスが飼育下で最初に誕生したときのことを忘れないでしょう。彼らはプログラムがこれほどまでに成功するとは思っていませんでした。ターイフにおけるヒョウの赤ちゃん誕生は、アラビアヒョウ・イニシアティブ成功への第一歩であると我々は確信しています」

一時期アラビア半島で一般的だったカモシカの一種で、アラビア語でアル・マハと呼ばれていたアラビアオリックスは、1972年までに狩猟によって野生絶滅種になった。

飼育下の個体で繁殖が行われ、1982年までにアラビアオリックスはオマーンで野生復帰し、続いてサウジアラビアおよびUAEでも野生復帰した。2011年までに、絶滅危惧種レッドリスト上でのアラビアオリックスのステータスは絶滅から危急に変更されたが、一度姿を消した動物がこんなにも飛躍的に数を回復したのは初めてのことだった。

現在、自然保護活動家らは同様にアラビアヒョウを絶滅の瀬戸際から華々しく生還させる方向に進んでいる。

ここ数年にわたり、研究者らはカメラトラップを利用してサウジアラビアに野生のヒョウが生息している証拠をとらえようとしてきたが、未だ成功していない。しかし、あたり一帯にちりばめられた古代の岩面彫刻やペトログリフにヒョウが描かれていることから、ヒョウが何千年間もここに生息していたことが証明できるのである。

2001年に、地元の教師がサウジアラビアのハーイル地方で何百ものペトログリフを発見した。そこはシュウェイミスの村から40㎞ほど離れた奥地で、砂に埋もれた枯れ谷を一望できる断崖である。

何千年も前にサウジアラビアのシュワイミスの岩に刻まれたヒョウのペトログリフ。(Richard Bryant)

何千年も前にサウジアラビアのシュワイミスの岩に刻まれたヒョウのペトログリフ。(Richard Bryant)

これは歴史的な発見で、2015年にこの史跡はサウジアラビアおよび周辺地域で最大規模の重要な岩絵群の一部としてUNESCO世界文化遺産に登録された。

1万年も前に描かれた無数の野生動物の中に、ヒョウ、ライオン、そしてチータが、緑豊かだった当時のランドスケープの広がるサウジアラビア半島を練り歩いているのがはっきりと描かれている。

このようにヒョウが大昔から生息していたことを示す証拠は、古代にその他多くの野生生物が多く生息していたという証拠にもなる。湖や川が干上がり、中央アラビアの緑豊かなサバンナが現在の国内の大部分を占める砂漠に姿を変える前、この土地はガゼル、アイベックス、オリックス、そして野生のロバの一種であるオナガーなど豊富な獲物で満ち溢れていたのである。

2013年に、オックスフォード大学とサウジ観光および国家遺産委員会の連携で進められたPalaeodesertsプロジェクトに参加した研究者らは、シュウェイミスの岩絵を多数マッピングし、分析した。.

彼らは、約13頭の一般的なライオンの群れが繁殖し、その個体数を維持するのに十分な食料を得るには、160頭以上のオナガーの群れが必要であるとの結論を出した。彼らは、ヒョウが一頭生きるには、70頭以上のマウンテンガゼルが必要であっただろうと言及した。

岩絵によって裏付けられている通り、アラビアの大型ネコ科動物は2,000年前くらいまでは多数存在していたのである。しかしながら、その頃にはライオン、チータ、そしてヒョウに残された時間は少なくなってきていた。

イエメン出土・前5~3世紀作のこのフリーズの左側にはガゼルを襲うライオンが、右側にはアイベックスの背中に飛びかかるヒョウが描かれている。(Walters Art Museum)

イエメン出土・前5~3世紀作のこのフリーズの左側にはガゼルを襲うライオンが、右側にはアイベックスの背中に飛びかかるヒョウが描かれている。(Walters Art Museum)

アジアライオンとも呼ばれるインドライオンは、アラビア半島からはとっくに姿を消し、現在はインドのグジャラート州でしか存在が確認されていない。一時はアラビアおよびメソポタミアの全域のどこにでも生息していたが、サウジアラビアでは19世紀後半までに狩猟によって絶滅した。

サウジアラビアおよび周辺地域で最後に目撃された2頭のライオンは1914年にオスマン王朝の役人にモスル付近で撃たれた。2頭のライオンは古都ニネベの近くで殺された。痛ましいことに、ニネベでは紀元前668年から紀元前631年にかけてアッシリア帝国を支配したアシュルバニパル王がライオン狩りをしている場面を描いた彫刻が2,500年以上前に彫られたのである。

前645〜635年頃、戦車の上からライオンを狩るアッシュルバニパル王を描いたアッシリアの都ニネヴェ(イラクのモスル近郊)出土の壁画のレリーフ。(Getty Images)

何世紀にもわたって異国の戦利品として尊ばれ、フィレンツェのルッカ家の紋章として採用されたチーターは、イタリアのフィレンツェのマギ礼拝堂にある、ベツレヘムへ旅する東方の三博士を描いたこの15世紀のパネルにも登場する。(Getty)

何世紀にもわたって異国の戦利品として尊ばれ、フィレンツェのルッカ家の紋章として採用されたチーターは、イタリアのフィレンツェのマギ礼拝堂にある、ベツレヘムへ旅する東方の三博士を描いたこの15世紀のパネルにも登場する。(Getty)

チータは、サウジアラビアではライオンよりわずかに長く生き延びることができたが、現在は野生に生息しておらず、アラビア半島全域において、チータ及びその獲物の野放しの狩猟が行われたことで絶滅に追いやられたということが人々の記憶に残っている。チータの辿った運命こそが、現在ヒョウを絶滅の瀬戸際から救おうと取り組んでいる人々の意欲を駆り立てているのである。

チータが少なくとも、1950年代後半まではサウジアラビアおよびクウェートに生息していたという記録が残っている。1959年に、イラクとヨルダンとの国境付近のサウジアラビア北部で4頭のチータが殺されたと報告された。

1963年に、オマーンとの国境付近のイエメン東部のWadi Mitanで1頭のチータが目撃された。1977年にはオマーン南部のJibjat付近でもう1頭別のチータが銃殺されたと報告があった。これがアラビア半島で目撃された最後のチータである。

アラビアヒョウは、もう少し打たれ強いと見て取れる。

何千年にも渡って気候変動やサウジアラビアで広がる乾燥状態に見事に適応し、2,000年前にアラビア全域で起きた大幅な砂漠化を生き延びたのである。

しかしながら結局はライオンやチータと同様に、ヒョウは究極の頂点捕食生物である人類の進化と発展には適応することができなかった。

歴史的に、アラビアヒョウはサウジアラビアの広範な地域に渡って生息していた。その生息の中心地は、北はヨルダンから南はイエメンの紅海の海岸との境界にある山々にまで及んだのだが、ハーイル地方の岩面彫刻が示す通り、遥か東の地域にも生息していた。

1888年、イギリスの探検家チャールズ・ダウティは、ハイエナや「nimrという黒と茶と斑点のまだら模様のヒョウ」などの動物にサウジアラビアで遭遇したと書いている。(Getty Images)

イギリスの冒険家レディ・アン・ブラントは、アラビアの馬を買うためにアラビアの中心まで旅して、ネフド砂漠でヒョウに遭遇した。(Alamy)

イギリスの冒険家レディ・アン・ブラントは、アラビアの馬を買うためにアラビアの中心まで旅して、ネフド砂漠でヒョウに遭遇した。(Alamy)

イギリス人探検家のレディ・アン・ブラント氏やチャールズ・ダウティ氏など、初期のころの西洋人旅行者の証言によると、19世紀後半にヒョウは、ハーイルやリヤドなど遠く東の州のはるか内陸で見ることができたようである。

レディ・アン氏は1881年の著書『遍歴のアラビア』で次のように記した。「野生動物に関して、私はネフドでダチョウ、ヒョウ、オオカミ、キツネ、ハイエナ、野ウサギ、トビネズミ、白カモシカ、そしてガゼルの存在を確認した」。ネフドはサウジアラビア北部のハーイル地方の大砂漠である。

1888年に出版された『アラビア砂漠紀行』の中でダウティ氏は「肉食動物の中でも、特に多く生息しているのがチュッバ(Thubba)とハイエナで、次に多いのは黒色や茶色のブチで斑点のあるヒョウである」と報告した。

何世紀も前は、4種類ものヒョウの亜種がアラビア半島を練り歩いていたかもしれない。現在はアラビアヒョウたった1種類しか残っておらず、この1種類でさえもサウジアラビアには生息していない可能性がある。

1960年代にはすでに王国内でアラビアヒョウの目撃報告はほとんどなかった。1998年から2003年かけて研究者らによって文書化された19件の目撃情報のうち、確実とされたのはわずか4件である。

1999年に、Jibal Shadaでヒョウに襲われ、一部食べられた痕跡のあるヤギの死骸が発見された。同年にAl-Atifaで、さらに2002年にWadi Khataynでヒョウの仕業とみられる痕跡が見つかった。

農民に撃たれた2頭のヒョウ。2021年7月、イエメン南部のローダル。

2021年7月に、イエメン南部のローダーで銃殺された2頭のヒョウの写真がSNS上で拡散され、国際的な怒りが沸き起こった。農夫は、ヒョウが家畜の羊を殺していたと主張した。イエメンではヒョウを殺すことは違法だが、戦争で荒廃した国においてこの男性を罰することは難しいだろうと役人も認めたのである。環境保護当局のスポークスマンが報道陣に対して、「不幸にも、この地域の現在の混乱状況を考えると、動物保護は優先事項ではない」と発言した。

サウジアラビアで知られる限り最後のヒョウの目撃例。羊飼いによって毒殺された。2014年、メッカのバワディ・アル・ヌマン村。

サウジアラビアで知られる限り最後のヒョウの目撃例。羊飼いによって毒殺された。2014年、メッカのバワディ・アル・ヌマン村。

王国内におけるごく最近のヒョウの目撃情報も不幸なものであった。サウジアラビアからヒョウが完全に姿を消してしまったかと思われていたのだが、2014年にYouTubeにヒョウの死骸を映した動画が投稿された。メッカのWadi Numan地方で、家畜を襲っていた野犬を殺そうと毒物を撒いていた農夫によって意図せずヒョウが殺されたのである。

「絶滅の危機に瀕していようがいまいが、人に動物を毒殺する権利はない」と野生動物保護委員会の当時の総責任者アフメッド・アル・ボウク氏は主張した。「我々もしくはその他の機関に連絡するべきです。そうすればこちらで人も動物も守りながら必要に応じて措置を講じることができます」

カメラでヒョウが生息している証拠をとらえようという懸命な取り組みも虚しく、この一件以来、王国内で生死を問わずヒョウは目撃されていない。

アラビアヒョウの最後の生息地はオマーンのドファール山脈とされている。同山脈でアラビアヒョウがカメラトラップで撮影された。(Land Rover Our Planet)

アラビアヒョウの最後の生息地はオマーンのドファール山脈とされている。同山脈でアラビアヒョウがカメラトラップで撮影された。(Land Rover Our Planet)

「サウジアラビアでヒョウが絶滅したとは言い切れないと私は考えます」と生物学者デイビッド・マロン氏は語る。彼はマンチェスター・メトロポリタン大学自然科学学科の客員教授で、IUCNレッドリスト委員会のメンバーである。

「しかし、ここ数年にわたり、多くのカメラトラップが仕掛けられてきました。この取り組みはここ2年の間にパンセラのメンバーがアル・ウラーと連携してたくさんの場所にトラップを設置し、強化されてきましたが、彼らは依然としてヒョウの姿を発見できていません」

「現時点での感覚としては、現存する個体はないということがほぼ確実ですが、どこかに1、2頭生息している可能性は捨てきれません。」

ヒョウが完全に姿を消すはずがないという主張には多くの理由があると彼は語る。「それは美学、道徳的な問題、または生態系の健康全般に関することです。無論、道徳的な問題に関しては、我々はこれを受け継ぎ、次世代へと引き継ぐべきです」

「十分に機能する自然の動的生態系を望むのなら、食物連鎖内の全ての段階の生物の存在が必要不可欠で、頂点捕食者によって次の段階の生物が制御され、それが同様に続いていくのです」

「それぞれの動物が生態系に貢献しており、その仕組みに何らかの混乱が生じると、それがどのような妨げになるかを予想することはできないのです」

2011年にアラビア半島におけるIUCNレッドリスト肉食動物評価の共同編集を務めたマロン氏は、半島の全ての哺乳類に関して、未発表の地域別評価を完成させた。

総合的に、「明るい側面が全くないわけではありません。4大肉食動物に関しては、その状況は依然として悲惨です。チータは絶滅し、ヒョウ、オオカミ、そしてハイエナは皆危機的状況にあります」

しかし、オリックス、マウンテンガゼル、リムガゼル、そしてアイベックスのような有蹄哺乳類に関しては、「状況はそこまで悪くありません。オリックスと2種類のガゼルの状況には大きな改善が見られ、現在では半島全域に何千頭も生息しており、アイベックスも危急品種とされてはいますが、現在あちらこちらにかなりの数が生息しています」

肉食動物やこれらの大型哺乳類に加えて、中小型の哺乳類の存在も忘れてはならない。中でも、3種類のキツネは「研究者が不足しているために、その大部分の十分なデータが得られていない」とマロン氏は語る。

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

しかしながら、ご存知の通り、生態系を理解し、その均衡を保つのは複雑なことである。例えば、アカギツネの保全に成功し、適応能力が高いアカギツネは至る所で目撃され、イギリスの都市部からアラビア砂漠に至るまで、そこら中に生息している。これによって、より小型のオジロスナギツネが追いやられ、サウジアラビアにおいてはその多くが超乾燥地域に退いている。そこはアカギツネよりもオジロスナギツネの方が暮らしやすいのである。

生態系の繊細なバランスを示すもう一つの具体例として、サウジアラビアにおいてカラカルの数が増えていることが挙げられる。一見したところ、これは良いことのようだが、これは「メソプレデターリリース」と呼ばれる問題事象の結果起きていることである。

「ヒョウやチータのような大型捕食動物がいなくなると、捕食されることのなくなった中型の捕食動物の数が増えるのです」とマロン氏は語った。

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

「したがって、カラカルはおそらくヒョウの数が減ったことの恩恵を受け、キツネもおそらくオオカミやハイエナが減ったことの恩恵を受けています」

こういったことが起こると、結局はどの生物にも害が及ぶ。

「ヒョウのような動物がいなくなるということは、何千年もの時を経て進化してきたものが自然環境から失われたことになり、自然遺産の一部を失ったことになります」とマロン氏は言及した。

RCUの自然保護区を率いるアル・マリキ氏曰く、もちろんアラビアヒョウは「我々にとって象徴的で、アラブ文化において重要な生き物です」。これだけでも「アラビアヒョウをサウジアラビアの最重要野生動物の1つとして保存することが必要不可欠です」と彼は付け加えた。

繁殖プログラムは、元々国立野生動物センターによって運営され、現在はターイフのサウジ・アル・ファイサル王子野生動物研究センターのRCUの監督の下で進められているが、最終的にシャラーン自然保護区の一部に新しく建設されたアラビアヒョウセンターに移されることになっている。シャラーン自然保護区は925平方キロメートルに及ぶ保護された生息地で、ヒョウを最終的にそこへ放つことになっている。

アル・マリキ氏曰く、ヒョウの野生復帰をアル・ウラーで開始することは十分に適切である。この地域の大規模調査を行った上で、理想的な場所として慎重にここを選んだのである。

アル・ウラーのドラマティックな砂岩の風景は何千年もの間アラビアヒョウの生息地だったが、もうすぐまたそうなるだろう。(RCU)

アル・ウラーのドラマティックな砂岩の風景は何千年もの間アラビアヒョウの生息地だったが、もうすぐまたそうなるだろう。(RCU)

「アラビアヒョウは以前この地域およびアル・ウラー全域に生息していたことがありました」と彼は語った。

「この地域の生態系は大いに回復し始めています。さらに、国立野生動物センターの我々のパートナーの力を借り、我々は重要な野生生物を何種類か野生復帰させており、これらは将来的にアラビアヒョウの獲物になるでしょう」

シャラーン保護区でヒョウの生息の再確立が成功すれば、アル・ウラーの他の地域でもアラビアヒョウを再導入する計画がある。アシル、へジャズ、そしてサウジアラビア西部のミディアン山脈など、アラビアヒョウが昔生息していた地域で実施する予定である。

パンセラは、RCUがこの展望を実現できるように重要なパートナーとしての役割を果たしている。

パートナー:野生ネコ科動物保護団体「パンセラ」のトーマス・カプラン氏との契約書に署名するアル・ウラー王立委員会の総裁バドル・アル・サウード王子。2019年6月、アル・ウラー中心部。(RCU)

パートナー:野生ネコ科動物保護団体「パンセラ」のトーマス・カプラン氏との契約書に署名するアル・ウラー王立委員会の総裁バドル・アル・サウード王子。2019年6月、アル・ウラー中心部。(RCU)

2016年6月に、アル・ウラーの見事な景色の中で行われた野外式典の中で、サウジの文化大臣兼RCU総裁を務めるバドル・ビン・アブドラ・アル・サウド王子は、パンセラ会長カプラン氏との合意書に署名し、委員会がヒョウの地球規模の保護への取り組みの支援とアラビアヒョウの個体数回復のために、10年間に及び2,000万ドルを投じることを約束した。

サウジアラビアは現在、ヤマネコ世界同盟にも加盟している。この同盟はカプラン氏によって創設され、世界の大型ネコ科動物保護に注力する環境慈善家の国際的な連合体である。

2014年に、UAEやサウジアラビアの代表者らに加え、アブダビ皇太子ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン殿下によって結成された当同盟には現在、中国、インド、そしてアメリカ合衆国のメンバーも加盟しており、彼らは世界規模のヤマネコ保護キャンペーンのために2億ドルの土台を固めるべく、それぞれ2,000万ドルを投じることを約束した。

2016年の式典の後、バドル王子は、パートナーシップが「地域のアラビアヒョウの個体数回復および、世界中のヤマネコの個体数の維持を支えるための世界のパートナーとの連携という共通の目標への大きなマイルストーン」の象徴であると述べた。

さらに、「これらの動物が歴史的に些細なものとして片づけられないように個体数を保護、維持、そして確立するのが我々の役目である」と彼は付け加えた。

RCUがパンセラと組むことで、「現在我が国の貴重な在来の大型ネコ科動物が絶滅の危機に直面しているが、世界中の国の動物がその段階に達する前に、個体数を保全できるようになるだろう」と王子は語った。

この目的を達成するべく、RCUは2019年にアラビアヒョウの国際基金を立ち上げた。2,500万ドルの初期寄付により、当基金はアラビアヒョウ保護専門の世界最大規模の基金となった。

アラビアヒョウは、ヒョウの亜種9種類の中でも最も小型である。一時はアフリカやアジアの全域に広く生息していたが、人間による侵略、生息地や獲物の減少、野生動物の違法取引、そして儀式に用いるための革の需要の高まりに応じた狩猟などの脅威により、各地でその数は減っている。

ヒョウはIUCNのレッドリストで「危急種」に分類されており、その数は世界的に減少している。しかしながら、アラビアにおいては、世界の他の地域よりも2段階悪い評価の「絶滅危惧種」とみなされているのである。

カラカル、スナネコ、そしてキンイロジャッカルなどその他の肉食哺乳類もある程度は危急種であると評価されているが、ランドスケープや重要な生息地の保護という新たな焦点によってその状況は改善されるだろうと期待されている。

「よりグリーンな世界を築く」。サウジ・グリーン・イニシアティブの開始に立ち会うサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下。2021年10月、リヤド。(AFP/Saudi Royal Palace)

「よりグリーンな世界を築く」。サウジ・グリーン・イニシアティブの開始に立ち会うサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下。2021年10月、リヤド。(AFP/Saudi Royal Palace)

アラビア半島で絶滅寸前まで追い込まれていたアラビアオリックスの劇的な個体数回復は、サウジアラビアでアラビアヒョウを野生に戻す取り組みをしている保護活動家たちを勇気づけた。(Shutterstock)

アラビア半島で絶滅寸前まで追い込まれていたアラビアオリックスの劇的な個体数回復は、サウジアラビアでアラビアヒョウを野生に戻す取り組みをしている保護活動家たちを勇気づけた。(Shutterstock)

前645〜635年頃、戦車の上からライオンを狩るアッシュルバニパル王を描いたアッシリアの都ニネヴェ(イラクのモスル近郊)出土の壁画のレリーフ。(Getty Images)

前645〜635年頃、戦車の上からライオンを狩るアッシュルバニパル王を描いたアッシリアの都ニネヴェ(イラクのモスル近郊)出土の壁画のレリーフ。(Getty Images)

1888年、イギリスの探検家チャールズ・ダウティは、ハイエナや「nimrという黒と茶と斑点のまだら模様のヒョウ」などの動物にサウジアラビアで遭遇したと書いている。(Getty Images)

1888年、イギリスの探検家チャールズ・ダウティは、ハイエナや「nimrという黒と茶と斑点のまだら模様のヒョウ」などの動物にサウジアラビアで遭遇したと書いている。(Getty Images)

農民に撃たれた2頭のヒョウ。2021年7月、イエメン南部のローダル。

農民に撃たれた2頭のヒョウ。2021年7月、イエメン南部のローダル。

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアの多様な野生生物には、アカギツネ(上)、オジロスナギツネ、カラカル、アラビアオオカミ、シマハイエナなどがいる。(Shutterstock)

サウジアラビアでは、ネコ科動物の研究者が、サウジアラビアに野生のヒョウがいるか、いるとすればその個体数を正確に把握しその存在を脅かす最大の脅威を特定するために、野外調査を続けている。さらに、シャラーン自然保護区の「環境収容力」、つまり保護区で飼育が可能なヒョウの頭数を検証する作業も行っている。

「アラビアヒョウの長期的なモニタリング、保護、繁殖プログラムを確立し、アル・ウラーのアル・シャラーン自然保護区にヒョウとその獲物を野生復帰させることに成功すれば、サウジアラビアだけでなく、以前の生息範囲のすべての地域、つまりすでにアラビアヒョウが生息しているイエメンやオマーンだけでなく、アラブ首長国連邦、ヨルダン、さらにはイスラエルにおいても、この種を保護することができるでしょう」とカプラン氏は述べている。

しかし、動物に対する働きかけは、課題の一部に過ぎない。

「野生動物保護活動家の仕事の約80%は、動物だけではなく、人間に対するものだと言っても過言ではありません」とカプラン氏は説明する。

「大型ネコ科動物の野生復帰の過程で最も重要なことは、地域住民の賛同を得ることであり、我々が重点的に取り組む分野のひとつは、ヒョウの野生復帰に向けた地域社会の準備なのです」

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。

そのためにRCUは、2月10日の第1回アラビアヒョウの日を皮切りに啓発活動を開始し、期間中は地域のランドマークをライトアップするとともに、このプログラムで生まれた最も新しい赤ちゃんの名前を公募した。

カプラン氏はアラビアヒョウについて、「人間にとって特に危険な動物ではありません。他の大型ネコ科動物と同じように、むしろ人間を恐れているのです。安全な距離を保って子ヒョウを守りたいのです。それはつまり、アラビアヒョウは特に交流のない生き物を避ける種であるということであり、人間のことも避けているのです」と語った。

それでも、動物と人間の交流は避けられない。

「ほとんどの場合、アラビアヒョウはとても温和ですが、ヒョウは私有財産の概念に疎く、家畜と野生動物の区別がつかないため、家畜を捕ってしまうことは時々あります」とカプランは述べた。

「ですから、我々がすべきことは、これらの動物と一緒に生活している地域社会が、野生動物自体と同じように支援されていることを保証し、問題が起こっても解決策があることを地域社会に理解してもらうことです」

その解決策とは、地元民が野生のヒョウを殺したり傷つけたりしない限り、ヒョウによって失われた家畜の補償を保証することである。「つまり、ヒョウが生息地に戻ってくることにマイナス面がないことを理解してもらう必要があります」とカプラン氏は述べた。

カプラン氏はまた、地域社会がアラビアヒョウによって「地域社会の繁栄や未来と、ヒョウが野生復帰されることには、直接的なつながりがある」ことを認識できるようになるだろうと付け加えた。

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。

野生のヒョウが再び繁殖するのを見る機会は、考古学、文化遺産、美しい景観に富んだ文化観光地としてのアル・ウラー地域の発展に、重要な役割を果たすに違いない。また、地元の人々の雇用の創出にもつながる。RCUは「地域社会と手を携えて」、「アル・ウラーの次世代のための教育と学習、養成と雇用機会の創出」に投資しているという。

ネコ科動物には同じような事例がある。ブラジルのパンタナル地域にジャガーを野生復帰させるプロジェクトの一環として、同地域の国立公園をつなぐ牧場を買い取り、牧場経営者たちの生活向上を支援したのだ。

「寮生活をしていた彼らを一戸建てに住まわせ、以前は牧場の外で暮らさなければならなかった彼らの家族が牧場で一緒に暮らせるようにしたのです」とカプラン氏は語った。

「それだけでなく、都市部で受けられるような標準的な医療を受けられない地域に、マウントサイナイ医療センターから医師を招いて医療を提供しました。

「そしてもっとも重要なのは、我々が学校を作ったことでしょう。つまり、我々がヒョウを保護するためにそこにいることと、保護活動のおかげで教育面でも健康面でも子どもたちの生活が向上するということには、直接的なつながりがあることを、地域社会に示したのです。

「我々は、サウジアラビアにおけるアラビアヒョウの野生復帰プログラムでも同じことを目指しています」

法律も動物保護に一役買うだろう。サウジアラビアでは、ヒョウの狩猟に対する刑罰は40万サウジアラビア・リヤル(10万7千米ドル)、再犯の場合は3000万サウジアラビア・リヤル(802万5千米ドル)になり、最長10年の禁固刑となっている。しかし最終的には、地域社会の心をつかむことが、もっとも効果的な保護策である。

カプラン氏によると、ブラジルではこのようなプログラムが成功しており、「こんな冗談があります。密猟者が絶対に入ってこないようにすることはできませんが、地域社会がジャガーを自分たちの未来の一部と見なしてくれているので、密猟者が出ていくことはほとんどありません。それで十分なのです」と語った。

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。 

しかし、アル・ウラーの雄大な風景の中をヒョウが歩き回る姿はまだ見られないだろう。「最初のプログラムでは、2030年までにシャラーン自然保護区にヒョウを再定住させる予定です」とアル・マリキ氏は語った。

この目標が達成されれば、完璧なタイミングとなる。自然と人間の歴史に富んだ世界的な観光地として開放されているアル・ウラーのプロジェクト全体が、経済の多様化、地域社会の強化、国の遺産の保存という、サウジアラビアのビジョン2030の礎となる青写真の一つなのである。

「あえて言うなら、我々はアラビアヒョウを環境収容力の最大限まで野生復帰させることができると確信しており、そのために、数十年にもわたる過放牧やその他の開発問題に耐えてきた生息地の復元にすでに取り組んでいます」とカプラン氏は語った。

「我々はまた、地域社会と協力して、アラビアヒョウの食物連鎖を完全に維持するために必要な、アイベックスとガゼルの個体数の回復にも取り組んでいます。

「アル・ウラーで行われている文化的修復が何年もかかるのと同じように、環境の修復も同じくらい長い過程を経ることになるでしょう」

「飼育下での繁殖や野生復帰には、本当に近道はないのです。最初から正しい方法で行わなければならないのです。我々が確実に言えるのは、サウジアラビアはそれを正しく行っているということです」とカプラン氏は付け加えた。

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。 

2022年2月10日に行われた第1回アラビアヒョウの日には、ジェッダのキングズ・ロード・タワー、ドバイのブルジュ・ハリファ、アル・ウラーのエレファント・ロックなど、有名な建物や遺跡にこのヒョウの画像がライトアップされた。 

クレジット

執筆と調査:ジョナサン・ゴーナル、ラマ・アルハマウィ
エディター:ダイアナ・ファラ
クリエイティブディレクター:サイモン・カーリル
デザイナー:オマール・ナシャヒビ
グラフィック:ダグラス・オカサキ、
ワリード・ラビン
ビデオプロデューサー:ムハンマド・ケナン
ビデオグラファー:アブドゥラ・アルジェイバー、
ムハンマド・アルカウィ
ビデオエディター:アリ・ノーリ
ピクチャーリサーチャー:シーラ・マイヨ
コピーエディター:リアム・ケアニー
英語エディター・タレク・アリ・アフマド
フランス語エディター:ゼニア・ズビボ
ソーシャルメディア:ジャド・ビタール、
ダニエル・ファウンテン
プロデューサー:アルカン・アラドナニ
編集長:ファイサル・J・アッバース