
[東京] ビジョン・ファンドにおける1000億ドルの損失に伴い通期赤字が130億ドルに達するとのソフトバンクグループの見通しにより、資産の現金化と信頼回復を目的に予定されていた資産売却計画へさらなる注目が寄せられている
ビジョン・ファンドにおけるハイテク事業への投資の失敗から1.8兆円(167億ドル)の損失を計上する見込みを月曜日に発表したソフトバンクの株価は火曜日、前日比5%高まで回復するも一時は同4%の下落を記録した。
孫正義会長自身の評価にも影響を与えた同ファンドにおける巨額損失によりグループ全体としても過去最大の通期損失が計上される見込みで、4.5兆円の資産売却を行う同氏の計画の必要性が増している。
国内キャリアのソフトバンク株式会社も選択肢の一つではあるものの、同グループはキャッシュフローに関しては同社の配当に依存しているため、今のところはアリババ・グループ・ホールディングの株式が売却及び現金化される可能性が最も高いとUBSのアナリスト高橋圭氏は記している。
ソフトバンクグループが26%の持ち株比率で有する中国の電子商取引大手アリババグループの株式は同社最大の資産であり、既に1兆円以上の借り入れの担保として用いられており、12月末にはカラー取引によってさらに2000億円が調達された。
高橋氏の記述によると、アリババ株及びソフトバンク傘下スプリントとの合併が完了した携帯電話キャリアのTモバイルUSの株式を貸付の担保とすることで3兆円の調達が可能であるとのことである。
このような動向はソフトバンクが「物言う株主」エリオット・マネジメントからの株主還元の改善を求める圧力下にあることが要因となっており、ソフトバンクは2.5兆円の自社株買いを表明している。
火曜日に見られたソフトバンク株の上昇は、通期赤字の見込みは負債比率に大きく影響を与えないため、同社の格付けに与える影響は限定的であるとした日本格付研究所の発表に続いたものである。
ソフトバンクの投資事業へのてこ入れを図る姿勢によって、同社の財政面の不透明性は増し、長期的なコングロマリット・ディスカウントを招くこととなる。
また同じくヴィジョンファンドへの投資に伴った資金調達のためにソフトバンク株式会社の株式の3分の1も担保とされている。
ビジョンファンドは12月までの9ヶ月間でおよそ8000億円の損失を記録した。ソフトバンクは3月までの四半期でどの事業への投資からより大きな損失が生まれているかを明らかにしておらず、同グループの不透明な会計処理に不満をもつアナリストや投資家は苛立ちを募らせることとなっている。
ロイター