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アミン・ナーセル氏:トップになった地元出身のエンジニア

アナリストによると、ナーセル氏は分権的な文化を推進し、リーダーと従業員の両方と時間を過ごしていることで、アラムコで非常に人気があるという。
アナリストによると、ナーセル氏は分権的な文化を推進し、リーダーと従業員の両方と時間を過ごしていることで、アラムコで非常に人気があるという。
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15 Aug 2022 01:08:27 GMT9
15 Aug 2022 01:08:27 GMT9

今年リヤドで開かれた産業イベントで、サウジアラビアのエネルギー相は午後9時頃、約1,000人を前にして、国営石油会社サウジアラムコの最高経営責任者であるアミン・ナーセル氏の就寝時間だと告げた。

彼は冗談を言っていたのではない。

ナーセル氏は、40年以上にわたるキャリアにおいて、献身的なスタイルで評判を得ている。つまり、彼は夜更かしをするのではなく、翌日に備えて準備するのだ。

ある業界関係者は匿名を条件に、「こういった習慣すべてに対して、何というか戸惑いましたが、でも、それは彼の労働倫理を示すものであり、だからこそ彼は優れているのです」と語った。

アラムコは日曜日、原油価格の上昇と販売量の増加と精製利益率の向上により、第2四半期の利益がアナリストの予想を上回る90%の大幅増となったと発表した。

ナーセル氏はアラムコの決算報告で、同社は「石油需要は、短期的な世界予測では経済的な圧力があるにもかかわらず、今後10年間成長を続ける」と予想していると述べた。

このサウジアラビアの大手石油企業は、世界でもっとも価値のある企業としてアップルと競い合っている。2月24日のロシアのウクライナ侵攻でエネルギー供給への懸念が高まり、原油価格が14年ぶりの高値に上昇したこともあり、5月には一時的に首位の座をつかんだ。

ナーセル氏は、7万人の従業員を抱える企業の日々の管理業務をこなす傍ら、世界のエネルギー需要をどう満たすかという問題にも取り組んでおり、この問題に関して発言力を高めている。

気候変動

アラムコは、他の大手石油企業と同様に、よりクリーンなエネルギーへの移行が進む中、化石燃料を使い続けると主張している。

いつもは控えめでそつのないナーセル氏だが、昨年12月にその態度を崩し、石油生産への支出不足は深刻な社会的影響をもたらす可能性があり、代替エネルギーの開発と並行して投資を継続する必要があると訴えた。

テキサス州ヒューストンで開催された世界石油会議で演説したナーセル氏は、世界が「事実上一夜にして」クリーンな燃料に移行できるという思い込みを批判した。

ナーセル氏は代表団に対して、「石油とガスが、移行期間中とそれ以降も不可欠で重要な役割を果たすことを公に認めることは、一部の人々にとって難しいだろうと理解しています」と語った。

「けれども、この現実を認めるほうが、エネルギー不安・インフレの蔓延・社会不安に対処するよりはるかに簡単だと思われます。なぜなら、物価が耐え難いほど高くなり、各国のネットゼロ公約が崩れ始めるからです」

米国の石油中心地テキサスでのこの発言は、エネルギー価格の高騰と世界的なインフレによりジョー・バイデン米大統領を含む世界の指導者たちが石油を求めサウジアラビアに押し寄せたことで、先見の明があったことが証明された。

しかし、干ばつや記録的な暑さや洪水によって、化石燃料の新たな開発に対する警戒感が世界的に高まっているため、再生可能エネルギーやその他の国内エネルギーへの投資が圧倒的に必要だと言う人も多い。

ライス大学ベイカー研究所のエネルギー研究員で、『エネルギー王国』の著者であるジム・クレーン氏は、「彼(ナーセル氏)は一部では、2027年までに生産量を1日あたり1,300万バレルまで増やすというアラムコの積極的な計画のために、気候変動に対する脅威だとみなされています」と述べた。

「しかしサウジアラビアでは、化学物質、水素、そしてアラムコの事業の脱炭素化を推し進め、アラムコの成功したビジネスモデルを多様化しようとしている革新者だとみなされています」

記録的なIPO

アラムコはナーセル氏のもと、下流推進としてサウジアラビアの石油化学大手SABICを買収し、2019年に294億ドルという記録的なIPOを行い、その企業が何十年も秘密にしてきた排出量に関する初の報告書を発表した。

この地元出身のエンジニアは、欧米では知られていなかった。他のアラムコCEOとは対照的に、ナーセル氏は米国の主要な大学の出身ではなく、サウジアラビアの教育を受けてアラムコで出世したのである。

ナーセル氏のキャリアは、石油エンジニアから始まった。2015年にCEOに就任する前は、上流担当副社長などを歴任し、石油・ガス統合ポートフォリオにおける同社最大の設備投資プログラムを主導した。

アナリストによると、ナーセル氏は分権的な文化を推進し、リーダーと従業員の両方と時間を過ごしていることで、アラムコで非常に人気があるという。

ナーセル氏はイスラム教の断食月であるラマダンの間、毎晩アラムコの敷地や工場を訪れ、搭乗員と一緒に断食を破ることにしている。

ナーセル氏の最大の試練は、2019年にドローンとミサイルがアラムコのアブカイクとクライスの石油工場を攻撃し、サウジアラビアの原油生産量を半減させたことである。

米国とサウジアラビアは、この攻撃についてイランを非難した。イラン政府は一切の関与を否定した。

業界関係者によると、ナーセル氏は7分以内にアラムコの緊急部隊に到着したという。そしてプレッシャーのかかる状況下において、細かい指示は出さずに現場の管理者に判断を委ねた。

アル・ラジ・キャピタルの調査部長であるマゼン・アルスダイリ氏は、「アラムコの業務の50%が攻撃の影響を受けたにもかかわらず、アラムコは数週間のうちに業務の大部分を復旧することができました」と述べた。

「それが可能だったのは、彼がまったく隙のない強力なリスク管理方針をアラムコで継続していたからです」

ロイター

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