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バイデン氏には「気候問題担当大統領特使」がいる-今、我々には金融システム担当長官が必要だ

政府や、スウェーデンの10代の環境活動家グレタ・トゥンベリさんのような若者だけでなく、地球の大気を汚染する排出物に対して大きな責任がある大企業家の間でも、地球や人類、他の動植物を救う必要性に対する意識が急速に高まっている。(Shutterstock)
政府や、スウェーデンの10代の環境活動家グレタ・トゥンベリさんのような若者だけでなく、地球の大気を汚染する排出物に対して大きな責任がある大企業家の間でも、地球や人類、他の動植物を救う必要性に対する意識が急速に高まっている。(Shutterstock)
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28 Dec 2020 06:12:11 GMT9
28 Dec 2020 06:12:11 GMT9

アンソニー・ローリー

東京:COVID-19のパンデミックが2021年の初めの数カ月で収まる(我々は皆、そう願っている)につれて、世界が直面する別の、存続に関わる脅威に注意が移るだろう。気候変動の脅威と、それがもたらす火災、洪水、干ばつ、飢饉、台風、疫病、その他の自然災害、さらには戦争の脅威だ。

世界最大の超大国である米国は、欧州から日本、中国まで、他の大国が気候変動対策の目標で競い合っている中、ジョー・バイデン次期大統領がジョン・ケリー元国務長官を「気候問題担当大統領特使」に任命するほど、この脅威を深刻に受け止めている。

彼らが設定する、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標が、一部の例ではかなり控えめに思え、気温が、将来生活が快適でなくなったり、耐えられなくなったりするレベル以上に上昇するのを防ぐのに十分なほど厳しくないとしても、このことは心強く感じられる。

政府や、スウェーデンの10代の環境活動家グレタ・トゥンベリさんのような若者だけでなく、地球の大気を汚染する排出物に対して大きな責任がある大企業家の間でも、地球や人類、他の動植物を救う必要性に対する意識が急速に高まっている。

しかし、手遅れになる前に気候変動の解決策を考え出す世界の能力には、大きな疑問がある。疑問は主に、誰が数兆ドルの地球温暖化対策費用を負担し、誰がそのような解決策の実行の責任を負うのかということに関係している。

世界では約300兆ドルもの貯金が運用されている、と国連が発表していることを考えると、財源は解決不可能な問題ではないように思えるかもしれない。この額は世界の国内総生産(GDP)の3~4倍に相当する。

そんな気が遠くなるような大金があれば、気候変動の解決策の費用を十分賄えるはずだと思うかもしれない。だが、その考えは単純すぎるだろう。そうした貯金の多くは既存の投資で運用されており、さらに重要なことに、資金自体が解決策を生み出すわけではない。解決策を実行する方法を見つけ出す必要がある。

この「貯蓄・投資のギャップ」は未知で(ほとんど考慮されていない)大きなもので、地球と種を救う取り組みを損なったり、無効にしたりさえする恐れがある。我々は、実際にはそうでないのに、状況は対処されており、収拾されていると考えがちだ。

現在、多くの資金が持続可能な投資に回されていることは事実だが、それは将来に向けて地球と人類と「動植物」の繁栄と生存を保証する、地球を救う取り組みや他の目標に使われていると言っているのと同じではない。

なぜそうなのか、なぜ持続可能な投資の動きが時に、地球を救う手段に見えるのと同じくらい、(既に裕福な)金融関係者を裕福にするための手段のように見えるのかを考える前に、いくつかの関連する事実と数字を考える必要がある。

地球を救う費用を正確に計算した人はいないし、そうすることも容易ではない。この計算には多くの異なる目標が含まれており、目標を何にすべきか、皆が同意しているわけではない。これまでで最良の試みは、2015年に国連が承認した、17の持続可能な開発目標だ。

これらのSDGs(2030年までに達成予定)に含まれたのは、先進国と発展途上国の両方での、さまざまな種類の気候変動対策、インフラと産業の発展、持続可能な都市とコミュニティの開発、健康と福祉の増進、貧困削減、教育などだ。

SDGsを達成するには多額の費用が掛かるだろう、と国連は警告した。総費用は、SDG実施期間(2030年まで)の15年間で年間5兆ドル、合計約75兆ドルになる可能性がある。

それでも、この数字は、インフラなどの分野で必要な費用をほぼ間違いなく少なめに見積もっており、インフラだけでも、現在から2040年までに最大100兆ドルの資金調達が必要だろうと推定されている。新型コロナウイルスのパンデミックが起きた今、医療施設の改良に必要な支出には言及していない。

国連によると、SDGsに必要な資金の半分は政府から、残りの半分は金融市場から拠出されることになっている。民間投資家が2015~2030年に年間約2兆5000億ドル、合計38兆ドル、もしくは現在~2030年に約25兆ドルを支出するということだ。

そのような巨額の民間資金を見つけられるとしても、欧米のような「市場経済」では全く確実ではない。膨大な金額を、地球を救う投資に回させるのは非常に困難だ。それを保証できるのは中国のような、国家が経済を主導する国だけだ。

国連総会がSDGsを承認したとき、国連はこれらの重要な問題に対処しなかった。国連は、仕事を確実に終わらせ、代わりに民間活力に頼るのに、国家の介入がどれだけ必要かという政治・イデオロギー的問題を避けたように思えた。

2004年当時、193の加盟国からなる組織の事務局長を務めたコフィ・アナン氏が、グローバル企業50社のトップと接触し、ESG投資と呼ばれるものを支援するよう促したときに、同氏が当初推進した投資形態の必要性を強調することで、国連は「未来に戻る」ことに満足しているようだった。

ESGとは、「環境・社会・ガバナンス」投資慣行の頭字語であり、この概念に同意する企業がビジネス慣行において適切な基準を遵守すること、および金融機関が、投資先の企業が同様にするよう努めることを求める。

これらは価値ある目標であり、十分な数の企業や機関がそれらを集団で遵守すれば、「地球を救うこと」に貢献する効果がある。しかし、それらは持続可能な開発目標の達成を確実にするための一連の政策やメカニズムのはるか手前で止まっている。

だが、全産業の新規事業がESGを中心にして生まれている。数百、数千のESG投資ファンドが設立されており、その総額は、定義に基づけば5兆~20兆ドル程度(40兆ドルという推定すらある)で、ファンド・マネージャーはかなりのコミッションを得ている。

これらのファンドは多くのアナリストによって予測されており(アナリストの会社はそれを推進することで収益を得ている)、特に大衆向けに設計された、上場信託もしくはETFとして知られるものを通して、将来に向けて規模は大きくなり、価値は上がり続けると予測されている。

ESGやその他のタイプの持続可能な投資は、気候変動を遅らせ、他の社会経済的目標を推進したいと考える、増え続ける多くの個人投資家や機関投資家の心に強く訴える。だが、地球を救うためには、より直接的なタイプの投資が必要になるだろう。

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