
新型肺炎をめぐり、感染症への偏見や差別を防ぐ目的で千葉県教育委員会が配布した児童生徒向けのリーフレット(県教委提供)
新型肺炎をめぐり、感染症への偏見や差別を防ぐ目的で千葉県教育委員会が配布した児童生徒向けのリーフレット(県教委提供)
新型コロナウイルスによる肺炎拡大をめぐり、ウイルス感染者らに対する偏見や差別への懸念が高まっている。新型肺炎は未解明の点も多く、専門家は「いじめのきっかけになりかねない」と指摘。一部自治体や文部科学省は、防止に向けた取り組みを進めている。
中国・武漢市からの帰国者が滞在するホテルがある千葉県の教育委員会は、ホテル従業員や病院関係者の家族に感染症への偏見や差別が及ぶのを防止するため、全ての公立学校に「細心の注意をはらうよう」求める通知を既に2回行った。児童生徒には「思いやりを持って行動するよう」呼び掛けるリーフレットを配布。現在までにいじめは確認されていないという。
同県教委によると、東京電力福島第1原発事故で避難した生徒がいじめを受けた問題を念頭に対策を講じた。担当者は「必要以上の不安が高まるなど共通性があり、いじめが起こりやすい状況となっている」と話す。
文科省も「いじめや偏見は決して許されることではない」などとする萩生田光一文科相のメッセージをホームページに掲載。児童生徒の人権に配慮し、転入学は柔軟に対応するよう通知を出した。
横浜市に停泊するクルーズ船の乗客からも差別を心配する声が上がる。平沢保人さん(64)は「『感染者じゃない』と太鼓判を押してもらい下船したい。そうでなければ日常生活に戻っても、孫の保育園の送り迎えさえちゅうちょしてしまう」と訴えた。
いじめ問題に詳しい内藤朝雄・明治大准教授(社会学)は「人類の歴史でも、感染症は人間を攻撃する理由に利用されやすい」と指摘。特に学校は集団に影響されやすいとし、「強く差別を禁止する必要がある」と語った。
時事通信社