
ロンドン:イスラエル国防軍(IDF)は9日、世界保健機関(WHO)のスタッフを乗せてガザを通る医療車列に発砲した。WHO事務局長が明らかにした。
WHO事務局長であるテドロス・アダノム・ゲブレイェスス博士によると、WHOチームとパレスチナ赤新月社(PRCS)のパートナーは、ガザ北部のアル・アハリ病院に医療物資を届けるという「ハイリスク」な任務の途中で銃撃を受けた。
WHOの報告によると、救急車を含む車列がガザを移動する際、複数の検問所で、イスラエル国防軍兵士はPRCSの医療従事者を「下劣で侮辱的な態度」で扱った。
WHOが主導する車列は、病院へ向かう途中のワディ・ガザ検問所で最初の検査を受け、そこでIDFの兵士がスタッフを救急車から降ろし、身元を確認した。PRCSの職員2人が1時間以上拘束されたという。
「WHOのスタッフは、そのうちの1人が銃口を向けられ、ひざまずくことを強要された後、目の届かないところに連れて行かれ、嫌がらせを受け、殴打され、服を脱がされ、身体検査されるのを目撃した」とWHOは12日に発表した。
また、検問所を通過してガザ市内に入った後、「医薬品を積んだ支援トラックと救急車が銃撃を受けた」とテドロス氏はX(旧ツイッター)に書き込んだ。
アル・アハリ病院の患者を搬送してガザ南部に戻ると、チームはワディ・ガザの検問所で再び止められ、重体の患者に対し、武装したイスラエル兵が身体検査を行ったという。
検査による遅延の結果、患者の1人が手当できなかった傷がもとで死亡したとテドロス氏は述べた。
WHOの報告によると、以前拘束されたPRCSの保健職員は再度尋問を受けた。その後、職員は国連の介入により、その日の夜に釈放されたが、服も靴もなく、両手を後ろに縛られた状態で歩いて帰宅することを余儀なくされた。
「我々は、医療従事者に対する長時間の検査と拘束により、すでに脆弱になっている患者の生命が危険にさらされていることを深く懸念している」とテドロス氏は述べた。
「この任務が直面した困難は、壊滅的な人道的状況を緩和するためのアクセスが切実に必要であるにもかかわらず、人道支援団体がガザ内で援助を提供する余地が狭まりつつあることを物語っている」とWHOは別途述べている。
この事件は、イスラエル軍による人権侵害への懸念が高まるなかで起きた。先週、イスラエル軍はパレスチナ人男性の服を脱がせて目隠しをし、街頭で見せしめにしたことで、激しい反発を受けた。
アル・アハリ病院の作戦では、1,500人の患者を治療するのに十分な外傷手当・手術用品が運び込まれ、19人の重症患者がガザ地区南部の医療施設に移送された。