ラファ:エジプトは、人口密度の高いガザ国境の街であるラファへイスラエル軍が投入された場合、イスラエルとの平和条約を停止するとしており、そこでの戦闘は、同地域への主要な支援物資供給路の閉鎖を余儀なくさせる可能性がある、とエジプト当局者2名と西側外交官1名が11日に述べた。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相が、パレスチナの武装組織ハマスとの4ヶ月に及ぶ戦争に勝利するためには、ラファに軍隊を送ることが必要だと述べたことを受けて、半世紀近く地域の安定の礎となってきたキャンプ・デービッド合意を停止するとの警告がなされた。
ガザの人口230万人の半数以上が、他の地域での戦闘から逃れるためにラファに避難し、国境近くの広大なテントキャンプや国連が運営する避難所に詰め込まれている。エジプトは、二度と戻ることが許されないかもしれない数十万人のパレスチナ人難民の大量流入を懸念している。
米国の緊密な2国の同盟国であるイスラエルとエジプトの対立は、ラファでの攻撃は、すでに壊滅的となっているガザ地区の人道状況をさらに悪化させるだろうと支援団体が警告しているなかで起こった。ガザ地区では住民の約80%が自宅から避難しており、国連によれば同地区の人口の4分の1が飢餓に直面している。
民間人の行き先は不透明
ネタニヤフ首相は、ABCニュースの「This Week with George Stephanopoulos」のインタビューで、ラファの民間人が北部に避難する可能性を示唆し、軍が立ち退いたエリアは「たくさん」あると述べた。同首相は、イスラエルは民間人を移転させるための「詳細な計画」を練っていると述べた。
しかし、攻撃により、特にガザ北部で広範囲が破壊され、ガザ中心部と南部の都市ハーン・ユーニスでは今も激しい戦闘が続いている。また、ラファでの地上作戦により、検問所の閉鎖が余儀なくされ、切実に必要とされている食糧や医療物資を届けるための唯一の経路が遮断される可能性もある。
3人の当局者はいずれも、機密性の高い交渉について記者団に説明する権限がないため匿名を条件に、エジプトの警告を認めた。カタール、サウジアラビア、その他の国々も、イスラエルがラファに進軍すれば深刻な影響が生じると警告している。
「イスラエルがラファに攻め込めば、言語を絶する人道的大惨事とエジプトとの深刻な緊張を招くだろう」と、ジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表はXに投稿した。
イスラエルとエジプトは、1970年代後半にジミー・カーター米大統領(当時)が仲介した画期的な和平条約「キャンプ・デービッド合意」に調印するまで、5回の戦争を戦った。この合意には、国境両側の軍隊の配置を規定するいくつかの条項が含まれている。
エジプトはガザとの国境を厳重に強化しており、ガザとの国境に5kmの緩衝地帯を設け、地上と地下にコンクリートの壁を築いている。エジプトは、ハマスが今も国境の地下に密輸トンネルを掘っているというイスラエルの主張を否定し、エジプト軍が国境側を完全に管理していると述べている。
しかし、エジプト当局は、国境が突破されれば、シナイ半島に逃げ込む人々の流れを軍が阻止できなくなるのではないかと懸念している。
国連によれば、ラファの通常の人口は30万人弱であるが、現在は他の場所での戦闘から逃れてきた140万人以上を受け入れており、「深刻な過密状態」にあるという。
ネタニヤフ首相によれば、ハマスにはまだ4個大隊があるという。「どんなことがあってもイスラエル軍はラファに入るべきでないと言う人たちは、基本的に戦争に負けて、ハマスをそこに残せと言っているのだ」と同首相はABCニュースに述べた。
AP