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感染者急増の中、ワクチン接種を切望するイラン市民がアルメニアに押し寄せる

2021年7月14日(水)、アルメニアのエレバンの中心部にある移動式ワクチン接種ステーションでコロナウイルスワクチンの列に並ぶ人々。(Vahram Baghdasaryan/AP)
2021年7月14日(水)、アルメニアのエレバンの中心部にある移動式ワクチン接種ステーションでコロナウイルスワクチンの列に並ぶ人々。(Vahram Baghdasaryan/AP)
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18 Jul 2021 12:07:51 GMT9
18 Jul 2021 12:07:51 GMT9

エレバン:イランでは、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の緊急性が日ごとに高まっている。

デルタ変異株の急速な広がりに伴う新たな感染者の急増で、イランの病院は危機に瀕している。息も絶え絶えの患者が対応しきれないほど増えているからだ。しかし、死者数が上昇し、多くの市民が当分保護されないという事実が明らかになるにつれ、何千人もの焦れたイラン市民は自ら問題に対処しようと近隣のアルメニアに押し寄せ始めている。

この旧ソビエトのコーカサス国家ではワクチン接種をためらう人が多く、接種率が低迷している。当局が外国人訪問者にも無料の接種を行っているため、生命の不安に怯え、待ちくたびれたイラン市民にとっての希望になっている。

「母には一刻も早く接種を受けてほしい」。テヘランのバス停で宝石商を営む23歳のアフマド・レザ・バゲリ氏はそう言って、糖尿病の母親を身振りで示した。彼は母親と共に曲がりくねった道を車で20時間かけてアルメニアの首都エレバンに向かう予定だ。

バゲリ氏の叔父は既にエレバン市内で1回目を接種済みで、近日2回目を受ける。イラン市民が大挙してバスや飛行機でアルメニアに向かうようになり、同様の話がこの数週間イランのソーシャルメディアを席巻した。アルメニアのニコル・パシニャン首相臨時代理は先週、居住者を含む外国人が国内の予防接種者約11万人の半分を占めていると述べた。アルメニアで投与されているワクチンは、アストラゼネカ、ロシアのスプートニクV、中国のコロナバックである。

科学メディアOur World in Dataによると、新型コロナウイルス感染症による死者数が中東で最も多いイランでは、国内人口8,400万人のうち、2回接種を終えている人は2%未満に過ぎない。

制裁の対象国であるイランは、ロシアと中国のワクチンを輸入し、国連が支援するワクチン共有のCOVAXプログラムに参加しているほか、独自のワクチン3種の開発を行っているが、供給量は依然として不足している。当局は9月に集団予防接種を開始すると約束しているものの、非医療従事者と60歳未満の労働者の接種は未だ進んでいない。

「いつまでもワクチンを待っていられない」と言う39歳の衣料品貿易業者、アリ・シャーディ氏もテヘランのバス停から遠征に出る予定だ。

「政府は公のワクチン接種計画を何度も延期し続けている。私はアルメニアで接種を受けることにした」。

27歳の秘書バハレ・カナイ氏のように、この遠征をイラン当局が直面している厳しい予防接種状況を緩和させる国家奉仕の行為だと考える人もいる。

アルメニアは夏休みの旅行先としても人気があるため、ワクチン接種を受けるために旅行したイラン市民の数は明らかになっていない。ただ、少なくとも、1日あたり推定500人のイラン市民がバス、タクシー、飛行機に乗って国境を越えている。航空会社はイラン発エレバン行きを週に3便増やした。大勢が遠征を計画するようになってから、バスツアーの費用は2倍に上がった。パンデミックに業界を破壊されてきた旅行代理店は、前例のない事業の伸びを目の当たりにしている。

テヘランの旅行代理店のマネージャー、アフマド氏は「この数週間で、アルメニアツアーの顧客数が3倍になった」と話した(報復などの懸念から姓は明かさなかった)。

イランの半官報道機関であるILNA通信社は、イランからの訪問者の急増によりアルメニアのコロナウイルス検査センターがあふれ、大勢が緩衝地帯に立ち往生している、熱波のために倒れる人もいる、と報じている。エレバンから約160km(100マイル)離れたところで、何百人ものイラン市民がワクチン接種の列に並んでおり、場所を確保するために路上で睡眠をとる人もいる。

容赦のない陽光の下で長い列に並ぶ人々を支えているのは希望だ。アルメニアの首都の通りやワクチンセンターの外でイラン市民がペルシア語の音楽に耳を傾け、接種後には拍手をする様子が見られる動画がいくつもある。

「わが国の人道的行為が広く普及し、外国人の大規模流入が起こることは予測していなかった」と、アルメニア保健相のアナヒト・アバネシャン氏は記者団に語った。「国民が最優先ではあるが、パンデミックが国籍を選ばないことは繰り返し訴えたい」。

ただ、アルメニア当局がワクチン接種ツアーを奨励する一方で、ワクチン接種センターにイラン市民が殺到しすぎたためにアルメニアは規則を厳しくせざるを得なくなった。

当初、イランからワクチンを求めて来た人々は、南部の国境の町メグリの診療所に向かった。メディアに話すことを許可されていないとの理由で匿名を希望したある地元の医師は、AP通信の取材に対し、過去数週間に少なくとも100人のイラン市民がそこで接種を受けたと報告した。

しかし先週、政府は、外国人訪問者が接種を受けられる場所をエレバンの指定のアストラゼネカ移動診療所5か所のみに定めた。また、国内観光業界の後押しとして、ワクチン接種を受ける前に最短でも10日間アルメニアで過ごすことを条件づけた。

この施策によって、国境を越えるバス旅行は長期プランになり、一部の飛行機がカタールを経由することもあり、イランからの訪問者層は変化するだろう。関心の高まりは価格を押し上げ、富裕層以外の人たちには手の届かない旅行になった。

倫理学者らは、困っている外国人が市民から敬遠されているワクチンの余りを利用しても問題ない、と言い、値上げと新たな10日間の要件は、パンデミックにおける硬直した不平等を悪化させると語っている。

医療倫理を専門とするニューヨーク大学のアリソン・ベイトマン・ハウス准教授は「旅行に必要なお金と時間が増えてしまう。(中略)そうなると、行ける人と行けない人の間の不平等が広がる」と語った。

さらに、ワクチン接種旅行を含む伝染性ウイルス変異株が広がっている期間の移動は、「意図しなかった結果」をもたらし、「感染の可能性」を高めると彼女は付け加えた。

しかし、感染大流行で日々大勢が亡くなり、医療制度と経済が疲弊しているイランの人々にとっては待つことのコストも非常に高い。

テヘラン在住の48歳のムハンマド・サイファー氏は、エレバンのワクチン診療所に並ぶイラン市民の群衆を険しい表情で見渡した。

「今直面している恐ろしい状況ゆえに起きていることだ」と彼は言った。

AP

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