
アラブニュース
ロンドン:ドバイで行われた先駆的な手術で、ヨルダンの10代の若者が縄でできた新たな背骨を手に入れた。この手術が中東北アフリカ(MENA)地域で行われるのは初めてのことだ。
サルマ・ナセル・ナウェイセさん(13)は先週、脊柱の全長に沿って縄を走らせる椎体テザリング(VBT)術を受けた。
縄を走らせた後、脊柱の各節にネジを差し込み、縄に適切な張力を生み出し、湾曲の矯正に役立つようにする。
現在、VBTは米国、フランス、ドイツなどわずか数カ国で実施されているにすぎない。この手術がMENA地域で行われたのは今回が初めてのことだ。
ドバイのブルジール病院で手術を受けたサルマさんは、目覚ましく回復している。既に歩行しているだけでなく、もうすぐテニスも再開する予定だ。
2022年4月に初めて、サルマさんの両親は娘の背骨が湾曲していることに気付いた。その後、サルマさんは、脊柱が異常に側方に湾曲していることを特徴とする疾患である、脊柱側湾症の診断を受けた。
脊柱側湾症は乳児期や幼児期に出現することもあるが、主な発症年代は10歳から15歳にかけてである。
たいていは軽症で、侵襲的治療を必要としないが、中等度から重度の脊柱側湾症を治療しなかった場合、疼痛、変形の増大のほか、心臓や肺に問題が生じる恐れもある。
サルマさんがブルジール病院整形外科のフィラス・ハスバン医長の診察を受けたとき、胸腰椎間の湾曲は65度になっていた。疾患は、体幹の短縮を伴う背中の変形、腰部のこぶ、水平でない骨盤、背部痛を引き起こしていた。
ハスバン医師は、「思春期突発性脊柱側湾症は最もよく見られるタイプで、通常は思春期に診断されます」と述べた。
「この疾患の治療には、経過観察、装具、手術の3つの選択肢があります。軽度の脊柱側湾症では装具が選択されますが、サルマさんの場合は、変形の矯正に手術が必要でした」
2019年、米FDAは、固定なしで成長を維持しながら、動きと柔軟性を保つことのできる低侵襲手術である、VBTを承認した。
この新たな治療法では、固定を伴わない脊柱矯正が可能になり、患者は可動域を完全に取り戻し、成長を続けることができる。その他に、切開部が目立ちにくい、外傷が少ない、合併症が少ない、治癒が早いなどの利点がある。VBTは新しい治療法であるにもかかわらず、費用面では他の側湾症治療法と同程度である。
脊柱側湾症の患者全員がVBTの対象になるわけではない。理想的な候補者は、成長途上にある9歳以上の小児である。
また、この手術は湾曲が45度から65度の患者で最も効果的である。
医師によると、サルマさんは骨格がまだ完全に成熟していないので、この手術の「完璧な候補者」だったという。
ハスバン医師は、「背中を切開し、脊髄や神経根を処置する脊椎手術とは異なり、この手術は内視鏡を使用し、腹部を目立たないように切開します」と述べた。
「VBTは低侵襲なので、背部のもろい組織がほとんど傷つきません。そのため、脊椎固定術より、出血量や術後痛が少なく、回復が早くなります」。ハスバン医師によると、サルマさんの脊柱の湾曲はこれからも改善していき、身体の成長に伴ってロープが脊柱の成長を導くという。
「患者は術後の回復過程にあります。2週間後に、サルマさんは学校に戻ることができるでしょう。4週間後には、制限なくすべての行動ができるようになり、スポーツを再開できます」
サルマさんの両親は手術の結果に興奮している。
「術後2日目に歩き始めました。娘がこの手術の適格者に該当したことを嬉しく思っています。娘がもう一度ラケットを握り、テニスを再開するのを楽しみにしています」と、病院が発表した声明の中で述べている。