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イスラエル新政府下でパレスチナ人犠牲者が増加する恐れ:専門家

パレスチナ人たちが国旗を振りながらイスラエルの基地建設に反対するデモをする中、位置に付くイスラエル治安部隊。2022年12月2日、ヨルダン川西岸地区のナブルスの東にあるベイト・ダジャン。(AFP)
パレスチナ人たちが国旗を振りながらイスラエルの基地建設に反対するデモをする中、位置に付くイスラエル治安部隊。2022年12月2日、ヨルダン川西岸地区のナブルスの東にあるベイト・ダジャン。(AFP)
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04 Dec 2022 12:12:31 GMT9
04 Dec 2022 12:12:31 GMT9
  • 第一次·第二次インティファーダを目撃したファタハの幹部はアラブニュースに対し、「パレスチナ人を逮捕するよりも殺害する」というイスラエル軍の決意が死者数増加の背後にあると語った

モハメッド·ナジブ

ラマッラー:パレスチナ専門家は、今年に入って前例のない数のパレスチナ人がイスラエル軍に殺害されていることに懸念を強めており、イスラエルの不当な行動は必然的に地域における暴力を増加させ不安定性を高めると警告している。

過去11ヶ月間にヨルダン川西岸地区だけでパレスチナ人156人が死亡している。パレスチナ情報筋がアラブニュースに語ったところでは、犠牲者の大半は武装衝突に関与しておらず投石さえも行っていなかった。

パレスチナ情報筋や専門家の主張では、イスラエル軍は規則を変更し、脅威を感じた際に発砲して射殺することを容易にしたという。たとえ離れた所から攻撃者を負傷させることが可能な場合であってもだ。

パレスチナ人は、先日イスラエルの治安担当大臣に任命されたイタマル·ベン·グヴィル氏がヨルダン川西岸地区の国境警察の責任者となったことを深く憂慮しており、同氏の就任と死者数の急増との間に関係があると見ている。

米国、EU、国連、アラブ連盟はイスラエルによる致死力の行使に憤りを表明しているが、国際社会からの痛烈な批判はイスラエルによる反パレスチナ人的な暴力を止めるどころか制限することさえできそうにないとパレスチナ人の大半は思っている。

エルサレムのEU報道官であるシャディ·オスマン氏はアラブニュースに対し、パレスチナ自治区では2006年以来最多の死者数が記録されていると指摘し、欧州圏の懸念にはイスラエル軍の手によるパレスチナ人の死に対する説明責任が欠如していると批判した。

同氏は次のように語った。「過度な力を行使している者たちに対する真剣な調査や説明責任が果たされている兆候や形跡がないことを懸念している。それらの者たちは、パレスチナ人の間での緊張や不安を高めるとともに、パレスチナ自治区の治安状況の安定性に悪影響を与えているというのに」

第一次·第二インティファーダを目撃したファタハの幹部はアラブニュースに対し、「パレスチナ人を逮捕するよりも殺害する」というイスラエル軍の決意が死者数増加の背後にあると語った。

この幹部は匿名を条件に次のように語った。「殺害された人のほとんどは逮捕で良かったはずだ」

「私が懸念しているのは、パレスチナ人の殺害がほとんどの場合に非常に些細な理由で何の正当化もなしに行われていることだ。イスラエル兵たちはパレスチナ人を殺す狩りに出かけているのだと思ってしまうほどだ」

パレスチナ治安部隊の元報道官であるアドナン·アル·ダミリ少将(退役)は、非ユダヤ人の殺害は殺人とは見なされないというイスラエルのイデオロギー的信念が死者数の増加に貢献してきたと語った。

同氏は、イスラエルのメディアはパレスチナ人が自分たちを殺そうとしていると煽ってイスラエル人の間に恐慌と恐怖を作り出していると非難した。

「それが理由で彼らはすぐに引き金を引いて発砲するのだ。パレスチナ人を殺した兵士や入植者は裁判にかけられず説明責任も問われないのをいいことに」

また、ヨルダン川西岸地区に住む300万人の人々は、自分たちのうちの誰が軍、警察、イスラエル人入植者の手にかかって次の犠牲者になってもおかしくないと恐れていると語った。

ナブルスの人権活動家アメル·ハムダン氏はアラブニュースに対し、ナブルス·ラマッラー間の道路には入植者とイスラエル兵が多数配備されているため、パレスチナ人が通行する際には危険が伴うと話した。

「私がナブルスからラマッラーに行く時は、交差点、歩道、ジャンクションなどにいる入植者や兵士に自動車で攻撃しようとしていると誤解されて銃撃されないように、用心·集中·注意しながら車を走らせる」

また、パレスチナ人殺害に対するパレスチナ自治政府の反応を批判した。心の痛みと非難·糾弾を表明するのみに留まっているのだ。

「パレスチナ指導部の職務はジャーナリストや社会活動家の仕事を肩代わりして分析したり非難·糾弾したりすることではない。そうではなく、市民を守るための措置を講じなければならない。それが不可能なら、市民たち自身が適切と思う方法で自衛するのを止めるべきではない」

パレスチナ自治政府と、ヨルダン川西岸地区に配備されている3万5000人の自治政府職員に対し、パレスチナ人を守ることができないのではないかという批判が高まっている。

イスラエルの政治アナリストであるヨニ·ベン·メナヘム氏はアラブニュースに対し、パレスチナ人に向けた発砲についてイスラエル兵に与えられている命令は変更されていないとしたうえで、ベンヤミン·ネタニヤフ次期首相が率いるイスラエル新政府はパレスチナ人に対して現在のヤイール·ラピード首相の政府よりも厳しい治安政策を取ると予想した。

また、イスラエル軍が採用している軍事ドクトリンは「ユダヤ人を殺そうと考えたり殺そうとする者は自分が殺されるということを認識しなければならない」という事実に基づいていると話した。

イスラエルの軍事専門家であるエヤル·アリマ氏はアラブニュースに対し、パレスチナ人の死亡者数が多くなっていることには二つの理由があると語った。一つは、ヨルダン川西岸地区で指名手配犯を逮捕するためのイスラエル軍の活動が強化されており、それに伴う武装衝突や投石事件が増えていること。もう一つは、同地区とイスラエルを隔てる壁を破ろうとするパレスチナ人を阻止し侵入者を射殺するとイスラエル軍が決意していることだ。

同氏は、現在イスラエル軍の60%がヨルダン川西岸地区で活動しており、26の戦闘大隊と86の予備戦隊が配備されていると指摘した。

「ヨルダン川西岸地区に配備されているイスラエル軍の規模が大きいため、パレスチナ市民との間に大きな軋轢が生じており、彼らの間の死傷者の数が増えているのだ」

イスラエルの軍と治安当局の指導者らは、今後数週間でヨルダン川西岸地区の治安状況がさらに悪化し、イスラエル軍や入植者に対する攻撃件数が増加すると予想している。つまり、死亡するパレスチナ人の数も増え続けるということだ。

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