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アッバース大統領の後継争い、パレスチナ自治政府の瓦解につながる恐れも——シンクタンク分析

2023年1月31日、ヨルダン川西岸のラマッラーで、アントニー・ブリンケン米国務長官との会談中、声明を読み上げるパレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領(REUTERS)。
2023年1月31日、ヨルダン川西岸のラマッラーで、アントニー・ブリンケン米国務長官との会談中、声明を読み上げるパレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領(REUTERS)。
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01 Feb 2023 04:02:56 GMT9
01 Feb 2023 04:02:56 GMT9

・アッバース氏は現在、パレスチナ自治政府、パレスチナ解放機構(PLO)、そしてファタハを率いている。ファタハは故ヤセール・アラファト氏が創設したパレスチナの世俗主義的政治組織だ。

ラマッラー:ブリュッセルに本拠を置くシンクタンク、国際危機グループ(ICG)は1日に発表したレポートで、パレスチナのマフムード・アッバース大統領の後継争いが起これば「大規模な抗議運動や弾圧」、ひいてはパレスチナ自治政府の崩壊を招きかねないとの見方を示した。

アッバース大統領は87歳で、支持率は右肩下がりで低下している。

前日の1月31日には、イスラエルとパレスチナの相次ぐ衝突を受けて事態の沈静化を呼びかけるため中東を訪問中のアントニー・ブリンケン米国務長官とラマッラーで会談した。

アッバース氏の年齢と、ささやかれ続けている健康不安説を背景に、自治政府のあるヨルダン川西岸では、後継に関する憶測が以前から流れていた。

ICGはレポートの中で、アッバース氏に万が一のことがあって大統領が空席になった場合について、「法的手続に基づく選挙」が「最も可能性の低い」シナリオだと指摘した。

アッバース氏は現在、パレスチナ自治政府、パレスチナ解放機構(PLO)、そしてファタハを率いている。ファタハは故ヤセール・アラファト氏が創設したパレスチナの世俗主義的政治組織だ。

アッバース氏は2004年、アラファト氏の死を受けて行われた選挙で大統領に選出された。これ以降、パレスチナで大統領選挙は行われていない。

ICGのレポートによれば、アッバース氏はこれまで後継指名に難色を示してきた。そればかりか「自分に取って代わる人物を誰にするか決めるはずの制度や手続きを空洞化もしくは無力化してしまった」という。

そのため「誰がどんなプロセスで後継になるかはっきりしていない」とICGは指摘。そして「大規模な抗議運動や弾圧、暴力、場合によってはパレスチナ自治政府の崩壊に至る」可能性もあると警告した。

またレポートは、移行をスムーズに進めるために土壇場になって後継指名を行っても「うまくいかないだろう」と指摘した。

アッバース氏はこれまで何度も大統領選挙の実施計画を潰してきた。近いところでは2021年、イスラエルが東エルサレムでの投票を認めないことを理由に、予定されていた選挙の実施を撤回した。

東エルサレムはイスラエルの占領下にあるが、パレスチナは未来の首都とみなしている。

パレスチナ専門家の間では、アッバース氏が選挙に及び腰なのは、ガザ地区を実効支配するイスラム主義勢力ハマスにファタハが敗北することを恐れているからではという見方が広がっている。

アッバース氏は後継指名をしていないものの、パレスチナ自治政府のフセイン・アル・シェイク民政庁長官を引き立てており、シェイク氏をPLOのナンバー2の座に指名している。

ICGのレポートは後継候補として、シェイク氏と自治政府の情報部門のトップであるマジド・ファラジ氏の2人の名を挙げている。

2人とも自治政府内で強い力を持っており、国際社会とわたりあう力もあるとみられている人物だ。

だがレポートは、「どちらもパレスチナ社会からの強い支持は得られていない」とも指摘している。

またレポートでは、2人に次いで「後継の座をうかがう」人物として、パレスチナサッカー協会のジブリール・ラジューブ会長や、ガザ地区で治安責任者を務めた経験のあるムハンマド・ダーラン氏らの名が挙がっている。

ダーラン氏はアッバース氏と対立した後、アラブ首長国連邦(UAE)に亡命している。

「いずれの人物も自身のネットワークを持っている」ものの、いずれも「独りで立つ力はないだろう」とレポートは指摘している。

AFP

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