
ベイルート:7日、レバノンとイスラエルの間の国境の両側では警戒感が広がっていた。同日明け方、イスラエルがレバノン南部で空爆を実施したのだ。この空爆で物的損害は出たものの死傷者は報告されていない。
レバノンは、イスラエルによる「目に余る主権侵害」に抗議するとともに、同国が決議1701号に違反しレバノン南部の安定を脅かしたとして国連安全保障理事会に訴えることを決定したと発表した。
国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)は7日、6日のレバノンからのロケット弾発射に対する報復として爆撃を開始するとの連絡がイスラエル国防軍からあったことを明らかにした。その直後、UNIFIL関係者がティール周辺で大きな爆発音を聞いたという。
UNIFILは、同駐留軍のミッション長で司令官のアロルド・ラザロ少将がブルーライン(レバノンとイスラエル、およびレバノンとゴラン高原の間の境界線)の両側の当局と話をしているとした。
UNIFILは、「我々の連絡・調整メカニズムは完全に機能している」と述べた。「双方とも戦争は望まないと言っている」
7日午前4時、ラシディエ・パレスチナ難民キャンプとマーリイェ平原の間にある、ナクラに至る海岸道路に近いバナナの木が植えられている開けた場所を、イスラエルの戦闘機が砲弾3発で攻撃した。
イスラエル軍は声明の中で、同軍の戦闘機は「レバノン南部のハマス運動のインフラや施設を標的とした」と主張した。
また、ハマスがレバノンから作戦を行うことを容認しないと警告したうえで、レバノンは同国領内から実施される全ての攻撃に対して責任を負うべきだと述べた。
イスラエル軍はその後、レバノンにおける攻撃の終了を発表したが、ガザ地区に対する攻撃は継続すると付け加えた。
レバノンのリタニ川公社は次のように発表した。「イスラエルによる攻撃は、首都ベイルートから約95キロ離れたティールの村の一つであるクライレにあるカシミヤ灌漑プロジェクトの施設に直接損害を与えた。攻撃は、船着き場と、クライレなどの地域の果樹園に水を引いているカシミヤ灌漑運河の一部を標的としたものだった」
攻撃により変圧器が損傷し、住宅や車にも若干の被害が出たという。
レバノンの人々は7日夜、同国から上ガリラヤ地方に向けて発射された数十発のロケット弾に対するイスラエルの反応を固唾をのんで待っていた。この攻撃についてはどこからも犯行声明は出ていないが、非難の矛先はハマスに向けられた。
この攻撃は、エルサレムのアル・アクサモスクにおけるイスラエルの侵害行為への報復として実施されたと見られている。
UNIFILおよびレバノン軍の砲弾・爆発物処理を専門とする技術者から成るチームがイスラエルによる攻撃の現場を調査したところ、レバノン軍検問所の近くのラシディエ難民キャンプ入り口で不発ミサイルが発見された。
同じ頃、イスラエルは国境前線基地を警戒態勢に置き、空軍に散発的な偵察出撃を行わせた。一方、レバノン軍とUNIFILは国境沿いやUNIFIL管轄地域内の村や町において集中的なパトロールを実施した。
レバノン軍はその後、マルジャユーン平原でロケット弾数発が装填されたロケットランチャーが発見され、現在解体業が行われていると発表した。
ハマスは声明を出し、「レバノンに対するシオニストのあからさまな攻撃」を非難した。
アラブ連盟、イスラム協力機構、国連は、イスラエルによる攻撃を止めるための緊急行動を呼びかけた。
ハマス最高指導者のイスマイル・ハニヤ氏は、ベイルートで行われたパレスチナ抵抗諸派の会合で、次のように発言して強気の姿勢を取った。「ここにいる諸派は、アル・アクサに対するイスラエルの攻撃を前にして腕を組んでじっとしていることはないだろう」
「我々は占領政府に、聖なるアル・アクサと礼拝者に対する残忍な攻撃への全責任を負わせる」
ヒズボラのハッサン・ナスラッラー書記長は3月後半、パレスチナ組織「イスラム聖戦」の指導者ジアド・アル・ナハラ氏や、サレフ・アル・アロウリ氏などのハマス高官を含む、パレスチナ諸派の指導者らと会合を開いた。
国境地域におけるエスカレーションやハマスによるレバノン領土の使用に対し、「馬鹿げだ芝居」だとソーシャルメディア上で嘲笑した活動家もいた。
ミシェル・スレイマン元大統領率いるリカア・ア・ジュームフーリアは、「レバノンを、ロケット弾を発射することでメッセージを伝えるためのプラットフォームに変える」という考えを拒否するとしたうえで、「事態の重大さとレバノンへの政治的・社会的・経済的影響」について警鐘を鳴らした。また当局に対し、「このような安全を脅かす行動をやめさせ加害者を特定し処罰するために必要な措置」を取るよう求めた。
「イランによる占領を終わらせるための国民評議会」の代表である元国会議員のファレス・スアイド氏は、今回起こったことは「決議1701号違反であり、レバノンの主権を大きな危険に晒すもの」だと述べた。
同氏は、「状況をエスカレートさせたのはヒズボラの仲間であるハマス」だとしたうえで、次のように述べた。「イスラエルを出し抜こうとした結果、それがレバノンを攻撃し(レバノンを)メッセージを届けるための郵便箱に変える口実となった。これは起訴されるべき犯罪であり、レバノン人をサンドバッグに変えてしまうものだ」
「レバノン軍団」の元指導者であるフーアド・アブー・ナデル氏はレバノン当局に対し、ハニヤ氏は「レバノンに対する、そしてパレスチナの大義に対する裏切り者」だと主張したうえで、同氏を逮捕し即時追放するよう求めた。
同氏は続けた。「イスマイル・ハニヤ氏が行ってきた、また今も行い続けている活動は全て、ネタニヤフ首相のためになり、イスラエル政界を団結させてきた」
さらに、レバノンは「パレスチナの大義のために重い代償を払ってきた」と強調した。