Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

人類は地球の危機的状況に責任を持たなければならない

世界が置かれている危機的状況に目を向けない限り、火災や洪水による被害は続くだろう。(ロイター)
世界が置かれている危機的状況に目を向けない限り、火災や洪水による被害は続くだろう。(ロイター)
Short Url:
21 Jul 2024 05:07:50 GMT9
21 Jul 2024 05:07:50 GMT9

ブラジル、ボリビア、パラグアイにまたがる世界最大の湿地帯であるパンタナールは、約17万平方キロメートルの広さを誇り、生物多様性に富んでいる。世界最大級のジャガーの生息地であり、オオカワウソ、オオアルマジロ、ヒヤシンスコンゴウインコなど、多くの絶滅危惧種が生息している。

先週『ガーディアン』紙が報じたところによると、ブラジルのパンタナールでは2024年にすでに7,600平方キロメートル以上が燃えており、火災は過去最悪の年であった2020年以降で最高レベルにまで急増している。1月から7月にかけて、火災は昨年の同時期と比べて1,500%も増加した。

幸いなことに人的被害はほとんどなかったが、残念ながら他の生物についても同じことが言えるわけではない。この地域には数千種、数億匹の動物が生息しているため、火災によって膨大な数の動物、特に小型の動物が命を落としている。

多くの専門家は、今年が記憶に残る最も悲惨な年になると考えている。2020年には、面積の30%が火災に見舞われ、1700万頭以上の脊椎動物が死んだ。その他に失われた種の数は計算できないが、その損失は今後数十年にわたって生態系に影響を及ぼすだろう。

パンタナールの90%は私有地であり、牧場主たちは家畜の放牧のために火を放つ。しかし、気候変動によって土地は乾燥し、湿地帯の水の多くが蒸発してしまった。

残念なことに、パンタナールだけが火災の被害を受けているわけではなく、人間の活動が森林や動物に与える影響は、直接的であれ間接的であれ、深刻な火災の増加だけではない。

洪水も同様に大きな脅威であり、年を追うごとにその頻度と激しさを増し、世界のほぼ全域に影響を及ぼしている。洪水はまた、何千もの動物を死に至らしめ、その多くは絶滅危惧種や極めて脆弱な種である。さらに、洪水は植生の大規模な破壊を引き起こし、乾季にはこの枯れた植生が火事の飼料となり、悪循環を生む。

世界は完璧に調整された形で動いており、生きとし生けるものそれぞれが自然のバランスを保つ上で非常に有用な役割を担っているのである。

ランビル・ナヤール

気候変動や生態学的に脆弱な地域での人間活動の活発化により、生物多様性が大規模に破壊され、毎年何百万とは言わないまでも何千もの動物が命を落としている。

大災害の頻度と広がりが増すにつれ、その認識にも変化が生じている。私たちの一部にとって、これは重大な懸念事項となっているが、メディアの多くを含む他の人々にとっては、このような極端な現象があまりにも頻繁に発生し、あまりにも広範囲に広がっているため、このような現象やそれがもたらす深刻な脅威がある程度「常態化」してしまっている。しかし、異常気象は動植物だけでなく、地球全体の生命の生存を脅かすものであり、異常気象がもたらす惨状とその行く末を察知しているのは、このような事態に直接関与している人々だけである。

現地では、状況と動物への影響は悪化の一途をたどっている。ある調査によると、ブラジルの北東部に位置するカアチンガ地域の陸生哺乳類群落の92%が2060年までに種を失い、この地域の気温が2度上昇すると87%が生息地を失うという。

私たちの多くにとって、こうした個体数の減少は遠い、ほとんど目に見えない現象であり続けるとはいえ、その影響が遅かれ早かれあらゆる場所で感じられなくなると考えるのは、とてつもない間違いである。

世界は完璧に調整された形で動いており、植物であれ、動物であれ、あるいはバクテリアであれ、生きとし生けるものそれぞれが、自然のバランスを保つ上で非常に有用な役割を持っている。

森林とその中の生物、特に海洋生態系の喪失があと数年でも止まらないとすれば、人類に深刻な影響を与える一連の大変動が起こるに違いない。

さらに、さまざまな動物の個体数の減少や絶滅につながる無頓着な破壊は、新たな病気の出現や、既存の病気のより強力な形態など、人間の健康に壊滅的な影響を与える。

その他にも、私たちの健康に同様に有害な影響を及ぼすものは、ここでは紹介しきれないほどたくさんある。このような破滅的なシナリオが現実になるのを防ぐために何かをしなければならない責任は、人間にある。私たちが今日の世界が置かれている危機的状況に目を覚まし、責任を取らない限り、火災や洪水による被害は拡大し続け、そう遠くない将来、これまで私たちが目撃してきたよりも多くの人間が、直接的・間接的に命を落とすことになるだろう。

  • ランビル・ナヤール氏はメディア・インディア・グループの編集長であり、ヨーロッパ・インディア・エクセレンス財団の創設者兼理事である。
特に人気
オススメ

return to top

<