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野望のぶつかり合いがスーダンの変革を阻む

スーダン軍総帥のアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン氏(ロイター)
スーダン軍総帥のアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン氏(ロイター)
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19 Apr 2023 10:04:06 GMT9
19 Apr 2023 10:04:06 GMT9

スーダンの軍隊と準軍事組織の衝突が最終的に起きることは誰もが予測していたが、それにより同国の民政への移行は危うくなり、場合によっては潰えそうである。スーダンの事実上の軍政は、軍の長であるアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン氏と副長のモハメド・ハムダン・ダガロ(別名ヘメティ)氏が主導しており、後者は民兵組織から準軍事組織となったラピッド・サポート・フォーセズ(RSF)の長でもある。その軍政体制が2021年10月のクーデター以降、文民による代議制システム構築を監督する立場にあったが、その実現には時間が必要だ。首都ハルツームや国内各所で衝突が続き、強力なライバル軍事派閥が主導権争いをする中、力の衝突が全面的な内戦に発展するリスクが生じている。

スーダンはこれまでにも軍事独裁を経験している。30年にわたり国を支配してきた独裁者オマール・バシール氏が経済情勢の悪化による民衆蜂起により2019年に失脚した後、アル・ブルハン氏とダガロ氏が権力を握った。。

退役軍人のアル・ブルハン氏は、バシール氏による支配の末期に高級将校となった。そして2019年4月にスーダンの暫定リーダーに任命された。同年内には、軍民の主要人物からなり、同国の完全民主制への移行を主導する主権評議会の議長となった。その2年後、彼はクーデターを指揮し、首相と文民閣僚を逮捕したが、政治的経済的な混乱で先が見えなくなると交渉を再開した。昨年7月に、アル・ブルハン氏は「政治勢力、革命勢力およびその他の国民」が文民政権を自立できる余地を残すと誓って周囲を驚かせた。

昨年末に枠組み合意が成立したが、軍隊と準軍事組織RSFの間で何カ月にもわたって高まってきた緊張関係を隠せはしない。国際的支援を受けて今月初旬にサインされるはずだった最終枠組み合意では軍隊もRSFも権力を委譲するよう求めているが、いくつかの条項を巡って摩擦は切羽詰まった状況まで来ている。特に2つの点が争点となっている。ひとつはRSFを正規軍に統合する段取りであり、もうひとつは軍がいつ正式に文民統制下に置かれるかである。

戦闘では戦車、大砲、車載機関銃、さらには航空機が首都の人口密度の高い地域や各都市で使用され、今までになく混乱に満ちたものとなっている。それは、蜂起によってスーダンがバシール氏の下での数十年におよぶ独裁、内紛、経済的孤立から解放されると期待していた4,600万の国民にとっても悪い兆候だ。

アル・ブルハン氏とダガロ氏は大きな野望を持っており、とことん闘うだろう。

モハメド・チェバロ

現在のような規模の紛争によって、サヘル、紅海、アフリカの角地域の境界をなす不安定な地域の安定がさらに揺らぐ可能性もある。両勢力とも完全武装しており軍備の再供給も事欠かない中、衝突が続けば、すでに戦火で傷ついた西ダルフール地域や、スーダン北部・東部のエジプトやエチオピアとの国境近くにも戦闘が拡大する可能性がある。さらには広域紛争となって、ロシア、中国、米国や、過去にスーダンの諸勢力に接近した影響力ある地域勢力の影響力強化の争いに利用されるかもしれない。

どちらの勢力も戦争を伝統的方法で分類しようとはしておらず、両リーダーとも、革命を支持し、他方がイスラム保守派寄りのバシール時代の残党を支援しようとしていると申し立てている。アル・ブルハン氏とダガロ氏は大きな野望を持っており、とことん闘うだろう。スーダンを監視する人たちは、彼らの有する巨大な武力が長期にわたって破壊の爪痕を残す可能性についてしばしば警告を発してきた。

両氏は長期停戦を求める国際的・地域的な声に答えたり、対話や交渉を再開したりするのを急ぐことはなさそうだ。それは平行線をたどる舌戦からも明らかだ。軍はRSFを反乱軍と呼んで解体を求め、ダガロ氏はアル・ブルハン氏を犯罪者と呼んで国内に破壊をもたらしたと非難している。

航空機も有する国軍の資源と規模はダガロ氏の武力を上回るに違いない。しかし、RSFをあなどることはできない。大規模で装備も充実し、よく組織された武装集団だ。残念なことに、それによって、同国の長期にわたる経済危機と大規模な人道的支援の必要性に加え、長引く紛争という亡霊が出現している

世界がウクライナでの終わりの見えない紛争への対応に忙殺される中、このことは今までにない分断を生んでいる。中東はしばしの平穏を望んでいるが、中国が仲介したサウジアラビアとイランの合意がイエメンの紛争の終結につながるかどうか、成果を測る間もなく、スーダンで突然戦闘が起こり、他の危険地域も何年も火種を抱える可能性がある。

・モハメド・チェバロは英国系レバノン人のジャーナリスト、メディアコンサルタント、講師で、25年にわたり戦争、テロリズム、防衛、時事、外交問題を扱っている。

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