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日韓は欧州の例から多くを学ぶことができる

日本の首相の韓国訪問は両国が新たな一章を開く機会をもたらした。(ファイル/AFP)
日本の首相の韓国訪問は両国が新たな一章を開く機会をもたらした。(ファイル/AFP)
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12 May 2023 06:05:09 GMT9
12 May 2023 06:05:09 GMT9

フランスとドイツの関係は、日本と韓国が歴史的な不満を乗り越え、地域における関係強化に向けて努力するうえで重要な教訓を与えてくれる。実際、和解に向けたフランスとドイツの歩みは貴重な知見を提供している。一貫して容赦ない敵同士だった両国が、欧州建設の原動力となるまでに至ったのだから。

18世紀から19世紀にかけて、フランスとプロイセン(ドイツ)は普仏戦争とナポレオン戦争を含め計7回の戦争を戦った。そして20世紀には第一次世界大戦と第二次世界大戦の恐怖があった。これらの紛争は、アルザス=ロレーヌ地方などの領土争い、国家的野心、イデオロギー上の相違などが相まって引き起こされ、甚大な人的被害、人命喪失、大幅な地政学的変化をもたらした。

しかし、大西洋両岸の同盟が重要な役割を果たした第二次世界大戦後の時代には、フランスと(当初は西ドイツ、後には再統一国家としての)ドイツの関係は著しく転換した。両国は和解と協力のために、そして統一された欧州の確立に向けて取り組んだ。

この新時代においては、フランスのシャルル·ド·ゴール大統領と西ドイツのコンラート·アデナウアー首相の関係が要だった。両首脳の関係は目覚ましい進展を遂げ、独仏関係と欧州統合の将来を形作るうえで決定的な役割を果たした。1958年にコロンベ=レ=デュー=エグリーズで行われた最初の会談の際、両首脳の関係には幾分かの懐疑と警戒心があった。ド·ゴール大統領はドイツの力と主権に懸念を抱いていた。一方のアデナウアー首相は、ドイツの評判を回復させて近隣欧州諸国との強力な関係を確立しようと努めた。

岸田首相の訪問は、ミッテラン大統領とコール首相が手を繋いだ有名な瞬間を彷彿とさせる強力な象徴性を持つものとなった

ハーリド·アブー·ザフル

しかし、時が経つにつれ、両首脳は互いへの尊敬と理解を深めていった。冷戦の只中で欧州統合が望まれる中、両首脳は共通の利益と独仏協力のメリットを認識していた。過去を乗り越え和解を育むという両首脳が共有するコミットメントは、1962年にエリゼ宮殿で開かれ緊密なパートナーシップの基礎を固めた歴史的会談に象徴される。ド·ゴール大統領とアデナウアー首相の関係は独仏同盟の土台を築き、両首脳のレガシーの上に繁栄する統一欧州を築いていくことになる将来の世代の指導者らのための先例となった。

それから20年以上経った1984年、ヴェルダンの戦いの舞台となった場所でフランソワ·ミッテラン大統領とヘルムート·コール首相が手を繋いだ有名な写真が、フランスとドイツの和解の新たな重要な象徴となった。第一次世界大戦中に起こったヴェルダンの戦いは塹壕戦の恐怖の象徴であり続けている。ドイツ軍とフランス軍の間のこの戦いでは恐るべき数の人命が失われた。それゆえ、両首脳による力強いジェスチャーは、平和に対する深いコミットメントを示すとともに、過去の憎しみの克服を象徴するものとなった。指導者間の個人的関係が持つ変革の力を示すとともに、大義のために過去の確執を脇に置くことが可能であることを証明したのだ。

冷戦の終結と共に、ドイツは1989年に再統一プロセスを開始した。そしてフランスとドイツの友好関係は、1993年に設立されたEUを作り上げる中で一層強まった。

今週、注目すべき動きがあった。日本の岸田文雄首相が韓国を答礼訪問し、植民地支配の犠牲者に対する心からの同情を表明したのだ。この訪問は、ミッテラン大統領とコール首相が手を繋いだ有名な瞬間を彷彿とさせる強力な象徴性を持つものとなった。それは両国関係の新時代の可能性を示している。そのことがとりわけ重要なのは、中国の影響力の高まりや以前から続く北朝鮮の核問題など、両国が地域における共通の課題に直面しているからだ。強力な個人的関係と対話は、より強固で調和の取れた未来のための基礎である。日本と韓国は共にNATOの枠組みの中の戦略パートナーであり、地域の安定と世界の安全保障における両国の役割の重要性を強調している。

強力な個人的関係と対話は、より強固で調和の取れた未来のための基礎である

ハーリド·アブー·ザフル

フランスとドイツの経験は良い例ではあるものの、留意する必要があるのは、地政学的·軍事的課題が高まりイデオロギー上の議論が再燃する中、両国関係も課題を免れているわけではないということだ。経済政策、エネルギー、欧州の統合、防衛などの様々な問題をめぐって緊張が高まっている。両国は将来の欧州の一体性という意味で決定的かつ危険な瞬間に立っているのだ。それでも、共通の歴史から学んだ教訓や、相違点を越えて取り組んでいくという約束のおかげで、両国はEUとNATOの枠組みの中で強力なパートナーシップを維持できている。

日本の首相の韓国訪問は、両国関係の新たな一章を開いてフランスとドイツのような変革的な瞬間を作り上げる機会を両国にもたらした。そのような瞬間は、欧州でそうなったように、アジア諸国により広範な結束を生み出すことができる。課題は出てくるかもしれないが、和解にコミットし共通の利益を追求することで、より平和で繁栄した未来に向けた道を開くことができるだろう。

日本と韓国がフランスとドイツの経験から引き出すことができる教訓はこの上なく重要なものだ。しかし忘れてはならないのは、未来は決まっていないということ、そして同盟というものには他の何にも増して着実な努力、コミュニケーション、利害のすり合わせが求められるということだ。時には超国家的な利益の最優先を求められることもある。首脳間の友好は、新たな一章を開いて変革的な瞬間を作り上げる機会を両国にもたらす。そのような瞬間が訪れれば、両国はより大きな統率力で自分たちの将来の道筋を決定するとともに、地域のパートナーシップの強化とアジアのさらなる安定·繁栄の実現に向けて他国にも参加を促すだろう。

  • ハーリド·アブー·ザフル氏は宇宙に焦点を絞った投資シンジケーション·プラットフォームであるバービケインの創設者。ユーラビア·メディアのCEO、アル·ワタン·アル·アラビ誌の編集者でもある。
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