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欧州はいかにして中東での信頼を回復し得るか

イスラエルとハマスの戦闘が継続する中、ラファから遠望するハーン・ユーニスでの爆発。2023年12月5日。(AFP)
イスラエルとハマスの戦闘が継続する中、ラファから遠望するハーン・ユーニスでの爆発。2023年12月5日。(AFP)
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07 Dec 2023 12:12:38 GMT9

イスラエルが無防備なガザ地区への大規模な攻撃を再開した現在、欧州は多数の人命損失とイスラエルによる重大な国際人道法違反にいかに対応すべきかについて見解が別れ麻痺状態に陥っている。内部での見解の相違への対応はもちろん重要だが、EUは、少なくとも、迅速な行動により、この壊滅的な紛争の急を要するいくつかの側面に対処する必要がある。

国連総会が、10月27日、人道的停戦や民間人の保護、法的・人道的義務の順守、妨害の無い円滑な援助物資の輸送を求める穏健な決議案の採択を行った時、これを支持したのは一部のEU加盟国を含む欧州の十数か国のみだった。欧州の4ヶ国(オーストリア、チェコ、クロアチア、ハンガリー)は反対すらした。他方、ドイツ、英国、イタリア、オランダ、ポーランド、スカンジナビア諸国(賛成票を投じたノルウェーを除く)といった欧州の大国を含む大多数が棄権した。

欧州は、国連外においても、原則堅持の国、二枚舌外交の国、共謀を図る国に別れている。ベルギーやフランス、アイルランド、スペインを初めとする多くの欧州諸国は中立的な立場を堅持し、紛争の調停や人道支援に取り組んでいる。多くの国々は、病院が攻撃され、未熟児が保育器から出されて死を迎えざるを得なかった時でさえ、ガザ地区の民間人の死に無関心であり続けた。なお悪いことに、少数の欧州諸国は、ガザの民間人への侵攻を継続できるようにイスラエルに物質的、政治的支援を提供し続けている。

欧州のイスラエル支持は、ガザ地区の紛争に反対する世界的なコンセンサスやガザ地区で活動する国連職員や人道支援組織による停戦を求める懸命の呼びかけとは相容れない。また、欧州のイスラエル支持は、ウクライナ戦争に対する欧州の立場や欧州による平和と人権の提唱、人道法を含む国際法を擁護しようとする欧州の姿勢とは明らかに矛盾している。その全てが、イスラエルによる加虐的なガザ地区の破壊、そして女性や子供が大半を占める何千人もの民間人の殺害によって図々しくも侵害されているのだ。

2022年にはロシア・ウクライナ戦争がEUを予想以上に結束させたが、2023年のガザ地区の紛争によってEUは再分裂してしまった。イスラエルのガザ地区への攻撃に対するEUの対応にはEU加盟国間の分裂が反映されてしまった。EU諸国の高官たちはそれぞれ相違する見解を示したのだ。高官たちは、ハマスの襲撃に対しては明確な非難を行ったものの、イスラエルの対応については見解がまとまることはなかった。大半のEU加盟国は、ガザ地区への人道援助物資の輸送の優先を主張したが、人質の「無条件」解放とイスラエルの「自衛権」のみに論点を絞った国も多かった。

とはいえ、意見の相違の大半は停戦に関するものだった。停戦を求めたEU加盟国は少数に留まった。スペインのペドロ・サンチェス首相は国連のアントニオ・グテーレス事務総長の発言に同調し、援助物資のガザ地区への輸送を可能とするために即時の人道的停戦を求めた。この呼びかけに呼応したのはベルギーやアイルランドなど数ヶ国に留まった。

その一方、ドイツの政府高官たちは、イスラエルを無条件に支持し、イスラエルの自衛の「権利」が停戦によって制限されることへの懸念を示した。ドイツのオラフ・ショルツ首相は、イスラエルが国際法を順守することに「疑念を挟む余地は無い」と述べた。ドイツの副首相は、イスラエルの過剰な行動を暗に正当化するために、ホロコーストを想起させた。それはまるでガザ地区の子供たちがドイツの罪を償わなければならないかのようだった。緑の党に所属するドイツの外相もイスラエルを擁護した。オーストリアのカール・ネーハマー首相は、「停戦や戦争行為の中断といった白日夢がハマスを強化してしまったのです」とまで言った。

こうした主要国間の混乱を反映し、EU全体としての反応の見極めは困難となっている。

ドイツの中道右派政治家でもある欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、早期にイスラエルを訪問して連帯を示し、イスラエル政権への全面的な支持を表明した。EUの外交担当責任者のジョセップ・ボレル氏は、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とは対照的に、ガザ地区での紛争に対してより微妙な立場を示した。

EUは、従来、若干イスラエル寄りの傾向はあっても、おおよそ平等な立場で、誠実な仲介者として役割を果たそうと努めていた。現在のアラブ世界においては、EUは特に紛争開始当初、過剰にイスラエル寄りだったという印象が強い。以来この印象を払拭するようなことはほとんど何も為されていない。ヨルダンのラーニア王妃は、欧米の首脳たちが「目に余る二重基準」を用いていると非難している。これは、中東地域の多くの人々の見解を反映している。

昨年欧州はウクライナについての統一見解を即座に示したが、ガザ地区の問題についてはメッセージの表明の仕方に混乱を来している。この分裂は、欧州に対する信頼を損ない、EU機関への期待を低めてしまう。

欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は、こうした批判に対して、「私たちは二重基準など用いていません」と、苦言を呈した。

「私たちには、国際法を信じるという根本的な基準があります」。 ミシェル議長は、EUを非難し、その信頼性に対して「疑念を抱かせる」向きもあるが、「私たちの団結は『グローバル・サウス』に関与する際に最善の論拠になることでしょう」と付け加えた。しかし、こうした心強く感じさせてくれる言葉は、現場で状況が展開するにつれ、また、個々の加盟国やEU当局者らが種々の異なる声明を発する中で失われてしまった。

ガザ地区がイスラエルの容赦ない空爆を受ける中、EU関係者数百人がフォン・デア・ライエン委員長に書簡を送り、同委員長のイスラエルに対する「歯止めのない」支援を批判したと伝えられている。この書簡において、EU関係者たちは、「EUの価値がまるで発揮されていない」とし、「ガザ地区での人権や国際人道法を無視した民間人の虐殺に対してEUは最近数日間無関心であるかのような態度でいる」と強い語調で述べた。

書簡を送ったEU関係者たちは、ロシアによるウクライナ封鎖をテロ行為と見なした一方で、イスラエルによるガザ地区の封鎖を「完全に無視」している欧州委員会の「二重基準」を悲しく思うと述べた。EUの曖昧な立場は、「ガザ地区における戦争犯罪の加速と正当化を放置しているのに等しいように見受けられる」と、EU関係者たちは申し立てた。

EUと欧州全体が見解を統一することは、ガザ地区での紛争の調停という点で非常に有益であり、また、今回の危機が始まって以来低下し続けているEUの信頼性と外交における影響力の回復にも役立つだろう。

2022年にはロシア・ウクライナ戦争がEUを予想以上に結束させたが、2023年のガザ地区の紛争によってEUは再分裂してしまった。

アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士

そうした見解の統一が為されるまでは、この中東という極めて重要な地域における欧州の役割が完全に消滅してしまうことを避けるために、分業が役立ち得る。これは、この紛争をまず主要な課題に分解し、それぞれの要素の責任を、協力的な特定の国またはEUの官僚機構に割り当てることで達成可能となる。

少なくとも6つの個別に処理可能な問題がある。第1の、そして最も喫緊の課題は、停戦の呼びかけで、欧州の数ヶ国は既にこれを支持している。

第2の課題は、国際人道法の尊重、そして、それに違反したすべての当事者に説明責任を果たさせることである。

第3の課題は、ロジスティクスやイスラエルによる制限に妨げられることなく、ガザ地区の民間人の人道支援物資へのアクセス性を改善することである。例えば、キプロスは他の欧州諸国の支持を得て、ラルナカからガザ地区までの海上の援助回廊を提案している。

第4の課題は、ハマスに拘束されている民間人の人質とイスラエルで収監されているパレスチナ人抑留者の解放交渉の再開である。

第5の課題は、ヨルダン川西岸地区や近隣諸国への戦闘の拡大を避けるための紛争の封じ込めである。

第6の課題は、より広範なパレスチナ問題に関する協議の再活性化である。9月に、EUは、和平努力を再び活発にするための新たな取り組みをサウジアラビアやアラブ連盟と共に始めた。現在の惨酷な紛争により、こうした努力を倍増させることが不可欠となっている。

これら6つの課題にへの取り組みにより、EUと欧州は、この紛争を調停する影響力を持った当事者としての適切な役割を取り戻し、国際的な平和と安全の回復に寄与し得る。

  • アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士は湾岸協力会議政治問題・交渉担当事務次長である。本記事で述べられている見解は個人的なものであり、必ずしもGCCの見解を代表するものではない。X: @abuhamad1
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