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ベイルートが死にゆく国家の兆候を噴出している

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06 Aug 2020 11:08:12 GMT9
06 Aug 2020 11:08:12 GMT9

レバノンは、ベイルートで火曜日に多くの死者を出した爆発により、大きな傷口を開いた。「怒り」というのがまずは誰もが感じているものを表現する唯一の言葉だ。レバノンの人々は直ちに人道支援を求めている。同国はこれが起きる以前からすでに崩壊寸前にあり、支援なくしてこれを克服できる状態にはとうていないからだ。この求めに対してすぐさま世界中の国家や個人が応え、この国と国民が彼らの心の特別な位置にあることを今一度証明した。不幸なことながらレバノンの人々は、必死に負傷者を処置しつつある中で、なぜ、そしてどのようにして2000トン以上もの硝酸アンモニウムが危険なまでに住宅地に近いベイルートの港湾に貯蔵されていたのかを既に理解しているのだ。

この重大な過失であろうものは、公式政府とヒズボラとの間で港湾における責任や安全監視義務が被っていたことに起因する。ヒズボラの利益を守っていたことが、これほど多くの罪なき人命の損失と巨大な破壊とを招く歪んだ状況を生み出したのだ。これは、ヒズボラが支配していることをほとんどの人が知らない他のセンシティブな重要地域にも言えることだ。もうこのようなことを続けていてはいけない。あらゆる腐敗の発生源を終わりにする時であり、レバノンの重要なインフラや施設に対するヒズボラの支配と操作を終わらせる時だ。

安全保障に関しては、ヒズボラが事実上の政策決定者であることをレバノン国民はよく知っている。これが今回の事故の裏にある唯一の真実だ。ヒズボラの見せかけの戦闘が、レバノンを系統的に破壊してきた。薬物や武器を取り引きし、反対者を殺害し、国全体を孤立させ、国民を人質にしているヒズボラを野放しにしているのだ。ヒズボラは、港湾、空港、国境、政府、大統領、首相たちを、これまで現在もコントロールしてきた。実業界の誰にどのように見返りを与えるかという決断も下しているのだ。

ハサン・ナスララ氏と配下のならず者たちが掩体壕に隠れる一方で、レバノン国民は彼らの行為や失敗による炎の下で焼かれている。爆発の理由が何であれ、港湾のセキュリティーを監視していたヒズボラ隊員を告発・尋問し、彼らの指令系統全体の責任を問うことをすべきだ。もっと言えば、ヒズボラが説明責任を負うべき事柄は、今回の爆発のみに留まらない。国全体を焼き尽くし、常に国や国民よりも自分たちの利益を優先していることに説明責任を負うべきなのだ。これはもはや受け入れられない。

本当の罪人を匿うためにまたしても、下位レベルの政府職員に責任を転嫁して済ませることがあってはならない。現在の状況では、冗長な裁判で責任が様々な機関をたらい回しにされて証拠が曖昧になる中で、真の正義が貫かれることがないのは目に見えている。レバノンはもはや、判決すら下されることのない終わりなき裁判進行のなかで道を見失っている場合ではない。

今回の壮絶な爆発は、死につつある国家の兆候だ。この国が死につつある理由は、国家主権がヒズボラによって破壊されてきたからだ。これは真の犯罪だ。この犯罪組織はやりたい放題だ。組織の意思を命令し、戦争をし、誰が汚職金で裕福になるだけの価値があり、誰が弾丸や自動車爆弾となるに値するかを決めるのだ。組織のリーダーたちはレバノン国民に自分たちの意思を命令しつつ、自分たちは国家機関に身を隠して必要とあらば身代わりを犠牲にする。彼らは自分たちの下僕への報償プログラムとして政治汚職を利用してきた。下僕のなかにはいわゆる政敵と呼ばれる者たちも含まれる。これら政敵と呼ばれる者たちは、そもそも繰り返しヒズボラの選挙法に賛成票を投じているのだが、シリアでのヒズボラの活動を援護し、ヒズボラが政権に入るのを許し、ヒズボラの問題の解決策を求めて世界中を駆け回っている。

実際、レバノンの政界や実業界のエリートたちはこれらの状況を受け入れ、時にはそこから恩恵を被っていた。彼らはイランの神政政治が国内に影響を伸ばしてくるのを受け入れ、レバノンにおける足固めを支援したのだ。彼らは抵抗する道を模索するのではなく、そこから利益を得る方法を模索してきたのだ。国民が自国への脅威と捉えてとき、これらエリートたちは機会と捉えていたのだ。しかし、政界や実業界のエリートたちがヒズボラの支配を受け入れてきた一方で、通常のレバノン国民は受け入れていないし、これからも受け入れることはない。今ここで我々は、一時しのぎ的な措置で済ませることはもはや不可能であること、そして本質的な病弊を治療する必要があることを理解する必要がある。

国が既に大混乱に陥っていたとき、ヒズボラは自らを安定と安全をもたらすソリューションのように見せかけようと努めていた。飢えて自暴自棄になっていたレバノン国民のなかには、他の選択肢はないのだと捉え始めていた者さえいた。しかしベイルートが再び破壊された今、それらの人々は今回も声を上げないままでいるのだろうか。これ以上失うものがあるだろうか。レバノンが完全統治権を取り戻してヒズボラの武器庫が解体されるまで、レバノン国民はこれを乗り越えることは永久にないだろう。沈黙を保ってこの主張を先延ばしにすれば、レバノンにとってさらなる困窮と危険を生み出す結果にしかならない。そしてヒズボラには、自分たちの集団以外の誰かのために仕えるとか、宗教指導者の利害に仕えるなどという気はさらさらないのだ。

ナスララ氏と彼の配下のならず者たちが掩体壕に隠れる一方で、レバノン国民は彼らの行為や失敗による炎の下で焼かれている。

このリスクの高い危険な時に、レバノン軍の高貴な男女はどこにいるのだろうとの疑問が浮かぶ。彼らはいつまで怠慢なテロリスト集団のための便利屋的な役割に甘んじているのだろうか。いつになったら国民の声や叫びに耳を傾けるのか。いつになったら義務の履行要求に応えるのだろう。もし彼らが内部分断を恐れているのだとしたら、先送りすればするほどリスクが大きくなることを彼らは理解すべきだ。ベイルートの膿は出し切らなければならない。ヒズボラ指揮下におけるベイルートの実業家と政治的支配者の間の共謀はもう終わりにしなければならない。国民と軍は一致団結して、これらの危機と共に向き合わなければならないのだ。

レバノンが直面しているのは、この凄まじい爆発をはるかに超えるものなのだ。法的正義を求める時というものもあれば、政治的正義を求める時というものもある。レバノンに今必要なのは政治的正義だ。それは完全なオーバーホールを必要としている。レバノン国民はその宗教が何であれ、自分たちのリーダーに従うことを止め、自分たちの身は自分たちで守ることができるのだと考える必要がある。現在の時点でレバノンの人々には、新たな政府、新たな大統領、新たな国会議員は必要ない。必要なのは、立ち上がって現在の政体を停止させ、本質的な課題に向き合う統治委員会を設置してくれるような軍なのだ。もし新生レバノンが構築されるとすれば、それは国際支援で成されるのではない。それは、レバノン国民の意思と、より良い未来に向けて共に戦うレバノン軍によってのみ成されるのだ。

  • ハレド・アブ・ザハル氏はメディア・テクノロジー会社ユーラビアのCEO。また、アル・ワタン・アル・アラビ紙の編集長でもある。
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