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イスラエルによるエルサレム猛攻撃を阻止できるのは米国の介入のみ

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13 May 2021 04:05:56 GMT9
13 May 2021 04:05:56 GMT9

ほぼ3年前、当時の米国大統領ドナルド・トランプは、エルサレムをイスラエルの統一首都として認識するという非合法かつ一方的な動きを示した。そうすることにより、彼と彼の側近はエルサレムを交渉の対象から除外したと述べた。トランプ氏の言葉を借りると、「これ以上話し合う必要はない」とのことだった。しかし過去数日間に起きた出来事が、一つの明確で議論の余地のない事実を際立たせた。つまり、エルサレムは今なおパレスチナ問題の、延いてはアラブ-イスラエルの、抗争の中核にあるということだ。

東エルサレムとエルサレム旧市街で起きていることは、現在の状態を変えて新たな現実を押し付けようとするイスラエル超右翼の政治・宗教階級による意図的な行為だ。この悪意に満ちた策略は二つの目的を持つ。その一つは、長い間イスラム教徒のためだけの礼拝場所と なっているアルアクサ・モスクの位置付けを打ち崩そうとするもので、もう一つは東エルサレムのパレスチナ住民の強制退去を開始させようとするものだ。この二つの策略は相互に関連しており、それらは既に揺るぎつつある聖地の現状に対する明らかな危険を呈するも  のだ。

ラマダン開始以来、イスラエル当局は東エルサレムのアラブ住民らを怒らせ、苦しめようとしている。アラブ住民らはイスラエル市民として身分証を持ってはいるが、イスラエル市民とはみなされていない。重税、建築許可の拒否、住宅の取り壊し、土地や家屋の不法収用などを通して、常にアラブ住民を市内から追い出そうとしむけている。2017年にトランプ氏が米国大統領に就任して以来、東エルサレム内のイスラエル居住地区の建設・拡大に対する認可が60%増大した。当時でさえすでに市内のアラブ人口の急増は人口構成比をユダヤ人に有利に傾かせる上で障害となっていたのだ。

この状況に、東エルサレムのアラブ人居住地区シェイクジャラーにおける先日の危機が加わった。ユダヤ人植民地主義者グループが、300人以上のパレスチナ人が居住する土地の法的所有権を主張するため、イスラエルの裁判所に訴えてきたのだ。何十年もの間アラブ住人は彼らの居住地としての正当な権利を証明するために裁判所で戦ってきた。今週最高裁が シェイクジャラーに居住する4家族と彼らの不動産の命運を決めることになっていた。その住人たちの強い信念と、国際法及びジュネーブ協定に真っ向から違反するそのような動きへの国際的非難により、判決は「一旦」延期されている。

ラマダン開始以来、イスラエル当局は東エルサレムのアラブ住民らを怒らせ、苦しめようとしている。

オサマ・アル=シャリフ

移住者への有利な決定は危険な前例を作る可能性がある。それによって、戦争犯罪を理由に、パレスチナ人が彼らの住まいから強制退去させられ、東エルサレムの他の地区でもさらそうした強制退去が行われていく道筋を開いてしまう可能性があるからだ。人種差別的なイスラエルの法律のもとでは、ユダヤ人は1948年以前に所有していたとされる東エルサレム内の不動産に対する権利を主張することができ、一方アラブ人は、西エルサレムやいわゆるグリーンラインの内側でさえ、不動産に関する同様の権利が与えられていない。

東エルサレムの現実は、ウェストバンクやガザ地区同様、未だ「占領された領地」のままなのだ。シェイクジャラーのケースでは、東エルサレムがヨルダンの支配下にあった1956年以来パレスチナ居住者らがその住居の所有権を有することを証明する文書を、ヨルダン当局が提出している。

イスラエル警察及び武装したユダヤ人移住者らによるシェイクジャラーの市民への露骨な攻撃は、イスラエルにとって非常にまずい宣伝広告となった。ソーシャルメディアが非武装パレスチナ住民に対するイスラエルの暴虐を暴く上で重要な役割を果たし、主な米国議員たちからの前代未聞の支援につながった。エルサレムに住むパレスチナ人たちがイスラエル警察によって攻撃及び逮捕されている写真や動画により、欧州連合、国連、米国、中東カル テット、それに最近イスラエルと国交正常化を果たしたアラブ諸国さえもが、イスラエルのそうした挑発的行動を非難する声明を出している。

アルアクサ・モスクについては、イスラエル軍の保護のもとで1969年以降モスクへ押し入ろうとするユダヤ人暴徒はでていなかった。5月10日(月)までの数日間、イスラエル兵士らがモスク内の無害の礼拝者たちに向けてゴム弾を発砲し、スタングレネードや催涙ガスの円筒弾を投げつけ、世界中がショックを受けた。

ベンジャミン・ネタニヤフ首相の長期にわたる政権時代を通して、イスラエルはアルアクサ・モスクの位置付けを変えようとしてきた。1994年のイスラエル-ヨルダン和平条約のもとで、ヨルダン政府がワクフを通して特別管財役を任された。しかし過激派ユダヤ人らは「神殿の丘」とよぶこのモスクの敷地へのアクセスを要求しており、彼らはアルアクサ・モスクの取り壊しを公然と要求している。ヨルダンはそうした過去の動きを拒絶してきたが、イスラエルが新たな現実を押し付けてくれば間違いなく流血の事態を招き、それを防ぐには国際的な支援が必要となっている。

八方ふさがりとなっているネタニヤフ首相は、移住者らをなだめすかすために東エルサレムのユダヤ人化を目論み、大規模な猛攻撃を推し進めようとしたわけだが、世界の世論はイスラエルに背を向けた。しかしそれだけでは十分ではない。ただ一つの存在のみがこれに介入し、この危険で無責任な悪の所業を止めさせることができる。それがバイデン政権だ。それを行われなければ、パレスチナのナクバ(Nakba)記念日前日には次なる悲劇が起こるだ  ろう。

オサマ・アル=シャリフはアンマンを拠点とするジャーナリストかつ政治評論家。    ツイッター:@plato010

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