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日本の静かなオリンピック

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16 Jul 2021 06:07:12 GMT9
16 Jul 2021 06:07:12 GMT9

東京:日本政府は7月8日、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックの影響により、東京に8月22日を期限とする緊急事態宣言を発令した。これは、大規模イベントに課せられる観客数の厳しい制限が、東京オリンピック(7月23日〜8月8日)に適用されることを意味している。

新たな規制措置は間違いなく日本の菅義偉首相を落胆させるものだ。菅首相は、2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故による困難を克服した日本の能力を象徴するものとして大会をアピールしたいと考えていた。競走やその他の大きな競技で歓声が上がることはなくなった。東京のお祭りムードも、地域経済が活性化する期待も、あっという間に消え去ってしまった。

たしかに、日本の緊急事態宣言は、過去16か月間に多くの西側諸国で行われたロックダウンに比べてはるかに甘い措置だ。飲食店や大規模小売店の営業時間が制限されているとはいえ、人々は買い物や外食など、ほぼ通常の生活を送ることができる。しかし、東京にパンデミックに関する緊急事態宣言が発令されるのは2020年4月以降、今回で4回目となっている。また、前回の緊急事態宣言から飲食店におけるアルコール提供の制限が追加されている。これは、マスクをしないで大声で会話することが新型コロナウイルスのクラスターを広げていると疑われているためだ。

菅政権は、緊急事態宣言の期間中、不要な移動を控え、自宅で仕事をするよう「要請」してきたが、この勧告が効果的だったのは、2020年4月から5月まで発令されていた最初の緊急事態宣言の間だけだった。以降、政府はさまざまなアプローチを試みてきた。例えば、昨年の秋、政府は驚くことに、観光産業を活性化するための補助金を出して、人々の旅行を促した。しかし、2020年末にかけて感染者数が急増したため、1月8日から3月21日を期間とする2回目の緊急事態宣言が発令された。そして程なく、4月25日から6月20日を期間とする3回目の緊急事態宣言が続いて発令された。 

このように、緊急事態宣言の発令と解除を繰り返しているのは、意思の欠如や過去の事例から学ぶことができないことを示している。日本の経験は、2020年春に世界の感染症の中心地とされたニューヨークの経験とは対照的となっている。ニューヨークは長期間の準ロックダウンを経て、今年は後戻りすることなく徐々に経済を再開することができている。

当然のことながら、日本国民は、感染の予測と抑制ができない政府に対してますます批判的になっており、日本でのワクチン接種が遅れていることに不満を募らせている。この批判は正しく、日本のワクチン接種はほとんどの先進国に比べて大きく遅れている。7月11日現在、日本の100人あたりの接種回数が48回にとどまる一方、フランスは88回、ドイツは98回、米国は100回、英国は119回となっている。TVやYouTubeでは、マスクのない通常の生活を取り戻したニューヨークなどの様子が映し出されており、多くの日本人が羨ましく思っている。

しかし、日本の世論は、東京オリンピック・パラリンピックの全面的な中止を求める声と、社会・経済活動への強い規制に反対する(特に外食産業の)声に分かれている。当然、政府は両者を同時に満足させることはできないため、無観客での大会開催というぎりぎりの中間地点に着地した。

経済面では、今年は東京での断続的な感染者数の増加や、発令と解除を繰り返す緊急事態宣言により、消費が全体的に鈍化している。今年の4月から6月にかけて、日経平均株価は先進国の主要株価指数の中で最も悪い結果となった。経済の低迷は常に与党にとって政治的な損害を与えることから、菅首相は力強い経済の再開と回復の達成に向けて非常に大きな重圧を受けている。

しかし、経済活動を全面的に再開し、大会を華やかなものにするためには、新たな感染者を少なく維持する必要があった。そのためには、ニューヨークのように、早期かつ迅速にワクチン接種を実施するしかなかった。ワクチンの調達は加速しているものの、日本はワクチンの確保に遅れており、日本の当局は6月末時点で当初予定されていた4000万回分のモデルナ製ワクチンのうち1370万回分しか受け取っていないことを明らかにした。

この夏に何が起ころうとも、菅首相は9月に党総裁選挙、そして10月の衆院議員の任期満了を前に総選挙を控えている。オリンピックが終わると同時に、日本の政治ゲームが始まる。

  • 元副財務官の伊藤隆敏氏は、コロンビア大学国際・公共政策大学院の教授に加え、東京の政策研究大学院大学の特別教授を務めている。 
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