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悪化の恐れのあるイスラエルにおける人権侵害

2021年10月27日、イスラエルの左翼活動家らは、パレスチナの人権団体6つを 「テロ組織 」と指定したイスラエルの決定を非難するために、ラマッラーのアルハク財団にパレスチナの活動家とともに集まった。(Abbas Momani / afp)
2021年10月27日、イスラエルの左翼活動家らは、パレスチナの人権団体6つを 「テロ組織 」と指定したイスラエルの決定を非難するために、ラマッラーのアルハク財団にパレスチナの活動家とともに集まった。(Abbas Momani / afp)
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28 Oct 2021 10:10:58 GMT9
28 Oct 2021 10:10:58 GMT9

ある政府が人権団体をテロ組織だと宣言するのは、その人権団体が当該政府の人権侵害に光を当てている時だけである。

先週、人権侵害政策を行うイスラエル政府は、1つの人権団体をテロ組織であると断定しただけでなく、6つの人権団体をテロ組織との関係が疑われる組織と指定した。これは、自国の政策が国際社会にどのように写っているのか、イスラエル政府が非常に気にしていることを示している。

同政府により、テロ組織との関係が疑われると指定された6の人権団体は、イスラエルによる占領地内だけでなく、イスラエル国内でもパレスチナ人の人権を擁護してきた歴史を持つ。

金曜日にイスラエルのベニー・ガンツ国防相が発表したイスラエルの悪質な政治的な攻撃は、人権の本質を突いたものである。また、非ユダヤ人の人権を侵害するものであり、イスラエルの政策から明らかに逸脱している。

今回テロ組織指定の対象となったのは、1979年に設立された独立した人権団体である「アルハク(Al-Haq)」である。アルハクの任務は、イスラエルが軍事的に統治している占領地において、法の支配を守ることである。

今回もう一つテロ指定の標的とされた人権団体は、「アダメア(Addameer、アラビア語で『良心』の意)であり、同団体は、主に政治的な理由で逮捕、拘留、投獄された民間人の権利に焦点を当ててている。イスラエルの刑務所には現在4,650人のパレスチナ人が収容されているが、その多くは裁判や正式な告発なしに拘束されている。イスラエルでは、英国委任統治時代の古い制度である法の支配を逸脱した行政拘禁が現在でも行われている。

アルハクとアダメアは、イスラエル政府による人権侵害のみならず、パレスチナ自治政府による人権侵害についてもデータを収集している。パレスチナ自治政府は、イスラエルの国内諜報機関であるシンベト(Shin Bet)による「安全上の理由」のためとする襲撃や拘留についてしばしば調整を行ってきた。

ガンツ国防相は、イスラエルが6つの人権団体の事務所を閉鎖し、資産を差し押さえ、団体の職員らを逮捕して、裁判や正式な公的手続きを経ずに投獄することを可能としている。

世界的な人権団体であるアムネスティ・インターナショナルとヒューマン・ライツ・ウォッチは、今回のイスラエル政府による人権団体のテロ組織指定を非難している。また、イスラエルは過去にこの2つの組織を攻撃している。実際、イスラエルは、イスラエル政府による人権侵害を非難するあらゆる団体を攻撃してきた。

イスラエル政府と、その人権侵害を非難する団体との戦いは、イスラエル政府が人権団体をテロ組織と指定したことにより、新たな段階に入った。

レイ・ハナニア

ネッド・プライス報道官は、米国務省はイスラエルの決定が発表されるまで本件について事前に報告がなかったと記者団に語った。また、プライス報道官は、この動きを直接批判することはせず、次のように述べた。「米国は、人権や基本的自由の尊重、強固な市民社会が、責任ある迅速なガバナンスに決定的に重要であると信じている。」

イスラエルが人権団体をテロ組織として指定したことについて、プライス報道官と米国務省は非難しなかった。また、ジョー・バイデン大統領は、人権とテロ組織を同一視するイスラエルの政策について言及しなかった。

もちろん、目下の問題は人権ではない。なぜなら、イスラエルはその人権侵害に対処することなく、イスラエルの反ユダヤ主義を批判する団体を非難することにより、世間の関心をそらすという情報操作を行ってきたからである。イスラエル政府と、その人権侵害を非難する団体との戦いは、それらの人権団体をテロ組織と指定したことにより、新たな段階に入った。

明らかにイスラエルは、自国がパレスチナ人の大義を消滅させるための強力な立場にあると考えており、そのアパルトヘイト政策を批判する人権団体らを黙らせるための取り組みを強化している。

今回のガンツ氏によるテロ組織指定は、イスラエル国内だけの問題ではない。今回のテロ組織指定が、イスラエルがパレスチナ人所有の土地を没収し、ユダヤ人専用の違法な入植地を建設し続けているヨルダン川西岸地区において、平等な扱いを求めるパレスチナ人を黙らせるための新たな戦略を示唆している点においても、より憂慮すべきものである。

イスラエルの戦略は、多くのことを同時に行うことにより、ただでさえイスラエルと対峙することを躊躇している国際社会を、議論を呼ぶ問題の多さに圧倒させるようにするものなのかもしれない。主流のニュースメディアは、イスラエルによるパレスチナ人への日常的な人権侵害をほとんど報道していないため、違反行為を強化することで、かえって批判を最小限に抑えることができるかもしれない。

結局のところ、今回のテロ組織指定は、特に、イスラエルは自国の行動によって実際には何の影響もないと認識しているということから、さらに状況が悪化する恐れがあることを意味していている。

・レイ・ハナニア氏は、数々の賞を受賞した元シカゴ市役所の政治記者兼コラムニストである。ハナニア氏の個人のウェブサイト(www.Hanania.com)から本人と連絡を取ることができる。ツイッター: @RayHanania

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