Tareq Al-Thaqafi
メッカ:多くの元アラムコ従業員にとって、サウジアラムコの黎明(れいめい)期の記憶はいまだに残り、次世代へと受け継がれてきた。今、あるサウジアラビア人がその記憶をネット上に残す活動を行っている。
1940年代から1950年代にかけての多くの従業員にまつわる珍しい写真や装飾品などを展示するデジタル博物館が開設された。
サウジアラビアで最も重要な宮殿の1つにちなんで名付けられたマスマク(Masmak)デジタル博物館は、現在および将来の世代にサウジアラビアの歴史を紹介することを目的としている。同博物館では、遺物を収集し、英語、ドイツ語、ロシア語、フランス語などの複数の言語で展示を行っている。
この博物館の立案者であるオマール・ムルシッド(Omar Murshid)氏は、アメリカで教育を受けながら自身の研究を行っているうちにこのコンセプトを思いついた。
「このプロジェクトを思いついたのは、サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート大学に在学中、サウジアラビア遺産保存協会(Saudi Society for the Preservation of Heritage)の推薦で『アル・マスマク・デジタル博物館』という題名の修士論文を発表したときでした」とムルシッド氏は振り返った。
ムルシッド氏によると、これまでに世界中で7万人以上のフォロワーが博物館を訪れたという。
同氏は、このプロジェクトを、博物館と文化センターを含むネット上の建物であり、古いディルイーヤ建築、アル・マスマク要塞、ムラッバ宮殿に影響を受けた建築デザインを採用し、訪問者の体験を重視している、と表現した。同氏は、テクノロジーにより、情報を簡単に得られるようになったと説明した。「デジタル博物館は、考察、研究、調査の時間を増やし、身体的な労力と待ち時間を減らすことができます」と同氏はアラブニュースに語った。
この作業は長くて骨の折れるものだったが、調査、計画、具体化を通じて、博物館がアラムコで働いていた多くのアメリカ人の血縁者を引きつけるのを見て、ムルシッド氏は喜んでいた。元アラムコ従業員の血縁者の中には、博物館の展示に親や祖父母の写真を見つけたと言い、彼らについて問い合わせてくる人もいた。
ムルシッド氏は、初期にサウジアラムコで働いていた人のほとんどがアメリカ出身であり、サウジアラビアの建国当時や最初の油田が発見された時期にアメリカから来ていたことから、博物館への関心が最も高かったのはアメリカだと指摘している。
「彼らは血縁者にとって特別だったその時代について問い合わせてきました」とムルシッド氏は話した。
「彼らの多くは、アラムコで働いていた血縁者から、特に1940年代と1950年代の歴史的な品々を受け継いでおり、それらがいつのものか知りたがっていました。彼らの懐中時計の中にはアブドル・アジズ国王の写真が入っているものもあれば、複数のサウジアラビア国王の写真が入っているものもあります。それらは血縁者にとって特別な思い出でした」と同氏は付け加えた。
ムルシッド氏によると、博物館の写真の多くは、使節によって撮影されたもので、近代的なサウジアラビア国家の建国の重要な段階を記録している。「これらの写真は手で現像されたもので、酸化が進み、アルバムの中から発見されました」と同氏は言う。
ムルシッド氏は、「アブドル・アジズ国王万歳」の文字が刻まれたガラスのコップ、珍しい懐中時計、オーバーコート、豪華な東洋の靴などが展示されていることを強調した。ヤシの木と交差した刀をモチーフにしたサウジアラビアの国章が、時計やその他の展示品の一部に刻まれている。
「このようなコンセプトを世界に発信することに力を注いでいます。すべての博物館の所有者が利益を追求するわけではなく、遺産を広め、何世代にもわたって情報を伝えて行くことを目的としている博物館もあります」とムルシッド氏は言う。