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サウジアラビアの通学再開で生じる不安や困難

8月29日、コロナウイルス(COVID-19)はいまだ国内で猛威を振るっている状況にあるが、サウジアラビア全土の学校では何百万人もの生徒が対面での授業を再開した。(SPA)
8月29日、コロナウイルス(COVID-19)はいまだ国内で猛威を振るっている状況にあるが、サウジアラビア全土の学校では何百万人もの生徒が対面での授業を再開した。(SPA)
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08 Sep 2021 06:09:31 GMT9
08 Sep 2021 06:09:31 GMT9
  • 保護者自身も、自分たちの限界を知り、しっかりとケアすることも必要だ。セラピストや教師といった、他の大人に子どもたちをサポートしてもらうこともできる。

アメーラ・アビド

ジェッダ:子どもたちが居心地のいい家から出て対面授業のためにまた学校に通い始めている今、通常の日常生活を再開できる気持ちの状態に戻るのが難しいのではないかと予想する人々もいる。

8月29日、コロナウイルス(COVID-19)はいまだ国内で猛威を振るっている状況ではあるが、サウジアラビア全土の学校では何百万人もの生徒が対面での授業を再開した。サウジアラビアの保健省によれば、土曜日の新規感染者数は138人、新型コロナウイルスに関連した死亡者数は7人だった。

通学が再開する前、サウジアラビア教育省は校内で対面授業に出席したいと考える生徒に向けた新たな法的規制を発表した。

ワクチン接種を済ませた生徒だけが対面授業に出席が可能で、ワクチン接種ができていない生徒は在宅のままで、教師によって教育省が承認するMadarasatiプラットフォームにアップロードされる授業の動画で学習を続ける。

ワクチン接種のみに関わらず、先行きの不透明さは保護者や教育関係者、生徒たち自身にも伝わっている。

13歳のハフサ・カリードさんはアラブニュースに対し、通学を再開したことで生じたいくつかの問題について打ち明けた。パンデミックによって、友だちとのつながりがなくなってしまったという。以前のクラスメイトの多くは、まだ学校に戻ってきていないからだ。

「また学校に通い始めてみたら、まったく新しい場所に来た気がした」と、ハフサさんは語る。「学校に行くのが好きだった理由の一つが、クラスの友だちに会えることだった。でも、今はほとんどの子がいなくなってしまった」

それでも、通学再開以来、ハフサさんは母の助言を聞いて前向きにいようとしている。

子どもたちの心の健康において教育機関の果たす役割は大きい。(SPA)

「ママは、これをチャンスだととらえなさい、と言ってくれた。新しい友だちをつくって、また通学できる状況を最大限に活用しなさいって」と、ハフサさんは語る。「今は大切な時期だって、ママは言ってる」

27歳のスクールカウンセラー、ハヤット・アブ・ガザレ氏は、教室での日々のルーティーンに適応しなくてはならないプレッシャーや、新型コロナウイルスの感染が広まる中、教室に座っていなくてはならないことで生じる不安感の可能性を指摘する。

「その子がどれだけ他の子どもたちと接してきたかにもよる」と、アブ・ガザレ氏は話す。「他の生徒たちと一緒に過ごしたり、勉強したり、友人関係を結んでいくことに慣れるのが難しい子もいるかもしれない」

アブ・ガザレ氏は保護者に向けて、子どもたちがこの変化について自由に話したり心配事を打ち明けられるようなオープンな場をつくっておくことを強く勧める。

「保護者自身も、自分たちの限界を知り、しっかりとケアすることも必要」と、アブ・ガザレ氏。「一人でこの役割を果たす必要はない。セラピストや教師といった、他の大人に子どもたちをサポートしてもらうこともできるのだから」

保護者たちも、やはり、子どもたちがまた学校に通い始めることに懸念を抱いている。ハフサさんの母、ヤスミン・カリードさんは娘が直面してきた潜在的な問題と、その影響について語った。

「少し、頭がおかしくなりそう。娘の心と体の健康の面倒を見ないといけないので」と、ヤスミンさんはアラブニュースに話した。

「新型コロナ対策の指示に従うように何度も何度も念を押し、ストレスにならないよう、プレッシャーをかけないようにして、同時に将来のことを考えて成績にも気をつけなくてはいけない。あまりにも考えることが多すぎる」

不安が爆発した時の一時的な解決策として、カウンセラーのアブ・ガザレ氏は、パニック発作が起こったら呼吸を使ったエクササイズをしてみたり、信頼できる人に話をすることなどを提案する。

長期的な不安感との付き合い方としては、子どもたちも毎日のセルフケアを習慣にするべきだろう。そこには、状況が手に負えないと感じたら助けを求めたり、周りの人に話をすることも含まれる。

子どもたちの心の健康において教育機関の果たす役割は大きいと、アブ・ガザレ氏は言う。十分に役割を果たすためには、学校はカウンセラーやセラピストを雇用し、子どもたちに新しい環境に適応する時間を与えるべきだ。

「学習面、行動面、両方において、子どもたちに求める期待値を適切なものに修正する必要がある」と、アブ・ガザレ氏は語る。

「他人、そして自分に対しても思いやりを持たないといけない。これまでも、これからも、私たちみんながトラウマを体験してきているのだから。どれだけ影響を受けたかは人による。学校や教師、教育関係者はそのことも考慮する必要がある」

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