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大塚紀子鷹匠:諏訪流第十八代宗家

諏訪流は日本で最も古く、最も有名な鷹狩の流派である。 (AFP)
諏訪流は日本で最も古く、最も有名な鷹狩の流派である。 (AFP)
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04 Jan 2024 02:01:59 GMT9
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アミン・アッバス

ドバイ:鷹狩は日本で最も伝統的な共同狩猟の方法のひとつである。公的な庇護が始まったのは4世紀で、19世紀までは貴族や大名の専有だった。17世紀に徳川将軍家のもとで隆盛を極めた。

諏訪流は日本で最も古く、最も有名な鷹狩の流派である。設立当初は流派にこだわらず、鷹狩文化に関心を持つ幅広い層から会員を募った。

田籠鷹匠は、年々活発化する国際交流を通じて、諏訪流放鷹術を研鑽・維持することは、日本の伝統文化の希少性と独自性を高めると考え、日本の鷹狩がユネスコ無形文化遺産に登録されることを願っていた。2010年にアラブ首長国連邦を含む11カ国の共同申請により、鷹狩は登録された。

(提供)

2015年、田籠門下の大塚紀子師範鷹匠が諏訪流第十八代鷹師(宗家)を允許された。大塚鷹匠は現在、諏訪流放鷹術保存会の会長を務めている。

大塚鷹匠はアラブニュース・ジャパンの独占取材に応じ、鷹匠への道のりを明かした。「大学生の頃、卒業論文のテーマとして、人間と動物が協働する伝統的なスポーツを探していました。幸運なことに、諏訪流第十七代宗家の田籠善次郎先生という有名な鷹匠に偶然出会いました。最初に調教を見せてくださったのが田籠先生で、私を立派な鷹匠に育ててくださいました。鷹の飛翔に感動し、鷹と鷹匠の心を理解したいと思いました。それが鷹匠になるための人生の始まりでした」

「田籠先生に弟子入りしたとき、先生のように鷹の心を理解し、鷹を飛ばせるようになりたいと思いました。鷹を通して、人間としての本質的な感覚や能力を養いたかったのです。今、自分がどれだけ進歩したかはわかりませんが、少なくとも鷹たちが多くのことを教えてくれたことに感謝しています。現在は伝統的な鷹匠として、自分の感覚や知識を共有し、未来へと続く伝統文化を築いていきたいと願っています」と大塚鷹匠は付け加えた。

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大塚鷹匠はまた、諏訪流放鷹術保存会の感動的なエピソードと歴史を以下のように語った。「私の先生が、その先生である昭和天皇に仕えた花見先生と出会った時、鷹匠の技を一人でも多くの人に伝えようと考えました。そこで、日本中から鷹匠を集めようと、日本放鷹協会を設立したのです」

「先生が60歳を迎えられた時、花見先生から受け継いだ諏訪流という最も伝統的な放鷹術を、残りの人生をかけて伝えたいと決意なされました。私を含め、多くの弟子たちがそのための組織を立ち上げました。それが現在の同保存会の始まりです。さらに、アブダビ国際狩猟・乗馬展示会(ADIHEX)や国内のイベントなど、諏訪流を通じて日本文化に根ざした価値観を広めていくことも大切だと感じています。鷹狩から日本文化を学ぶことができると私は信じています」と大塚鷹匠は付け加えた。

大塚鷹匠は2015年に田籠鷹匠の後継者に指名された。「先生は、鷹匠には人間性が必要だとおっしゃられました」「私は文化を理解するためのアカデミックな知性と、狩猟を愛する鷹匠の心を持っているので、教えることに向いているといわれました」と大塚鷹匠は言う。

「それでも、偉大な師匠たちを超えることはできないと思います」と大塚鷹匠は付け加えた。「しかし、先人たちの思いを引き継ぐために一生懸命努めています。それだけでなく、若い弟子たちが自分たちの伝統文化を築き上げる手助けもしたいのです。そうすれば、鷹狩の未来が見えて来ます。大切な文化を守り続けること、それが私の残りの人生でなすべきことです」

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キャリアの中で直面した課題について、大塚鷹匠は「海外で共感を生むことは、常に私にとっての課題です。国内でも海外でも文化の魅力を発信し続けたいです」と述べた。

日本の鷹狩が他国と異なる点について、大塚鷹匠は「日本の鷹狩には特有の言葉や調教に必要な道具がたくさんあり、場面によって使い分けられます。鷹匠の作法や技にも多くの呼び名があり、鷹匠はそれで鷹の状態を判断します。鷹狩で鷹匠は「神鷹一体」と呼ばれる状態を目指します。鷹匠と鷹が呼吸を合わせ、一体となって飛ぶ瞬間です。 そのような心の状態を持つことは、日本人の特徴のひとつだと思います」

大塚鷹匠が初めて中東を訪れたのは2004年、師の招きで、弟子のひとりとしてADIHEXに同伴したときのことだった。その旅で海外の鷹匠ライフに開眼し、人生へのポジティブな影響を受けたと大塚鷹匠は言う。「自分が世界の鷹狩についていかに無知であったかに思い至り、鷹匠として世界のために何ができるかに関心を抱くようになりました」「旅の後、社会に貢献できる鷹匠になろうと決意しました」と大塚鷹匠は述べた。

2009年、大塚鷹匠は師やアラブの鷹匠たちとともに、モロッコ大統領の猟場を訪問した。大塚鷹匠はこの旅を、忘れられない美しい思い出だと述べた。さらに、2010年にはモロッコでアラブの鷹狩の技術を学んだ。

「多くの方々のご協力のおかげで、海外の鷹匠に出会い、異なる鷹狩文化を体験することができました。 弟子たちだけでなく、一般の方々にも(海外の鷹匠との出会いについて)語り、海外の国々に興味を持っていただけるよう努めています。共通の文化を持つことは、未知の世界を訪れる勇気を与えてくれると思います」と大塚鷹匠は付け加えた。

大塚鷹匠はADIHEX 2023のINPEX/JODCOブースに参加し、イベント来場者との交流を楽しんだ。大塚鷹匠は、アラブ首長国連と日本の間で今年開始される、新しい鷹狩のプログラムについて言及した。

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大塚鷹匠は、鷹狩を学びたい人たちに、鷹を知るだけでなく、身体の技や道具の裏に隠された職人技を知ることを勧めている。

「鷹狩が日本文化への入り口となり、アラブ首長国連邦の方々が、さらに日本に関心を抱いてくださるようになると嬉しいです。原始的なスポーツに通底する感覚に気づいていただけるかもしれません」と大塚鷹匠は締めくくった。

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