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ロンドン開催のサザビーズ20世紀アートオークション——その注目作品

サザビーズのオークションは10月22日にロンドンで開催される。(サザビーズ提供)
サザビーズのオークションは10月22日にロンドンで開催される。(サザビーズ提供)
18 Oct 2019 01:10:51 GMT9

ロンドンで10月22日に開催されるサザビーズ20世紀アート/中近東オークション。出品予定の中から注目作品をいくつか取り上げる。

「雨上がり」

マフムード・サイード

世界的に有名なオークションハウスであるサザビーズの解説によると、この作品は1936年に描かれ、「これまでオークションに掛けられたサイードの風景画の中で、最も印象深い一枚」だという。予想落札価格は37万5,000ドル〜50万ドル(4,000万円〜5,400万円)だ。

サイードはエジプトの現代アートで最も重要な作家のひとりと目されている。作品は古典の巨匠からポスト印象派まで西洋の芸術運動の成果を取り入れている。しかしすべてにおいてエジプト的感覚が濃厚だ。サイードの作品は「文化的ルネッサンス時代のエジプト的精神をよく捉えている」。

「雨上がり」はサイードの「アマルナ時代」に描かれた。この時期のサイードの作品はほとんどがそうなのだが、エジプトの田舎の集落を題材にしている。たわわに実の付いた椰子の木も描かれているが、サイード作品に頻繁に登場するモチーフだ。サザビーズの解説文は「雨上がりの空の深みを表現する、複雑な光の表情をよく捉えている。黒雲がまだ空を覆っているが、雲間に光の希望、太陽の兆しが見えている」と述べ、サイードの技法を称賛している。また空の色使いがナイル川を彷彿させる点にも触れている。「サイードの作品に象徴的に現れるコバルトブルー、そこにほんの少しのターコイズを加え、深く暗い影を沿わせた」部分にナイル川の雰囲気が感じられる。

「正20面体をまとう正12面体」

ダナ・アワルタニ

ダナ・アワルタニはジェッダを拠点に活動するパレスチナ系サウジアラビア人のアーティストで、サザビーズはこの2016年の作品が2万5,000ドル(約270万円)前後で落札されると予想している。解説文によると、木材、銅、ガラスを使ったこの彫刻はアワルタニがモロッコの職人の協力を得て制作したもので、「イスラム工芸の伝統、そのモチーフやパターン模様を現代的作法に無理のない形で溶け込ませる」アワルタニ作品の魅力が端的に現れている。また「幾何学を尊ぶ古くからの精神を現代的に再解釈するアワルタニの作風を象徴する作品で、壊れやすい存在と純粋な存在とのマリアージュが見て取れる」。

「スターダスト」

アリ・バニサドル

アリ・バニサドルは現在43歳、ニューヨークを拠点に活動する売れっ子アーティストだ。2011年に描かれたこのキャンバス画にはバニサドルの特徴的な技法が非常によく現れている。サザビーズの解説文によると、バニサドルの作品では「さまざまな歴史の流れが混交している。イスラム世界と中世ヨーロッパがいともたやすく溶け合い、抽象印象派の表現力がペルシャ細密画の技法で描かれた古戦場の風景を想起させる」。

サザビーズは「スターダスト」を「これまでオークションに出品されたバニサドル作品の中で最も高揚感に溢れる。快活な色使いが見る者を包み込み、調和と静謐とからなる宇宙的な感覚へと引き込む」としている。予想落札価格は35万ドル〜45万ドル(約3,800万円〜4,900万円)だ。

「無題」

セタ・マヌーキアン

マヌーキアンが1987年に描いたこの油彩画はオークションの「アルメニア人ディアスポラ」部門に出品される。この部門は「アルメニアの固有かつ多角的な芸術遺産に触れる」ことを目的に設けられた。

「亡命生活や戦争を経る中で、多くの芸術家がアルメニアの文化、歴史、言語を守り抜いた」と解説文には書かれている。

マヌーキアンはレバノン内戦のほとんどの期間をベイルートで過ごし、のちにロサンゼルスに移住した。現在は同地で仏教の尼僧として活動している。この作品はマヌーキアンがハリウッドに移住した直後に描いた自画像で、当時感じていた孤独と混乱とを表現している。予想落札価格は1万2,000ドル〜1万5,000ドル(約130万円〜160万円)だ。作中の壁に掛かる小さな絵は、同じアルメニア人ディアスポラ芸術家のアルティユン・ヴァルタニアンが1950年に描いた水彩画だ。

「ゴム印」

アブドゥルナッセール・ガレム

ガレムはサウジアラビア陸軍の少佐を務めながらアート活動を行っている。この巨大な彫刻を思いついたのは、陸軍内で昇進したことでデスクワークが多くなり、書類にゴム印を押して過ごす時間が増えたからだという。ガレムのウェブサイトによると、ゴム印の存在によって、「その決定の裏側にどれだけ複雑な論理が込められていようとも」あらゆる事物が「ゴム印を押すか押さないか」というたったひとつの動作へと還元されてしまう。

サウジアラビア中で毎日毎日、あまたの官吏が何千個というゴム印をてんでばらばらの書類に振り下ろし続けていることにガレムは気付いた。「彼らは全体として、無意識的かつ集合的な認可の体系を形成している。何が正しいのか、何が認められるのか、どれが正しい道筋なのかを世に知らしめているのだ」とガレムは書いている。

ガレムの巨大ゴム印に書かれている文字は単刀直入だ。「責任を少しだけ分担」と読み取ることができ、あとは「インシャラー」(神の思し召しのままに)だ。予想落札価格は1万9,000ドル〜2万5,000ドル(約200万円〜270万円)だ。

「無題」

バーマン・モハセス

モハセス(故人)は画家であり詩人であった。「イランのピカソ」と呼ばれることもある。モハセスの絵画は見る者に強い感情を引き起こすことで知られる。特に1960年代の作品は不穏で強い印象を残し、サザビーズの言葉を借りると、「暗い、神話的な人物造形を多く登場させることで、人間の置かれた状況に対する苦悶と絶望とを表現している」。

この油彩画は1966年に描かれたもので、「キャンバス1枚という限られた空間の中で力強さと傷つきやすさとを同時に表現できる、画家のたぐいまれな才能を示す」作品となっている。予想落札価格は15万ドル〜22万5,000ドル(約1,600万円〜2,400万円)だ。

「リズミック・コンポジション」

サルア・ラウダ・シュケール

シュケールは抽象画家としてレバノンで先駆的地位を占める。100歳の天寿を全うした女性芸術家だが、本作品は90代の時に描いた。レバノン国外ではまだあまり知られていなかった時期で、その後、2013年にロンドンのテート・モダンでアラブ人女性芸術家として初めて個展が開かれるまでになった。

シュケールは第二次世界大戦直後のパリに暮らしていた時代があり、ヨーロッパのアバンギャルドに多大な影響を受けた。その影響は以後の多くの作品に残ることになる。「シュケールの美学を形作っているのはイスラムの幾何学芸術と書道だ(しかしそれに限定されるものではない)。パリ時代に身に付けた現代アートの大胆な色使いと、レバノンの柔和な風景がそこに溶け込んでいる」とサザビーズは解説文に書く。1949年に描かれたこの作品は、今回、シュケールの絵画としては初めてオークションに掛けられる。予想落札価格は3万8,000ドル〜5万ドル(約410万円〜540万円)だ。

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