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サウジアラビアが映画の未来の幕を上げる

レッドシー:イマーシブのキュレーター、リズ・ローゼンタール氏。(フダ・バシャタによるAN写真)
レッドシー:イマーシブのキュレーター、リズ・ローゼンタール氏。(フダ・バシャタによるAN写真)
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07 Dec 2021 08:12:49 GMT9
07 Dec 2021 08:12:49 GMT9
  • サウジアラビアの映画祭では、観客はVRヘッドセットを装着してこれまでにない映画体験をしている

ナダ・ハメード

ジェッダ:物語を紡ぐことの未来がどのようなものになるか考えたことはありますか?

あなたがサウジアラビアにいて、ジェッダに新しくオープンしたクリエイティブコンプレックスHayy Jameelで12月15日まで開催中の第1回紅海国際映画祭を記念するバーチャルリアリティー体験プログラム、レッドシー:イマーシブに足を運ぶなら、もうすぐわかることだろう。

観客はバーチャルリアリティーのヘッドセットを装着し、キャラクターの靴を履いて、360度展開する、舞台演出家、映画監督、建築家、さらにはゲーマーのスキルを活用した物語の世界を旅していく。

レッドシー:イマーシブでは、受賞歴のある国際的なアーティストやディレクターによる、ドキュメンタリー、アニメーション、インタラクティブな物語、さらにはゲームやアート、バーチャルワールドの探検を選り集めて、あらゆるタイプの観客を魅了する。

レッドシー:イマーシブのキュレーター、リズ・ローゼンタール氏。(フダ・バシャタによるAN写真)

ギャラリー、アートやデザインのスタジオ、サウジアラビア王国初のアートハウスシネマを備えるHayy Jameelは、VRプログラムにとって理想的な会場だ。

レッドシー:イマーシブではアート・ジャミールと協力して、2021年に英国、フランス、台湾、米国、ドイツ、デンマークのディレクターやアーティストが制作した画期的なVR作品など、21のプログラムを紹介する。

賞金1万ドルのGolden Yusr Immersive Awardコンペティションは、米国のマルチメディアアーティスト、ローリー・アンダーソン氏率いる全員女性の審査団が審査を担う。

レッドシー:イマーシブのキュレーターであるリズ・ローゼンタール氏は、プログラムの目的は物語の創作、芸術の制作、物語世界の構築にとってバーチャルリアリティーがまたとない新プラットフォームであることを、サウジアラビアのアーティストやイラストレーター、観客に示すことであるとアラブニュースに語った。

「このプログラムは、物語を紡ぐために新たなツールを使用するという点で、刺激的なものになるでしょう。私たちが紹介する作品群がアーティストにインスピレーションを与えることを心から願っています」と、ベネチア国際映画祭でベニスVRをキュレートした経験を持つローゼンタール氏が述べた。

サウジアラビアの人々は映画やテレビ、ソーシャルメディアなどの平面的な画面のメディアには親しんでいるが、「360度VR体験は新たな世界に足を踏み入れる機会を提供するでしょう」とも述べた。

「みなさんに感情や物語、そして360度の空間的な方法でどのように物語世界に分け入っていくかをお示しできることに、とてもわくわくしています。迫力満点です」

VR体験のラインナップには、「アナンダラ」「エンド・オブ・ナイト」「創世記」「グリンプス」「ゴリアテ:本物と遊ぶ」「クスンダ」「ライカ」「ラビリントス」「ル・バル・デ・パリ・デ・ブランカ・リー」「マルコ&ポーロ・ゴーラウンド」「リエデュケーテッド」「サムサーラ(輪廻)」「シックローズ」などが並んでいる。

ローゼンタール氏によると、VRプロジェクトは映画製作とは大きく異なる。

「映画製作では画面は平面です。各シーンをどこでカットするかや、ロングショットかワイドショットか、あるいはクローズアップなのかを決定するのは、監督や編集者です。しかし、VRでは360度環境に足を踏み入れているので視聴者に行動権があり、キャラクターや物語とやりとりを行うことが可能です。映画製作とはまったく異なるメディアです」

「さまざまな分野がかかわっており、映画製作も非常に重要な要素になっていますが、映画製作者が他の分野の人たちと協力してこの種の体験を生み出していく方法は刺激的なものになるでしょう」

各体験は、アニメーション、ドキュメンタリー、ラブストーリー、抽象芸術、場所・時間・感情を通り抜ける旅といったさまざまな形態を備えた人工的な世界だ。

一部の体験では、視聴者は、ゲームエンジンコントローラーを使用してインタラクティブな役柄を演じ、キャラクターを助けるという、リアルタイムのパフォーマンスに参加できる。

ローゼンタール氏は、「レッドシー:イマーシブでは、過去2年間の最高のバーチャルリアリティープロジェクトを選定しました。13のプロジェクトでコンペティションを実施しましたが、バーチャルリアリティーのツールで取り組むことのできるジャンルやテーマがたくさんあることを示したいと願っていました。そのため、実に幅広いセレクションになっています」と述べた。

「他に、2020年に制作された8つほどの体験も選定しました。さまざまなフェスティバルで発表され、賞を獲得した、私のお気に入りの体験もあります。しかし、コンペティション部門は2021年に制作されたプロジェクトばかりです。ベネチア映画祭で主要な賞を授与されたプロジェクトが3つ含まれていたりします」

ローゼンタール氏によると、VRのような技術の使用には、ゲームデザイン、建築、空間デザインなどさまざまな分野のスキルが必要だという。

リアルタイムのインタラクション体験である「グリンプス」は、ゲームデザイナーと映画監督のコラボレーションだ。

ローゼンタール氏は、「『グリンプス』の監督であるベンジャミン・クリアリー氏は、短編映画でオスカーの受賞歴があり、共同監督のマイケル・オコナー氏はゲーム界とのつながりがさらに深く、ビデオゲーム会社セガでの勤務歴があります。つまり、ゲームエンジンの知識が必要であり、映画監督のように演出し、物語を紡ぎ出す力が必要なのです」と述べた。

「このイベントがさまざまなクリエイター、ストーリーテラー、映画製作者にインスピレーションを与えるものになることを願っています。しかし、バーチャルリアリティーにとって本当の意味で新しい点は、芸術のさまざまな表現手段を一つにまとめた点です」

Hayy Jameelの会場にはブースが14個あり、観客は1時間の枠を予約して、21作品のいずれかを視聴する。もっと長い時間を予約して、多くのプロジェクトを視聴することも可能だ。

第1回紅海国際映画祭はUNESCO世界遺産であるジェッダ旧市街で2021年12月15日まで開催され、才能ある新進の人材を支援し、アラブと世界の最高傑作の映画を紹介する。

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