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保守派裁判官がイスラエル最高裁長官の座を狙い、窮地の司法に新たな試練

2023年8月26日、テルアビブにて、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の政権による司法制度改革計画に反対する抗議運動のため、34週連続で集まるイスラエル国民。大きな横断幕には、ネタニヤフ氏と妻のサラ氏が描かれ、ヘブライ語で「この国を燃やせ」と書かれている。(AP通信)
2023年8月26日、テルアビブにて、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の政権による司法制度改革計画に反対する抗議運動のため、34週連続で集まるイスラエル国民。大きな横断幕には、ネタニヤフ氏と妻のサラ氏が描かれ、ヘブライ語で「この国を燃やせ」と書かれている。(AP通信)
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31 Aug 2023 04:08:46 GMT9
31 Aug 2023 04:08:46 GMT9
  • 年功序列による指名の伝統を破ることで、裁判官らが委員会の投票のために互いに競い合うようになる可能性があるため、エルロン氏の立候補により最高裁がさらに政治色を帯びる恐れがあると、法律専門家らはいう

エルサレム:若手の保守派裁判官が30日に、イスラエル最高裁判所の長官に名乗りを上げた。これはかつてない動きであり、法学者は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の極右政権が司法改革の計画を進める中で、法廷の独立性を揺るがすもう1つの試練となると述べている。

イスラエルの75年間の歴史の中で、同国の最高裁判所の長官を選ぶ委員会は常に最古参の裁判官を指名してきた。現在の最高裁長官であるエスター・ハユット氏は10月に引退予定で、その後任に名乗りを上げるというヨーセフ・エルロン氏の決断は、伝統からの脱却を象徴するものだ。

年功序列体制のもとではハユット氏の後任となる予定のイツハク・アミット氏は、10年以上にわたって最高裁法廷に座ってきたリベラル派の人物。2017年に最高裁入りを果たし、最高裁で最も保守的な裁判官と見なされているエルロン氏は、議論の的となっている司法改革の立案責任者であるヤリブ・レビン司法大臣の支持を受けていると考えられている。

年功序列による指名の伝統を破ることで、裁判官らが委員会の投票のために互いに競い合うようになる可能性があるため、エルロン氏の立候補により最高裁がさらに政治色を帯びる恐れがあると、法律専門家らはいう。

「人々はこれを改革の新たな動きであり、司法制度の変化の重大な証拠だと見ている」と、エルサレムのシンクタンク「イスラエル民主主義研究所」のアミール・フックス上級研究員は述べた。「年功序列の慣例がなくなれば、全ての裁判官が政権の座にある連立与党によりジャッジされていることを自覚し、裁判官らの独立性が損なわれる」

憲法学教授のアミハイ・コーヘン氏は、エルロン氏が最高裁長官に選ばれる可能性は低いが、同氏の立候補により、最高裁の権力の制限にかかわる来月の2つの重要な裁定を前にして、リベラル派と保守派の裁判官の間の不和が悪化する恐れがあると語った。

ネタニヤフ氏の重要な同盟者であるレビン氏は、イスラエル議会で法律を制定することで、最高裁長官を含む国の裁判官を選出する委員会の構成を変えようとしてきた。この法律の制定が行き詰まってから、レビン氏は委員会の招集を拒否している。

9月に最高裁は、委員会会合を凍結するレビン氏の決定に異議を申し立てる訴えについて審理する。また、7月にネタニヤフ政権が可決した司法改革の最初の法案に対する異議申し立てについても審理する。

ネタニヤフ氏の極右・超正統派政権の支持者らは、この法律はリベラル派の選挙で選ばれていない裁判官らが選挙で選ばれた国会議員たちの決定に干渉することを防ぐものだという。また、最高裁の権限を制限する法律について最高裁が裁定を下すことができてはならないとしている。

司法改革は、数か月にわたる大規模な抗議運動を引き起こしてきた。しかし、もし最高裁が新たな法律を無効とすれば、ネタニヤフ政権はその判決を無視し、誰が最高の権威を持つかをめぐっての危機を招く可能性がある。

AP

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