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韓国人アーティスト、サウジの伝統衣装をグスタフ・クリムトのスタイルで描く

韓国のデジタルアーティスト、キム・シネ氏。
韓国のデジタルアーティスト、キム・シネ氏。
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14 Feb 2023 06:02:36 GMT9
14 Feb 2023 06:02:36 GMT9
  • キム・シネ氏はデジタルアートを使って異文化の橋渡しやサウジの多様な伝統の探究をしている
  • 彼女はアラブの衣装とクリムトの最も有名な作品《接吻》からインスピレーションを得た

ナダ・ジャン

ジェッダ:韓国人デジタルイラストレーターのキム・シネ氏は、アラブ世界で最も美しく最も有名な文化の一つである伝統衣装を、19世紀オーストリアの独創的な画家グスタフ・クリムト、中でもその最も有名な作品《接吻》のスタイルで描いている。

キム氏は、中東・北アフリカの文化に韓国の文字の要素を混ぜ合わせた。その結果、クリムト絵画の新たな解釈が生まれた。

クリムトの《接吻》は、大きな金色のマントにくるまって抱き合う二人の顔と体をきらめくカラフルなラブシーンとして描くことで、優しさと情熱のアーキタイプを体現している。

重厚な装飾マントがカップルを守るように包み込んでいる様子に、解けない抱擁の中の不滅の愛が表現されている。

キム氏は自身のヴァージョンの《接吻》に、サウジアラビア、UAE、エジプト、モーリタニア、モロッコなどの23種類の民族衣装を取り入れるとともに、名所など他の文化的要素も加えた。

キム氏はアラブニュースに対し、カタール航空の客室乗務員として働いていた時に美術館やギャラリーを訪れたことがきっかけで芸術に対する自身の情熱を発見したと語る。

ウィーンでの乗り継ぎの際にクリムト美術館を訪れ、《接吻》に魅了されたのだという。

新型コロナパンデミックの時に初めて自身の画才を発見したと彼女は語る。

ロックダウンのおかげでユーチューブ動画でデジタルドローイングを学ぶ時間を取ることができ、技能が開花したのだという。

彼女はアラブニュースに対し、「中東・北アフリカ文化を主なテーマにすることに決めたのは、カタールで7年間アラブの人々と共に暮らす中で彼らについて多くのことを知ったからです」と語る。

メディアが示すものとは違う新しいアラブ人像を韓国の人々に示したいという思いもあるのだという。

「自分のアートの元となるものに《接吻》を選んだのは、愛と思いやりを表現した作品だからです」と彼女は言う。「私の名前にも愛(を意味する韓国語の文字)が入っているので、愛を分かち合い愛を生きることが私の使命だと信じています」

アスィールの伝統衣装。(提供写真)

彼女は、最も一般的な伝統衣装を使って絵を描く一方で、サウジアラビアの地域ごとの文化も探究し、西部のヒジャーズ地方やターイフ地方、南部のアスィール地方、中央部の伝統衣装を複雑な細部まで描いた。

大学生の頃からサウジアラビアには非常に好ましい印象を抱いていたとキム氏は語る。サウジからの交換留学生と接して同国への関心を掻き立てられたことがきっかけだったという。

ソーシャルメディアのフォロワーの一人から、地域ごとの衣装を描いてみてはどうかと提案された。そして、サウジアラビアの多様な文化をもっと世界に伝えるために、同国の様々な種類の衣装について調べてみるよう頼まれた。

「フォロワーの皆さんからもらったアイディアにはとても感謝しています」とキム氏は言う。「一番大切なことは、人々が求めるものと自分が求めるものの共通分母を見つけることだと思っています。アートは人々をインスパイアするものであるべきだと考えるからです」

フォロワーに連絡を取って各衣装の参考資料を提供してもらいながら、自分自身でも各文化について調べているのだという。


ターイフの伝統衣装。(提供写真)

キム氏は一部の作品に韓国語の言葉を独創的な形で取り入れている。

例えば、アスィールの衣装を描いた絵には、カップルの周りやアスィールの歴史的なシンボルの横にサウジアラビアを表す韓国語の言葉「사우디 아라비아」が書き込まれている。

ターイフの絵には愛という意味の言葉「사랑」が加えられており、その言葉の一部にはターイフ名物のダマスクローズの花と葉が使われている。

アスィールの衣装はイエメンの衣装にとても似ているように思えたので特に難しかったと彼女は語る。アスィールの人とイエメンの人に二つの衣装の違いについて詳しく説明してもらったのだという。

キム氏は、異文化間に生まれる美しさをさらに表現するために、二人の出身国が異なる夫婦からの依頼を世界中から引き受けている。

これまでに、シンガポール人と韓国人、パレスチナ人とブラジル人、サウジアラビア人とアルゼンチン人、ヨルダン人と米国人などのカップルを描いた。

作品への反応のほとんどは好意的なものだが、あらゆるアーティストの例に漏れず批判を受けることもあるとキム氏は話す。

批判については、自分に「アートをする自由」があるのと同様に他の人たちにもそれを否定的に解釈する自由があるのだと思って受け流しているのだという。

人々が自分の作品から受けるあらゆる感覚を尊重するし感謝すると彼女は言い添えた。

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