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機械の魔法かアートの脅威か?日本初のAI漫画

2023年3月2日に撮影されたこの写真は、東京の出版社新潮社のオフィスで、日本初の完全AI漫画「サイバーパンク桃太郎」の単行本を確認する主任代理のクニサワ・マサカド氏。(AFP通信)
2023年3月2日に撮影されたこの写真は、東京の出版社新潮社のオフィスで、日本初の完全AI漫画「サイバーパンク桃太郎」の単行本を確認する主任代理のクニサワ・マサカド氏。(AFP通信)
2023年1月31日に撮影されたこの写真は、「Rootport」というペンネームの人工知能(AI)漫画家が、AFP通信社東京支局のインタビューで、特定されないように手袋を着用してAI漫画の制作方法を実演している。(AFP通信)
2023年1月31日に撮影されたこの写真は、「Rootport」というペンネームの人工知能(AI)漫画家が、AFP通信社東京支局のインタビューで、特定されないように手袋を着用してAI漫画の制作方法を実演している。(AFP通信)
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08 Mar 2023 02:03:22 GMT9
08 Mar 2023 02:03:22 GMT9

東京:日本で発売されようとしているSF漫画の著者は、自分には絵の才能が「皆無」であると認め、ディストピア系のストーリーを作るために人工知能に目を向けた。

「サイバーパンク桃太郎」に出てくるすべての未来的なからくりや生き物は、「Stable Diffusion」や「DALL-E 2」などとともに、口コミで拡散しアートの世界を混乱に陥れた「Midjourney」によって複雑に描かれた。

日本初のAIのみで描かれた漫画であるこの作品は、数十億ドル規模の漫画業界における雇用と著作権を脅かすテクノロジーについて問題提起している。

「Rootport」というペンネームで呼ばれる作者は、熟練した漫画家でも完成するのに1年かかる100ページ以上のこの作品を、わずか6週間で完成させた。

「宝くじを連想させる、楽しいプロセスでした」と37歳の作者はAFPに語った。

漫画原作を手掛けたことのある作家のRootport氏は、「ピンクの髪」、「アジアの少年」、「スタジアムジャケット」などのテキストプロンプトの組み合わせを入力して、物語の主人公のデザイン画を約1分で造り出した。

それから、一番良い出来のコマを漫画形式にレイアウトしてこの本を制作した。大手出版社の新潮社から発売される3月9日に先立ち、すでにネット上で話題を呼んでいる。

伝統的な白黒の漫画と違って、同氏の創作はフルカラーだが、同じキャラクターの顔が時に著しく異なる形で現れる。

それでも、画像生成AIは「芸術的才能のない人々が(もし優れたストーリーが語れるなら)、漫画業界に進出するための道を開いた」と作者は語った。

Rootport氏が魔法の「呪文」と表現するテキストの指示が、想像していたものと一致する画像を作成したときは満足感を感じたという。

「でも、手で何かを一から描いたときに感じるのと同じ満足感でしょうか。恐らくそうではないでしょう」

「Midjourney」は米国で開発され、昨年発売された後、世界中で人気を博した。

テキストから画像を自動生成する他の画像生成AIと同様に、その創作は奇想天外で、不条理で、時に不気味で、驚くほど洗練されており、アーティストの自己分析を刺激するかもしれない。

また、このツールは法的な問題に遭遇している。ロンドンに拠点を置く、「Stable Diffusion」をリリースしたスタートアップは、このソフトウェアが著作権で保護されたコンテンツを許可なく大量にウェブから収集したと主張する訴訟に直面している。

日本の議員の中にはアーティストの権利について懸念を表明する者もいるが、専門家の意見では、AIアートが人間の創造性をほとんど持たず、単純なテキストプロンプトを使用して作られている場合、著作権侵害は起こりそうもない。

このテクノロジーが、各シーンの背景を丹念に描く若手漫画家から仕事を奪う可能性があると警告する人もいる。

Netflixが1月にAIで生成された背景を使用した日本の短編アニメをリリースしたとき、人間のアニメーターを雇っていないことをネット上で厳しく非難された。

「漫画家のアシスタントが(AIに)取って代わられる可能性はゼロではありません」と慶應義塾大学の栗原聡教授はAFP通信に語った。

2020年、栗原教授と彼のチームは、漫画のパイオニアだった故・手塚治虫のスタイルでAIを活用した漫画を発表した。

このプロジェクトでは、人間がほとんどすべてを描いたが、それ以来AIアートは「一流」になり、漫画業界の未来に影響を与えるのは「必至である」と教授は述べた。

漫画家の中には、このテクノロジーがもたらす新たな可能性を歓迎する人もいる。

「AIを脅威とは思っていません。むしろ、素晴らしい仲間になり得ると思います」と30年以上のキャリアを持つ小林まどか氏はAFP通信に語った。

人工知能は「自分が考えていることを視覚化し、大まかなアイデアを提案するのに役立ち、それを改善する意欲をかき立てます」と同氏は語った。

東京の専門学校で漫画家志望者の訓練も行なっている同氏は、漫画は美学だけではなく、巧妙に考案された構想に基づいて構築されていると主張する。

その分野では、「人間がまだ優位に立っていると確信しています」

それでも、同氏は「誰の作品に基づいているのかわからない」コンピューターが生成した画像から直接コピーすることは避けている。

東京デザイン専門学校で、筋肉から衣服のしわやつむじに至るまで、学生の鉛筆画を改善するために小林氏は立像を使用する。

「AIアートは素晴らしい…でも人間の絵は、『めちゃめちゃ』だからこそ、より魅力的だと思います」と18歳の学生であるウチダ・ギンジロウさんは述べた。

さらに、コンピューター・プログラムは本物の漫画家が意図的に誇張する手や顔を常に捉えているわけではなく、「ユーモアのセンスはまだ人間の方が優れています」とも述べた。

大手出版社3社は、AIが日本における人間主導の漫画制作プロセスを混乱させる可能性があるかどうかについて、コメントを避けた。

Rootport氏は、AIのみで描かれた漫画が主流になるかは疑わしいと考える。なぜなら、本物のアーティストの方が、イラストが文脈に合っているかを確認するのに優れているからだ。

とはいえ、「AIを全く活用しない漫画がいつまでも主流であり続けるとも思っていません」

AFP通信

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