
全国の消防やトヨタ自動車などが連携し、走っている救急車の位置を自動検知して一般ドライバーが道を譲りやすくするシステムの実用化が進んでいる。救急車による搬送件数は年々増加し、昨年は初めて700万件を超えた。こうした中で円滑な搬送業務につながることが期待される。
このシステムは「緊急車両存在通知」。装置を搭載した救急車が接近すると、車内でブザーが鳴り、来る方向や距離が矢印や数字でメーターパネルに表示される。150メートル以内の接近を検知できる。
総務省消防庁の担当者は「運転中に救急車のサイレンが聞こえたが、近づく方向が分からず道を譲るのが遅れるドライバーが多く、何とかならないかと思った」と開発のきっかけを話す。
同庁などが2018年度に名古屋市などの主要道で行った実証実験では、交差点で直接救急車が見えなくても、ブザーを聞いて早めに車を停止できたことで、救急車の走行時間が平均7.7%短縮した。システムを搭載した車のドライバーからは「救急車が来る方向が分かったため、周囲の車より早く道を譲れた」との声があったという。
ただ、救急車と車双方にシステムが備わっている必要があり、より多くの車への普及が課題だ。この通信機能を持つ救急車は、22年4月1日現在で全国の消防本部にある6549台のうち約15%にとどまる。システムを標準装備した車もトヨタの一部高級車種に限られ、追加で付ける場合は3万円弱かかるのもネックだ。
トヨタの担当者は「システムの認知度は確実に高まっている。今後は利便性をもっと知ってもらえれば」と話し、周知に力を入れるほか、搭載車種の拡大も目指す。同社は今年3月3日の「耳の日」に公式ツイッターで、「目で救急車に気づくことができる」とシステムをPRしており、耳の不自由なドライバーへの浸透も図りたい考えだ。
時事通信