
東京:日本銀行の植田和男総裁は、日本経済は米国の関税による打撃に耐え、賃金上昇を伴うインフレ上昇のサイクルを維持できると述べ、日本銀行がさらなる利上げに踏み切る用意があることを示唆した。
アメリカの通商政策とドナルド・トランプ大統領が課す関税の範囲が不透明なため、日本の輸出に打撃を与え、企業は設備投資計画を遅らせ、賃上げを抑制する可能性があると、植田氏は火曜日に述べた。
米中両国が相互関税率を引き下げることで合意したことは、市場からは前向きな進展と受け止められているが、先行きの不透明感は依然として高いと植田氏は指摘した。
「最近の関税政策は、さまざまな経路を通じて日本経済に下押し圧力をかけるだろう」と植田氏は講演で述べ、企業や家計のセンチメントはすでに悪化していると警告した。
「とはいえ、歴史的に高い企業収益が緩衝材となっているため、日本経済はこのような下押し圧力に耐えることができると予想している」と述べた。
また、日本経済の労働市場が逼迫していることから、賃金と物価が連動して上昇するトレンドが維持される可能性が高いとした。
基調的な消費者インフレは一時的に停滞するだろうが、2%の目標に向けて徐々に上昇していくという日銀の見方に変更はないと植田氏は述べた。
「春先からの貿易政策の進展は、予想以上に日本経済に大きな影響を与えたが、物価目標の達成に向けた前進は引き続き勢いを増している」と植田氏は付け加えた。
日本経済は第1四半期に縮小し、4月には輸出の伸びが鈍化した。これは、米国の急な関税措置が脆弱な回復に打撃を与えかねないことを示す初期の兆候である。
経済見通しが暗くなったことで、日銀は5月1日に成長率とインフレ率の見通しを大幅に下方修正せざるを得なくなり、次の利上げ時期をめぐる決定が複雑になっている。
成長鈍化がインフレの重荷になる可能性がある一方で、4月の消費者物価データは、企業が幅広い商品についてコスト上昇を転嫁し続けていることを示している、と植田氏は述べた。
「各国間の貿易交渉が進み、貿易政策に対する不透明感が薄れれば、海外経済は緩やかな成長軌道に戻るだろう。それがひいては日本の経済成長を加速させるだろう」と述べた。
植田総裁は、日銀の次回の利上げ時期については言及せず、今後の経済・物価情勢次第だと述べた。
ロイター