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トランプが中国の金融戦争で戦術に出る

トランプ政権は米国での中国資産の押収検討をほのめかしている。(AFP)
トランプ政権は米国での中国資産の押収検討をほのめかしている。(AFP)
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26 Aug 2020 12:08:30 GMT9
26 Aug 2020 12:08:30 GMT9

アンソニー・ローリー

アラブニュース・ジャパン特筆

東京:ドナルド。トランプ米大統領は、中国攻撃への重点を貿易戦争とサプライチェーン戦争から金融システム戦争へと転じる模様だ。氏は中国の世界的決済システムへのアクセス制限を行うと脅迫している。一部の専門家は、この動向をブーメランが戻り米国自身に害を及ぼすと考えている、

トランプ氏は、中国が世界的決済ネットワークからの分断を避けて貿易を譲歩するように脅しをかけ、「取引の芸術」でハッタリをかましたり、または演習しているかもしれない。しかし、氏の戦術は、中国に代替システム作成を深刻に考えさせることとなった。

世界的決済システムを介して、貿易国間では莫大な金額が毎日交わされており、米国と中国はその2大国である。トランプ氏の米国資本市場へのアクセス拒否による中国妨害と同様に、決済システムへのアクセス拒否は中国に大きな害を及ぼす可能性がある。

同時に、トランプ政権は、中国が米国と大きな貿易協定を結ばない場合、極端な措置として、またはある意味「核のオプション」として、中国保有の米国財務省証券1兆ドルの一部を含む米国における中国資産の押収検討の可能性をほのめかしている 、

これはトランプ氏側のハッタリとして、米国大統領選での氏の旗揚げ地位強化のため、貿易で中国から譲歩を勝ち取るよう考えられたことが明白である。これまでのところ、ワシントンは北京との暫定的または「第一段階」の二国間貿易協定しか有していない。

国際決済システムへのアクセスを拒否したり、米国の資産から中国の金融資産の一部を差し押さえるという中国に対する米国の指導者の脅威はこじつけのように見えるが、中国は成り行き任せにする覚悟はないようだ。

2016年米国のリーダーが就任時にとった最初の行動は、アジアにおいて米国に戦略的価値の高い同盟である環太平洋パートナーシップ(TPP)から自国を脱退させることであった。その後氏は中国と他国に対する貿易戦争を開始した、そしてそれは間違いなく他国より米国の消費者を害した。

現在、トランプ氏は戦争を新境地へと進めている。ロイターは最近、中国の当局者と経済学者が「広範な金融戦争がすでに始まっている」と述べたことを引用し、中国はドル決済システムから中国を追い出すという米国の「核オプション」に備える必要があると述べた。

中国との貿易戦争で決定的勝利を収めることができなかったため、米国の指導者が金融戦争に備えているのは、単純に脅し戦略である可能性がある。中国と同じくらい米国に損害を与える可能性があるが、相互破壊の脅威がトランプを抑止するとは限らないようだ。

氏のHuawei、TikTok、WeChatなどへの攻撃は、わかりやすい標的を対象としているが、中国の金融システム運用面に対する攻撃は、漠然ではあるが非常に危険性がある。

現在、中国のクロスボーダー取引の多くは、世界最大の金融メッセージングシステムの1つであるSWIFT国際決済ネットワークを介してドルで決済されている。このような動きはもちろん中国の国際貿易と資本取引を害するだろう。

米国による主権行為として、国際的ドル決済システムから中国を締め出すことは可能である。しかし、トランプ政権が中国を利用して米国商品の多額購入させようとしているときに行うのは奇妙なことである。これは当然支払わなければならない。

ワシントン国際金融研究所の元チーフエコノミスト、フン・トラン氏が次のように述べた。「中国は米国からの年間輸入を3,500億ドルに引き上げ、中国はこの購入に対してSWIFTシステムを使用して支払う必要があるため、中国との貿易を続けるだろう。」

これは、トランプが中国が米国大統領と選挙前に貿易協定を結ぶことに神経質になっていることを願い、ハッタリをかましているか、自身の脅し戦術の結果を考慮し損ねていることを示唆している。

しかしながら、中国当局はトランプの姿勢を真剣に受け止めているようだ。 ロイターによるとスタンダード・チャータードの広域中華圏経済調査責任者で中国人民銀行の元経済学者シュアン・ディン氏が中米金融「デカップリング(分断)」の脅威は「明確かつ現在」の脅威であると述べている。

中国国家外貨管理局の国際決済部門の元ダイレクターで、現在中銀国際(BOC International)(China)のチーフグローバルエコノミストクワン・トー氏は、米国が「ドル決済システムから中国を追放することができる」と警告していると伝えている。

クワン氏は最近、世界貿易への資金調達における中国のクロスボーダー銀行間決済システムの利用拡大を要求した。一方、中国はユーロを利用してヨーロッパと、円を利用して日本との貿易やその他取引を解決し、人民元をアジアの他の場所での支払いに使用することを求めることができる。

トランプ政権が示唆したもう一つの行動は、米国で特定の中国資産を押収することである。これはトランプ側の金融戦争行為と同じであろう。

ワシントンのアトランティック・カウンシルのトラン氏が言うように、これらは報復を確実に招く非常に攻撃的な動きである。このような行為は、「国際金融市場を揺るがし、世界貿易を崩壊させ、すべての貿易国で深刻な経済混乱を引き起こす」

ソブリン債務を反故にすることは、米国債の世界で最も優れた安全資産であるという評判を深刻にへし折ることになる。投資家は、政治的理由から米国が債務を反故にする可能性を考えなければならず、金利が上昇し、米国の財政赤字への資金提供が困難になる。

誰もがトランプの金融システム制裁の脅威を真剣に受け止めているわけではない。 「トランプ政権がそのような行動を取るは馬鹿げている」と元経済学教授で東京のアジア開発銀行研究所のユーチン・シン氏は言う。

それにもかかわらず、トランプ政権が世界貿易システムと、生産サプライチェーンに、損害を与えるリスクを冒すと信じるものは最初はほとんどいなかった。実際にそれは氏の政治的攻撃、およびCOVID-19パンデミック対策に関する米国の遅い対応の結果であった。

11月の米国の選挙結果には多くのことがかかっているが、中国がトランプ氏の脅威を真剣に受け止めているように見え、それまで中国が時間を稼ぐことを選択する可能性もある。

中国は、古代中国の軍事戦略家である孫子の本のタイトルを引用して、「戦争の芸術」を実践し、トランプの「契約の芸術」に対抗することを選択することができる。その作品は倒すために敵をよく知ることを提唱し、中国は現在かなりうまく「トランプの対処をとっている」ようである。

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