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日本政府、軍備増強に大手企業の参画を促すべく説得に奮闘

東京の東、千葉の幕張メッセで開催されたDSEI Japan防衛展示会でMBDAの視界外射程空対空ミサイル「ミーティア」の派生モデルを見学する来場者。2023年3月15日。(ロイター通信)
東京の東、千葉の幕張メッセで開催されたDSEI Japan防衛展示会でMBDAの視界外射程空対空ミサイル「ミーティア」の派生モデルを見学する来場者。2023年3月15日。(ロイター通信)
東京の東、千葉の幕張メッセで開催されたDSEI Japan防衛展示会で展示された三菱重工の無人水上艇。2023年3月15日。(ロイター通信)
東京の東、千葉の幕張メッセで開催されたDSEI Japan防衛展示会で展示された三菱重工の無人水上艇。2023年3月15日。(ロイター通信)
ダイキン工業の淀川製作所の概観。大阪。2023年2月20日。(ロイター通信)
ダイキン工業の淀川製作所の概観。大阪。2023年2月20日。(ロイター通信)
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16 Mar 2023 11:03:26 GMT9
16 Mar 2023 11:03:26 GMT9

第2次世界大戦以来の軍備増強に向けて防衛産業の活性化を図っている日本政府はある課題に直面している。日本のよく知られた大企業のいくつかは軍事関連の事業への投資に消極的なのである。

1947年に戦争を放棄した日本は、昨年、5年間で3,150億米ドルの軍備増強を行う計画を発表した。これは、ロシアによるウクライナ侵攻(ロシアは「特別軍事作戦」と呼んでいる)が中国を勢い付け台湾侵攻が実行されてしまうのではないかという懸念が高まる中、東シナ海での中国政府の武力行使を抑止するためである。

ただし、日本政府の戦略の重要な部分は、東芝、三菱電機、ダイキン工業など、何十年にもわたって静かに自衛隊の装備の生産を担ってきた民間企業を説得し、生産を拡大させることである。

軍国主義に反対する感情が根強い日本では、一部の生産企業を説得することは非常に困難であることが、政府と民間企業の関係者6人へのロイター通信によるインタビューから明らかになった。

昨年来行ってきた防衛省との非公式の会合で、いくつかの企業は、利益率の低さ、日本が軍備増強を完了した後無稼働となり得る生産プラントを建設することの財政的リスク、兵器販売に伴う企業イメージの低下といった懸念を表明したと、直接交渉に参加した関係者がロイター通信に語った。

この関係者は、会合自体が機密性を帯びていたことを理由として、所属を明らかにすることや表明された懸念を特定の企業に関連付けることを拒否した。

日本政府は、軍需品の利益率を数%から15%に引き上げることや、企業がリスク無しに生産を拡大できるよう国有工場を提供することなどを盛り込んだ法案を準備している。しがし、それだけでは十分ではないかもしれないとの懸念が一部にはある。

「これまで、防衛省は防衛関連企業を当然視してきました」と、与党の有力議員である佐藤正久元防衛副大臣は述べた。

より収益性の高い民間事業に注目している株主に対して「愛国的義務」を理由に防衛装備品の販売を正当化することは、日本の企業経営者にとってますます困難になっていると佐藤氏は語った。

岸田文雄総理大臣の軍備増強計画では、防衛装備品の製造が重要な柱として位置づけられている。

しかし、日本には米国のロッキード・マーチンや英国のBAEシステムズのような防衛産業の主軸となる大企業が存在せず、自衛隊への装備品供給を行っている日本企業の多くはよりありふれた製品の生産が本業なのである。

日本の次期ジェット戦闘機や中国を牽制するための長射程ミサイルを開発している日本最大の防衛企業である三菱重工の場合、昨年の防衛関連の契約は、同社の総売上高29億ドルの10分の1に過ぎなかった。三菱重工の事業のほとんどは、民間航空機の部品や発電所の設備、工場機械の生産である。

エアコン製造業者のダイキンは軍需品を服取扱製品としている。プリンターなどの電子製品を製造している東芝はミリタリーグレードの蓄電池を生産している。そして、三菱電機はレーダーやミサイルを冷蔵庫や電気掃除機と並行して製造している。

昨年の初めから、防衛省の当局者はこれらの企業や自動車とヘリコプターを生産しているスバルといった他の主要な防衛装備品製造企業と会合を重ね、表立っていない防衛関連の生産部門を拡大するよう要請してきた。

ロイター通信社は、日本の大手防衛企業15社に取材を申し込んだ。これらの企業のCEOたちは、昨年4月には当時の岸信夫防衛相、今年1月には後任の浜田靖一防衛相との会談のために防衛省に招かれている。

その内、ジェットエンジンや橋梁、重機などを製造する三菱重工、三菱電機、IHIの3社は、より事務レベルの他の会合にも参加したことを認めた。

5社からは返答が無かった。残りの企業は、他の会合に参加したかどうかについての回答を差し控えた。

回答した企業は、会合の詳細や、会合で提起した懸念を明らかにすることを拒否した。

ビジネス上の旨味

多くの企業は防衛関連部門について語ることを躊躇する。反軍事的な感情が浸透した日本国内において顧客を遠ざけることや、国外において、特に中国で、過去の戦時中の日本への憤りが政治化されることを恐れるが故である。

ロイター通信は、東芝、三菱電機、ダイキン、スバルを初めとする防衛装備品生産企業10社の防衛部門責任者にインタビューを申し込んだ。三菱電機のみが応諾した。

三菱電機の防衛システム事業部長の洗井昌彦氏は、政府の提案を歓迎すると語った。日本の「安心安全」に貢献することが自社に利益をもたらすことを洗井氏は期待している。

洗井氏の最大の懸念は、日本の5年の軍備増強期間が完了した後がどうなるのかであるという。他の企業は「風評リスクに悩まされている」と、洗井氏は付け加えた。三菱電機が昨年度記録した340億米ドルの総売上高の内約4%が、洗井氏の防衛システム事業部によるものである。

この問題のデリケートさを理由に匿名を希望した別の日本の大手防衛関連企業の関係者は、地域の緊張に直接的に巻き込まれることはビジネス上好ましくないかもしれないと述べた。

「私たちは風評リスクについて大きな懸念を抱いています」と、関係者は述べた。「中国の顧客が、防衛の話題になると不快感を示したことがこれまでにありました」

外交的な緊張があるにせよ、中国は日本の最大の貿易相手国であり、多くの日本企業にとって主要な製造拠点なのである。

2014年に日本が数十年に及ぶ軍事輸出の全面禁止を解除した際には、企業側の臆病さや官僚の過度な慎重さのために関連産業の成長が促進されることがなかったのだと専門家は分析している。2020年にレーダーをフィリピンに供給する契約を締結した三菱電機は、防衛関連機器を海外に販売した経験のある唯一の企業となっている。

一方、化学薬品企業のダイセルはパイロット射出部門を閉鎖すると2020年に発表し、住友重機は機関銃の生産を終了すると2021年に防衛省に伝えた事を明らかにした。ダイセルは収益性の低さに言及し、住友重機は生産の維持と技術者の養成が困難である事を理由に挙げた。

「特別装備」

日本政府が今月発表した世論調査では、中国や北朝鮮との地域的な緊張が強まる中、軍事力の増強への国民の支持が高まっていることが示されている。

1,602人を対象としたこの世論調査では、その41.5%が自衛隊の増強を望んでいた。5年前の前回調査から29.1%の増加である。

たとえ世論が変化しようとも、日本企業は軍用製品については「特別装備」と呼称することが多いと政府関係者は語った。収益の90%をエアコン製造から得ているダイキンもそうした企業の1つである。ダイキンは、西日本の大阪の淀川工場で生産している火砲や迫撃砲の砲弾を自社のウェブサイトの製品リストには含めていない。

「弊社は防衛事業を秘密にしているわけではありません。情報開示は通常の方法で行っています」と、ダイキンの広報担当者は述べた。「風評リスクとは関係がありません」

上端に鉄条網が張られた塀で囲まれたダイキンの工場の外の街路で、66歳の奥本礼子氏は、この工場で砲弾が生産されていることを知らずに、周辺の労働者向けの地区で40年以上暮らしてきたと語った。

「軍関係の仕事から(ダイキンが)距離を置いてくれると良いのですが」と、奥本氏は言った。「でも、世界の状勢を考えると、それが非現実的なのは分かります」

ロイター通信

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