
日本の飲料・医薬品メーカーであるキリンホールディングスがブラックモアズ社を18億8000万豪ドル(12億4000万ドル)で買収すると、両社が27日に発表した。オーストラリアの健康食品企業であるブラックモアズの株価は7年以上ぶりの高値を記録した。
キリンはブラックモアズの株式に対し1株当たり95豪ドルの現金を提示したが、これは前日の終値よりも23.7%の割増しであり、朝の取引での22.4%の上昇より若干高い金額となっている。
この取引は、かつての市場の寵児であったブラックモアズに突破口を提供するものだ。同社は中国の消費者が海外で商品をまとめ買いして持ち帰る「代購(代理購入)」ブームが2020年からのゼロコロナ政策により終焉して以来、自然健康食品やビタミンの売上回復に苦戦していた。
キリンとの取引前、ブラックモアズの株式は2016年の代購ブームの絶頂期には3分の1の価格で取引されていた。
ブラックモアズの取締役会は、株主がこの取引を支持することを全会一致で推奨しており、筆頭株主で前会長のマーカス・ブラックモア氏も賛成票を投じることに同意している。
創業者の息子で19%の株主であるブラックモア氏は、取締役会と「敵対的」な関係を築いて以来、1年半前から撤退を考えていたという。
同氏は、「キリンは(中略)オーストラリアですでに強い存在感を示しており、長期的な視野で物事を考え、ブラックモアズの運営方法を改善できると純粋に信じており、私もそれを支持しています」とロイター通信に電話で語った。
「57年間も事業に携わっていると、事業が苦しむ姿は見たくないし、事業の成功を見たくなるものです。キリンはその約束を果たしてくれると信じて疑いません」
オーストラリアのトップビールブランドを複数所有するキリンにとって、ブラックモアズの買収は、事業の多様化をさらに促進し、地域最大の経済大国である中国との関係修復に伴い輸出増加が見込まれるこの国で、存在感を高めることになるだろう。
アルコール飲料やノンアルコール飲料、医薬品事業で知られるキリンは、国内外の関連資産を取得し、アジア太平洋地域を代表するコンシューマーヘルスサイエンス企業になることを目指すと述べた。
オーストラリアに集まる注目
この取引はオーストラリアでのM&Aブームの最中に行われたもので、市場観測筋は当面はこのブームが続くと予想している。オーストラリアは、停滞する国内経済の向こうに成長を求める日本企業にとって、過去に人気のあった国でもある。
キリンとアサヒグループホールディングスはオーストラリアのビール市場を独占し、日本ペイントホールディングスはオーストラリア最大の塗料メーカーDuluxGroupを2019年に38億豪ドルで買収した。その1年前には、(株)三菱UFJフィナンシャル・グループが、オーストラリア・コモンウェルス銀行のグローバル資産運用部門に41億豪ドルを支払った。
ブラックモアズは、買収が成功した場合、1株当たり3.34豪ドルの特別配当を行う予定であり、その場合、キリンは1株当たりの配当金をその分減少する。この配当により、株主は二重課税を防ぐための手段であるフランキングクレジットの恩恵を受けることができる。
ブラックモアズの株価は22.4%上昇し、2021年12月以来の高値となる94豪ドルとなった。キリンの株価は3%下落し2,158円となり、2月15日以来の最悪の日中損失となった。
ブラックモアズの株主は、7月に開催される株主総会でこの買収について投票することができ、両社は8月上旬にこの取引が完了すると予想している。Barrenjoey Capital PartnersとAdara Partnersが共同財務アドバイザーを務めている。
ロイター