東京:シリア第二の都市アレッポの職人たちは、何世紀も続く伝統的な特産品の石鹸作りで有名だが、日本からの支援もある。
東京西部の福生に拠点を置く輸入販売会社、アレッポ石鹸貿易株式会社は、シリア北部のアレッポとのビジネス関係において複数の危機を乗り越えてきた。2011年からのシリアの内戦による現地工場の破壊、そして昨年の大地震。
同社は、過去30年にわたって信頼関係を築いてきたシリアの職人たちを支援する努力を続けている。
石鹸の作り方は、古代メソポタミアの粘土板に記録されている。アレッポ近郊では、約1000年前から石鹸作りの伝統が守られてきたと言われている。
アレッポ石鹸の伝統的な製造方法は、地中海沿岸地域に豊富にあるオリーブ油と月桂樹油を使い、砂漠の低木を炭化させた粉から作ったアルカリを加える。アレッポの石鹸は肌に優しく、殺菌作用や消臭効果もあることから珍重されている。
ユネスコの世界遺産に登録されている古都アレッポの市場には、内戦が始まる前まで、この有名な石鹸を専門に売る店が軒を連ねていた。
1994年に設立されたアレッポ石鹸貿易株式会社は、アレッポから由緒ある石鹸を輸入している。
54歳の太田正興社長によると、内戦中、日本への輸出用石鹸を積んだコンテナが、陸路で港に向かう途中で武装勢力に略奪された。また船舶が出港しなくなったため、急な出荷計画の調整が必要になった。
さらに、反政府勢力が支配する北西部からのオリーブオイルの供給も減少した。
2016年には、アレッポの石鹸工場が爆撃で壊滅的な被害を受け、生産拠点はさらなる戦禍を避けるためにシリア北西部のラタキアに一時移転することになった。
シリアのバッシャール・アル・アサド政権に対する国際的な制裁により送金ルートが遮断された後、同社は様々な手段を模索し、適合する送金方法を確保した。
隣国トルコを震源とする昨年の大地震では、シリア北部を中心に約6000人の命が奪われた。
アレッポ石鹸貿易の協力工場では、家屋の倒壊などの被害があったものの、従業員とその家族は無事だった。この間、日本企業は現地の商工会議所を通じて食糧支援などを行った。
同社はアレッポ石鹸の輸入を継続し、日本全国の百貨店などで消費者に販売している。
「地元の人たちが守ってきたものを、私の代で途絶えさせてはいけないと思いました。内戦に負けないように、どんな犠牲を払っても(取引を)続けてきました」
震災の被害について太田氏は、「それを乗り越えて未来へ進む 」ことの重要性を訴えた。
時事通信