Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 特集
  • アラビア書道とテクノロジーの複雑な関係

アラビア書道とテクノロジーの複雑な関係

ナサール・マンスール博士、ヨルダン系パレスチナ人書家、イスラーム美術教授
ナサール・マンスール博士、ヨルダン系パレスチナ人書家、イスラーム美術教授
ゼキ・アル=ハシミ、著名イエメン系トルコ人書家
ゼキ・アル=ハシミ、著名イエメン系トルコ人書家
シラジ・アラフ、サウジアラビア人書家、およびサウジアラビアのプロ書家が各種サービスを提供するHrofiatの創設者。
シラジ・アラフ、サウジアラビア人書家、およびサウジアラビアのプロ書家が各種サービスを提供するHrofiatの創設者。
Short Url:
13 Jun 2020 07:06:45 GMT9
13 Jun 2020 07:06:45 GMT9

ルバ・オバイド、ヘブシ・アル=シャンマリ

ジッダ/リヤド:アラビア書道はイスラーム文明の本質的な部分をなすものである。この芸術形態は、アラブ文化の表現のほぼすべての側面で不可欠な部分である。

しかし、イスラーム教芸術および文化におけるその重要性にもかかわらず、その人気は大衆の間で減少しているようだ。多くの理由が示唆されるが、おそらく一番もっともらしい原因は、現代テクノロジーのツール、なかでもインターネットにおけるアラビア語の推進および視覚的表現の欠如であろう。

現代世界における芸術形態の人気および評価の下降の理由が何であれ、それでも何とかその古典的な形で生き残り続けている。

ヨルダン・アンマンの世界イスラーム科学教育大学のイスラーム芸術建築学部でイスラーム書道とクルアーン写本を教えるヨルダン系パレスチナ人芸術家・書家のナサール・マンスール博士(@dr.nassarmansour)によると、アラビア書道の重要性は聖クルアーンとのつながりに由来するものだ。

古典的な学校は、テクノロジーが伝統を殺すと誤って恐れている。基本的な技法や教えの原則は失われることはない。

シラジ・アラフ

クルアーンの神聖な性質に心動かされたアラブ人はその書のデザインを美しく組み変え、それが7世紀におけるアラビア書道の発展の最初の原動力となったとマンスール博士は言う。アラビア書道の伝統的形態は現代テクノロジーによる影響をほとんど受けておらず、その聖なる書との強いつながりにより今後も重要性を持ち続ける、とマンスール博士は信じている。

「しかし、書道の機能的側面は間違いなく後退している」と彼は付け加えた。

アラビア書道とクルアーンのつながりは、その実践が主に宗教的な経験であることを意味し、そのために何世紀もかけて忍耐と自己規律に関する一連の規則が開発された。これらの規則は書家の間で「アダブ」(マナー)と総称され、教師と学生ともに従わなければならないものだ。

サウジアラビア人芸術家・エンジニアのシラジ・アラフ(@sirajallaf)は、有名な書家イブラヒム・アル=アラフィに師事し、マッカのグランドモスクで書道を学んだ。長年の訓練の後、彼は伝統書道の「イジャザ」、つまり卒業証書を授与された。このような方法で書道を学ぶことは、特に若者にとって豊かでやりがいのある教育経験だと彼は言う。

「私は師から人生の教訓を無限に学びました」とアラフは言う。「私はいつも師からすべてを学んだと言うのですが、書道自体はリストのいちばん下に来るものです」

古典的書道を学んだ卒業生たちは、人生へのアプローチにおいて「あまりにも控えめ」になりすぎることがある、と彼は付け加えた。

「芸術への情緒的愛着が大きいことで、お金を稼ぐために芸術を利用することをよく思わないため、自らの才能に投資しようと思わないのです」と彼は説明する。「写真など他の芸術形態を見れば、アーティストたちが実際にお金を稼ぐためにその道を選んだことが見てとれます」

アラフはアラビア書道への注目を高めるために、サウジアラビア初の書道のためのプラットフォーム、Hrofiatを設立した。ワークショップ、イベント、オンラインコース、オリジナルおよびデジタル作品の制作、美術コンサルタントサービスなどの提供を通して、国内最高峰の書家の一群がアラビア書道を推進するために力を合わせている。

書家のエリートグループを結成することには困難が伴ったとアラフは言う。芸術でお金を稼ぐという考えに対して警戒心があるためだ。ほとんどの書家は商売と現代テクノロジーの採用に対して保守的だと彼は考えている。書家たちは、彼らが神聖と考える自らの芸術の「精神」が失われることを恐れて、テクノロジーの使用を避ける。

アラフをはじめとする多くの専門家は、現代のイノベーションを受け入れることへの消極的態度のルーツはオスマン帝国支配の時代にさかのぼると考えている。この時代、宗教および写本関係者の抵抗により、印刷技術の採用が遅れたのだ。

オスマン帝国が首都コンスタンティノープルを拠点に権力を統合する中、1453年にはヨーロッパ全土にすでに普及していた印刷技術を取得した。しかしオスマン帝国では、スルタン・アフメド3世と宗教当局の祝福を受けてイブラヒム・ムテフェリカが印刷工房を開いた1726年まで、印刷は正式に始まらなかった。

したがって印刷は、ヨーロッパ全体に急速に普及してから400年近く経った18世紀まで、アラブ、オスマン帝国、イスラーム世界において足場が築かれなかった。このことは、常に進化し続ける技術を、アラビア書道の特定の美学的要件を満たす形で取り入れることの遅れという長期的影響をもたらした。

新しい印刷技術の使用がようやく普及し始めると、伝統的な書家は新聞、雑誌、その他出版において職を失い始めた。多くは、新しい方向に向けて自分の経験を適応させるための代替技能も手段も持たなかった。

その結果、アラビア書道の比類なき美しさは、主に世界中のアートギャラリーや博物館へと追いやられた。

サウジ・アラビア書道学術協会の会長であるアブドゥッラー・フティニー博士は、アラビア書道への造詣が薄れるもう一つの要因は、特に若い世代の間で、現在ほとんどの人が使用しているコンピュータ生成のフォントの人気の高まりであると考えている。

現代の大衆と書道という古典的な芸術形態との間の断絶もまた、アラビアの書家にデジタルツールの採用を思いとどまらせている、と博士は付け加えた。

アラフはこの分析に同意する。「伝統的な学校は、テクノロジーが伝統を殺すものと誤って恐れています。基本的な技能や教えの原則は、失われることはありません。(中略)何年も練習してきた技術の多くが、ボタンを押すだけで可能となったことを受け入れるのが怖い人もいます」

ナサール・マンスール博士(ヨルダン系パレスチナ人イスラーム美術教授)

古典的な訓練を受け、トルコで伝統的な卒業証書を取得したイエメン系トルコ人書家ゼキ・アル=ハシミ(@hattatzeki)は、古典的学校は現代世界の要求に応じて変化・適応し、新しい技術の使用を受け入れなければならないと考えている。結局のところ、伝統的な書道ツールでさえも、時間の経過とともに進化したと彼は指摘する。

「各々の文字やグリフの正式な表現など、時の経過による影響をあまり受けなかった部分もあります」と彼は言う。「したがって、アラビア書道の一般的な形態の黄金比と幾何学だけが、失われないようにするべき伝統的要素でしょう」

アラフとアル・ハシミは、現代のテクノロジーが古典的書道の伝統を脅かすものではないことに同意する。

「テクノロジーは、芸術をさらに発展させ、文化を促進するための手段であり、それ自体は終わりではありません」と、アル・ハシミは言う。

アラフは、書家はデザイナーや開発者と協力して現在利用可能なテクノロジーツールを改善する必要があるとし、「個々の努力はもはや効率的ではない」ため、そのような協力が必要であると述べた。

ゼキ・アル=ハシミ(イエメン系トルコ人書家)

マンスールもまた新しい技術の使用に対して受容的な姿勢だが、現代テクノロジーとアラビア語の文字を統合する際には、芸術とその価値を理解し、その精神的・美学的側面を尊重する専門家によって行われなければならないことを強調した。

アラビア書道に現代テクノロジーを取り入れることに長らく消極的な姿勢が見られた一方で、ソーシャルメディアがこの古典的な芸術形態を復活させ、若者の間での人気を高めるのにある程度役立っているかもしれないというのも皮肉なことだ。マンスールとアラフは、ソーシャルメディアその他の現代的ツールは、彼らが他の国の学生に教えたり、デジタル革命の前には想像もつかなかったほど広範な聴衆に向けてアラビア書道の知識と造詣を広めたりすることを可能にすると言う。

しかし、神聖な書とのつながりを通じて、若者が個人的な経験の結果としてその謎を探求することを奨励し続けるのは、アラビア書道の中心的な精神的価値観である。
アル・ハシミもまた、ソーシャルメディアを使用して書道のレッスンを行い、この芸術形態についてフォロワーと語り合っている。

「すべての人が専門家のように書を見るわけではないことは理解していますが、私は社会のあらゆる層に合うよう、多様なコンテンツの提供に努めています」と、彼が言う。

マンスールは、書道への意識と人気の低下は、公式機関、教育者、芸術形態への文化的意識の推進の全般的な欠如などに原因があると言う。

シラジ・アラフ、サウジアラビア人書家・Hrofiat創設者

「書家もまた、アラビア書道とその美的価値に関する無知について責任があります」と、彼は付け加えた。

アラビア書道の社会的・文化的地位および価値を回復する唯一の方法は、政府の支援を受けて、長期的な制度的プロジェクトを行うことだという一般的な合意がある。したがって、サウジアラビアのバドル・ビン・アブドゥッラー首相が1月に2020年を「アラビア書道の年」と発表したことは重要なステップであった。王国が取ったもう一つの顕著なステップは博物館、展示ホール、アラビア書道に特化した研究所などにより構成されるマディナの「アラビア書道のためのムハンマド・ビン・サルマン皇太子グローバルセンター」の最近の設立である。

「科学者であれ芸術家であれ、分野に関わらずあらゆるクリエイターが自分の声を持ち、注目を得る権利を得られるよう、クリエイターを力づけるための主権の決断が必要です」と、アラフは言う。

アル・ハシミは、「これらの巨大プロジェクトは国と国民に利益をもたらすだけでなく、より広範なアラブおよびイスラーム世界に奉仕する重要なイニシアチブであり続けます」と付け加えた。

フタイニーは、古典的および現代的な形の書道の才能を持つ人々に向けて、自分のスキルをうまく活用し、技量を磨くため懸命に努力するように呼びかけた。

「アラビア書家やアラブ系ソフトウェアプログラマーは、コンピュータユーザーに向けてアラビア文字の形式や形状を改善するためにやるべきことがたくさんある」と彼は言う。

彼はまた、生徒の手書きの技能を伸ばし、自らの可能性を探り最大限に引き出すことを奨励するために、よく設計された新たな書道の授業を学校に導入することの重要性を強調した。

特に人気
オススメ

return to top

<