
カテリナ・カダバシェ
ドバイ:自分の家から追い出されたときの痛みを想像してみよう。そして、自分の身に何が起こっているのかを世界に知らせるすべがない事を想像してみよう。
これが、エルサレムのシェイク・ジャラー地区に住むパレスチナ人の現実だ。この地区には、1948年のナクバの時より28家族が住んでいる。国際法上、東エルサレムはパレスチナ自治区の一部とされている。
今年初め、東エルサレムのイスラエル中央裁判所は、パレスチナ人の4家族を同地区の自宅から立ち退かせる決定を承認した。
パレスチナ人とイスラエル人入植者の間で激しいデモや衝突が起こる中、裁判所は5月6日に立ち退きに関する判決を出す予定だったが、判決は5月10日まで延期された。
数百人のソーシャルメディアユーザーは、インスタグラムとフェイスブックがシェイク・ジャラーの暴力事件を報告するコンテンツやアカウントを削除したと非難している。
パレスチナ人ジャーナリスト、マハ・レゼック(Maha Rezeq)氏のストーリー書き込みから削除された動画のひとつは、2009年にムナ・エル・クルド(Muna El-Kurd)氏の家を占拠したイスラエル人入植者Jジェイコブ氏に関するものだった。彼が彼女の家を占拠しなくとも他の誰かがそうしただろうと彼は彼女に言い放った。
「私がシェアしているのは、生の素材、動画、現場の人々の証言であり、中には実際にイスラエル人や入植者の口から語られたものもありますが、なぜそれが議論の的になるのでしょうか?すべてが自明の理であり、コミュニティの基準に反するような流血や生々しい映像はありません」とレゼック氏は語る。
レゼック氏はアラブニュースに対し、シェイク・ジャラーに関する彼女の書き込みだけが削除されたと述べている。
「私の書き込みから削除されたのは、パレスチナ人に対するイスラエルの犯罪を暴くことに関連するストーリーや投稿だけです」
エルサレム在住のパレスチナ人ライター、モハンマド・エル・クルド(Mohammed El-Kurd)氏は、シェイク・ジャラーでの暴力に関するビデオや記事を投稿したところ、アカウントが削除されるかもしれないという警告を受けた。
「あなたの過去の投稿の中には、コミュニティガイドラインに沿っていないものがありました。再びガイドラインに反する投稿をした場合、あなたのアカウントは投稿、アーカイブ、メッセージ、フォロワーを含めて削除される可能性があります」とメッセージには記載されていた。
また、フェイスブックは、ガイドラインに反するという理由で、彼のページから「57個のコンテンツ」を削除した。
ヤスミン·ダバット(Yasmin Dabat)氏は、5月3日付けでハッシュタグ #SaveSheikhJarrah を付けた自分のストーリーが、「何の警告も更新もなくインスタグラムによって削除された 」と述べた。
フェイスブックが所有するインスタグラムは、数百人が検閲を報告し始めた後、5月6日に技術的な問題に直面しているとツイートした。
「ストーリーのアップロードや閲覧に問題が生じていることは承知しています。これは、特定のトピックに関連したものではなく、世界的に広く発生している技術的な問題であり、現在修正中です。できるだけ早くアップデートを提供します」
We know that some people are experiencing issues uploading and viewing stories. This is a widespread global technical issue not related to any particular topic and we’re fixing it right now. We’ll provide an update as soon as we can.
— Instagram Comms (@InstagramComms) May 6, 2021
パレスチナ人のデジタルの権利を擁護する非営利団体である7amlehのディレクター、ナディム・ナシフ(Nadim Nashif)氏は、この説明は意味をなさないと述べている。
「エルサレムのある地域で起きたことを、カナダ、アメリカ、コロンビアといった巨大な国と比較するのは、非常に奇妙なことです。論理的ではありませんし、何の説明にもなっていません。カナダやアメリカでは、さまざまなトピックについての記事を削除していましたが、ここでは特定のハッシュタグ、特にシェイク・ジャラーについての記事が削除されていました」と彼は述べた。
ナシフ氏は、パレスチナ人に対する検閲は2つの経路で行われていると言う。
「ひとつは、イスラエルが行っていることで、彼らは基本的に、何がそこにあるべきで、何がそこにあるべきでないかという独自の基準をソーシャルメディアのプラットフォームに採用させようとしています。彼らと主にフェイスブックとの間には強い協力関係があります」
ナシフ氏によると、これは「自発的削除」と呼ばれるもので、イスラエルのサイバー部隊がソーシャルメディアのプラットフォームに、裁判所の命令なしに特定のコンテンツを削除するよう要請するものだそうだ。
パレスチナのコンテンツがソーシャルメディアから排除されたもうひとつの方法は、「トロール軍団とAct.ILと呼ばれるアプリケーションが、人々を組織して大規模なやり方で報告させること」だという。
Act.ILは、「イスラエル擁護者、コミュニティ、組織が一堂に会し、ユダヤ人国家の悪魔化と弱体化に立ち向かうために協力する場所」と説明するアプリだ。
このアプリによると、ユーザーは 「ソーシャルメディアから扇動的なコンテンツを削除したり、反ユダヤ主義や反シオニズムと戦ったり、イスラエルに関するオンラインのストーリーに影響を与えたり、親イスラエルの特別なキャンペーンや取り組みに参加したりすることができるようになる」とのことだ。
パレスチナ人は、それらのプラットフォームがユーザーガイドラインに違反するコンテンツを特定するために人工知能を使用することによっても、ソーシャルメディア上で沈黙させられざるをを得ない。
「ソーシャルメディアのプラットフォームは、削除のために人工知能を利用しており、主にアメリカ政府がテロ組織とみなすものを中心としたキーワードが多用しています」とナシフ氏は説明する。
コンテンツの削除やアカウントの削除を7amlehに報告した人の一部は、同団体がフェイスブックに働きかけた結果、コンテンツを復元できた。
「私たちはフェイスブックの信頼できるパートナーなので、数十から数百のコンテンツを復元することができました」とナシフ氏は付け加えた。
ダバット氏は、インスタグラムと連絡を取った後、約12時間後に自分のストーリーを復元することができた。
「私はインスタグラムにこの件を直接メールで伝え、元に戻すように圧力をかけました。すると、彼らは私に返信することなく、それらを戻してくれました」と彼女は言った。
ナシフ氏は、コンテンツやアカウントが復元されたにもかかわらず、システムにはまだ偏りがあると述べた。
「私たちは、コンテンツ・モデレーションの透明で明確なシステムを手に入れられていません。それに於いてのキーワードは透明性と平等性で、これはイスラエル側では実現していないからです」
インスタグラムは、2日前にアラビア語のハッシュタグ「Al-Aqsa」を非表示にした。この日は、何千人ものイスラム教徒がタラウィの祈りを捧げる中、戦闘服を着たイスラエルの警察が大量に出動した。医療関係者によると、その夜、200人以上のパレスチナ人が負傷したとのことだ。
「起こったエスカレーションの一部は、彼らがハッシュタグまで削除したことです。彼らはAl-Aqsa等のハッシュタグを隠しました。これは新しい動きです」とナシフ氏は述べた。
氏は、ソーシャルメディアを利用しているユーザーに対し、自分のプラットフォームを通じて検閲の事例を報告し続けること、また、このような行為を是正するために、これらの問題を扱う組織に連絡することを勧めた。
フェイスブックは、複数のコメント要請に応じていない。
国連の中東和平プロセス特別調整官であるトー・ウェネスランド(Tor Wennesland)氏は木曜日に、イスラエルに対し、国際人道法上の義務に基づき、シェイク・ジャラーでの取り壊しや立ち退きを中止するよう求めた。
日曜日、ベンジャミン・ネタニヤフ首相は、ユダヤ人入植者が所有するエルサレムの家々からパレスチナ人を立ち退かせる計画に対して国際的な非難が高まっていることを受け、エルサレムに建物を建てるなという圧力をイスラエルは拒否したと述べた。
「我々はエルサレムに建物を建てるなという圧力を断固として拒否する。残念なことに、この圧力は最近ますます強まっている」
先週、赤十字社の報告によると、併合された東エルサレムにおいて、イスラエル警察により22人のパレスチナ人が負傷した。