
フロリダ州ケープ・カナベラル:NASAの探査機が、小惑星の石を内部に収め、10日、エンジンを噴射して地球に帰還する長旅を開始し、太古の昔に生まれた小惑星を後にした。
探査ロボット「オシリス・レックス」帰還の旅は、2年を要する。
オシリス・レックスは2018年に小惑星ベンヌに到達し、2年間かけてその近くや周辺を飛行した後、昨年秋に地表の石を採取した。
アリゾナ大学の主席科学者であるダンテ・ローレッタ氏は、0.5ポンドから1ポンド(200グラムから400グラム)の、多くが1口サイズの塊がこの探査船に入っていると推定している。いずれにしても、目標としていた少なくとも2オンス(60グラム)を余裕で超える量だ。
アメリカにとっては、アポロの月の石以来最大の宇宙の戦利品となる。NASAは彗星の塵や太陽風のサンプルを持ち帰ったことはある一方、小惑星の破片を持ち帰るのは初めてだ。日本はこれまでに2回達成しているが、その量はごくわずかだ。
科学者らは、10日のベンヌ周辺からの出発について、嬉しくもあり、寂しくもあると表現した。
「娘がおむつをしていた頃から、小惑星からのサンプルの持ち帰りに取り組んできましたが、今では彼女は高校を卒業するので、本当に長い旅になりました」と、NASAのプロジェクト・サイエンティストのジェイソン・ドウォーキン氏は語った。
また、ローレッタ氏は次のように付け加えた:「私たちは、ベンヌにいる探査機からこの地球に送られて来る、新しい、わくわくするような画像やデータを見るのに、ある意味慣れてしまいました」。
オシリス・レックスは、10日の午後にメインエンジンを噴射して、高速で巧みな離脱を行った時には既に、太陽系の軌道にあるベンヌから200マイル(300キロ)近くの場所にあった。
コロラド州を拠点とする探査機製造企業ロッキード・マーティン社の管制官らは、探査機出発の確認が届くと拍手を送った:「我々はサンプルを持ち帰るんだ!」。
科学者らは、昨年10月にベンヌの暗く、ごつごつした、炭素が豊富な地表から吸引したサンプルから、太陽系の秘密の一部を明らかにしたいと考えている。この小惑星は、幅が1600フィート(490メートル)あり、誕生から45億年が経過していると推定されている。
より大きな小惑星の破片とされているベンヌは、太陽系を構成する成分を保っていると考えられている。持ち帰られる破片は、惑星がどのようにして形成されたのか、また地球でどのように生命が誕生したのかに光を当てることができる。また、地球に飛来する隕石に対処できる確率を高めることもできるかもしれない。
小惑星は1億7800万マイル(2億8700万キロ)離れているが、オシリス・レックスは地球に追いつくために、さらに14億マイル(23億キロ)飛行することになる。
SUVサイズの探査機は、太陽を2周してから、2023年9月24日に小型サンプルカプセルをユタ州の砂漠の地面へと届け、8億ドルを超えるミッションを終了する予定だ。同機は2016年にケープ・カナベラルから打ち上げられた。
この貴重なサンプルは、ヒューストンにあるNASAのジョンソン宇宙センターで建設中の新しい研究室に収められる予定で、同センターには既に、1969年から1972年にかけて月面を歩いた12人のアポロの宇宙飛行士が収集した何百ポンドもの月の物質が保管されている。
科学者らは当初、同探査機には2ポンド(1キログラム)の小惑星の破片が入っていると考えていたが、最近になってその推定値を下方修正した。どのくらいの量が入っているのかについては、着陸後にカプセルを開けるまで、はっきりとはわからない。
「サンプルの一粒一粒が貴重です」と、ドウォーキン氏は語った。「我々は我慢強くなければなりません」。
NASAはさらに多くの小惑星プロジェクトを計画している。
10月に打ち上げが予定されている「ルーシー」と名付けられた探査機は、木星付近の小惑星群を通過する予定で、一方「ダート」として知られる探査機は、惑星保護実験の一環として小惑星の軌道を変えるべく、11月に打ち上げられる予定だ。その後2022年には探査機「サイキ」が、同じ名前を持つ奇妙な金属質の小惑星に向けて飛び立つ予定だ。しかし、これらのミッションでは、サンプルリターンは行われない。
AP通信