
アブダビ:2014年にレッドブル・ジュニアチームの一員になった瞬間から、マックス・フェルスタッペンさんがいつかはフォーミュラワンのワールドチャンピオンになることは必然だった。
12月12日、アブダビでオランダ人初のF1チャンピオンに輝いた24歳のフェルスタッペンさんにとって、センセーショナルな最終ラップのスプリントで競り勝って過去7回のチャンピオン歴を誇るルイス・ハミルトンさんを王座から引きずり下ろす形になったことで、より甘美な経験として残るだろう。
「子供の頃の目標はF1ドライバーになることでした」。アブダビでのフィニッシュ後にフェルスタッペンさんが語った。
「人は表彰台や勝利を夢見るでしょう。しかし、あなたがワールドチャンピオンだと言われると、信じられない思いになります」
メルセデスを駆る36歳のハミルトンさんは驚異的なチャンピオンだったが、今回フェルスタッペンさんが勝利したことは新たな世界秩序の到来を示唆している。
フェルスタッペンさんのスピードと才能はずっと以前から明らかだった。とはいえ、今シーズンにトップに上り詰めることができたのは、プレッシャー下での冷静沈着さと、困難な状況にあっても優秀なF1ドライバーと真っ向勝負しようとする意欲のおかげだろう。
フェルスタッペンさんは、シルバーストーンでは防護柵に突っ込み、モンツァでは駆っていたレッドブル・マシンをメルセデス・マシンの上に乗り上げさせた。サウジアラビアでは、フェルスタッペンさんがブレーキをかけて追い越させようとした際に、ハミルトンさんはレッドブル・マシンの後部に突っ込んでしまった。
コースでの出来事は、コース外での言葉の応酬に至っている。フェルスタッペンさんが7度のワールドチャンピオンを「バカ」呼ばわりすれば、ハミルトンさんはジェッダで若きオランダ人挑戦者を「限界を超えている」と非難した。
アブダビでは、フェルスタッペンさんが最終ラップの短い勝負で経験豊富なハミルトンさんに泡を食わせ、あっと驚く勝利を手に入れた。
だが、挑戦者は一歩も退かず、プレッシャーで萎縮することもなかった。
ワールドチャンピオンに2度輝いているフェルナンド・アロンソさんは今シーズンに、「フェルスタッペンさんはプレッシャーへの対応が他の人よりうまいようだ」と発言している。
「人それぞれだが、彼にとっては大きな問題ではないようだ」
20年もコースで走行しているフェルスタッペンさんは、スポットライトやプレッシャーに慣れており、レーシングドライバーとしての年数以上に経験を積んでいる。
1994年から2003年まで100回以上グランプリに参戦した父ヨス・フェルスタッペンさんによると、マックスさんが初めてゴーカートに乗り込んだのは4歳半のときのことだった。
「熱心で、私のレースをすべて見て、何が起こっているのかを理解していた。レースとともに育った」と、2019年にF1ポッドキャストのビヨンド・ザ・グリッドでヨスさんが語っている。
「レースラインを教えなくても、本人が知っていた」
アブダビでは、父子はマックスさんが「特別」な瞬間と呼ぶものを共有した。父は息子の偉業を疑っていなかった。
ヨスさんは、「本当に誇りに思います。マックスが今年の最優秀ドライバーになりましたが、それにふさわしい1年でした」と語った。
マックスさんの初期のレースキャリアに影響を与えたのは父だけではなかった。母ソフィー・クンペンさんはベルギー出身の元カート・ドライバー・チャンピオンだ。ソフィーさんのおじはモトクロスやラリーに出場し、いとこに当たるアンソニー・クンペンさんは米国でNASCARに参戦した。
マックスさんはタイトルを獲得し、10代でフォーミュラ3にステップアップした。F3のデビューシーズンには10勝し、総合3位になった。その年のチャンピオンが1歳年長のエステバン・オコンさんで、現在はF1のアルピーヌチームに所属している。
フェルスタッペンさんがF3チャンピオンになることはほぼ間違いなかったが、翌シーズンには最高の舞台へとステップアップした。
2014年の日本GPで練習走行に出場した後、2015年のオーストラリアGPでトロ・ロッソからF1デビューを果たした。
わずか17歳と166日というF1史上最年少のドライバーは、公道用の運転免許証をまだ取得していなかった。
ヨスさんは、「私にとっては、年齢は関係ありませんでした。息子の行動はとても自然な流れでした。印象的でした。マックスは素晴らしいドライバーです。私よりよっぽど優秀です」と語った。
マックスさんは最初のシーズンからポイントを獲得し、最初のいざこざにも巻き込まれた。モナコでロマン・グロージャンさんと衝突したフェルスタッペンさんは、ウィリアムズのドライバーであるフェリペ・マッサさんから「危険」というレッテルを貼られた。だが、その年FIAのルーキー・オブ・ザ・イヤーのタイトルを獲得している。
2016年5月には、ダニール・クビアトさんの後任としてレッドブルチームに昇格し、すぐさま素晴らしい成果を収めた。スペインでの初レースで、予選4位からスタートして、フェラーリのキミ・ライコネンさんを抑えて、F1史上最年少の18歳で優勝を果たした。
フェルスタッペンさんは最初の8つのレースで、表彰台4回を含め、6回のトップ5フィニッシュを達成した。
2シーズン連続で上位入賞を果たした後、高性能のマシンを手に入れ、時にメルセデスを負かせるようになった。
12日に、レッドブル代表のクリスチャン・ホーナー氏は、「マックスが諦めないことはわかっていました」と述べた。
「マックスは今年ここまで来ていたので、ワールドチャンピオンに輝いて締めくくることになって、素晴らしい気分です」
AFP